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『ネットメディア覇権戦争』を読んだ。

ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)
藤代 裕之
光文社 (2017-01-17)
売り上げランキング: 1,089


 『ガ島通信』こと藤代裕之先生が、Yahoo、LINE、日経、スマートニュース、NewsPicksを中心に日本のメディア環境についての成り立ちと現状での課題をまとめた一冊。ここでは、「猫とジャーナリズム」という特に無料メディアが抱える問題と、「偽ニュース」の問題について感じたことを記しておきたい(特にYahooが抱えている「メディアかプラットフォームか」といった問題については、別途書こうと思う)。

 「猫とジャーナリズム」というのは、SNSでニュースが拡散していく上で猫に関するコンテンツが著しくシェアされるというBuzzFeed創業者のジョナ・ペレッティ氏の実験に端を発している。実際、BuzzFeedでは政治・社会系の記事からクイズまで硬軟相混ざった記事が並んでいる。ほかのポータルサイト=プラットフォームにしても、ウェブメディアにしても猫画像のような「柔め」な記事を多数配信しているし、本書で一章設けているスマートニュースにも『ねこチャンネル』がある。

 ただ、例えばSNSを駆使しているISISが「銃と猫」をあわせた写真をTwitterやInstagramで流している。これらを「面白コンテンツ」として流通させるのは本書では「偽ニュース」だと断じている。「事実」は「事実」でも文脈をぶった切って「面白い」「カワイイ」だけを切り取ると読者に誤解を与える可能性が高い、という実例といえるだろう。

 2015年のバイラルメディア騒動や、2016年末のDeNAの『WELQ』に端を発したキュレーションメディア閉鎖の問題は、クラウドソーシングサービスを介して「記事を書く人も読む人も不幸になる仕組みだった」と本書では総括している。ここ数年で、メディア運営をするにあたって「倫理」を欠いた場合、どのようなことが起こるか我々は目の当たりにしてきた。

 一方で、例えばファッションコンテンツが主だった『MERY』は女子から休止を惜しむ声もある(参照)。こういった無料で情報を受け取ることが当たり前になった読者の存在がある限り、この問題はついて回る。

 もう一つ、本書で指摘されているのはスマホでのニュースの「見え方」だ。特にネットメディアは、トップページ(ブランド)からのアクセスが1割に過ぎず、検索サイトに上位に来た記事やSNSからの流入が大半を占めるため、ユーザーは「見たいものしか、見えない」状態であるというグロービス経営大学院の川上愼市郎氏の「キメラ」説を紹介している。

 私もネットメディアでデスク・ライターをしているからよく分かるのだけど、例えばインタビュー記事のような「かため」の記事がプラットフォームやニュースアプリに拾われることが稀だし、「ネットで話題」=「テレビでの芸能系の話題」に偏りがちになり(スマートニュースにはそういう記事が掲載される傾向がある)ため、「ジャーナリズム」をやりたければ「猫」を数倍記事として出さなければならない、という状況に多くのネットメディアが直面している。ただ、上記のようなプロパガンダに引っかからず、ユーザーにとって有益な情報を出しつつ、「倫理」をもって「ビジネス」とバランスを取りつつ出して「猫」と付き合わないければならない。これは想像するよりずっと面倒くさい作業だ。

 個人的に気になるのは、「ネットの編集者やライターは質が低い」という言説(著者がそう断じているわけではない)。

 思うに、ネットメディアに人材が不足しているのは事実だろう。とはいえ、ページビューでもパイビューでもいいが、数字が厳然と示されるネットの世界ではKPIが紙の「媒体」よりも「記事」単体、もっと言うと書き手に向かう。その上、SNSなどでコンテンツの内容に関する反応に晒される。両者の耐性をつけることが出来る人間が果たしてどれほどいるのか。失敗をすれば盛大に叩かれ、よい記事を出しても大して褒められないという世界で、長くやっていける人材を育てるのは相当難しいように感じられる。それも人やメディアの「質」がなかなか上がらない理由として挙げられるように感じられる。

 いずれにしても、著者が書くようにネットメディアが「マスゴミ批判」や「ネットで話題」でアクセスを稼ぐ「ニセモノ」のままか、本物になれるのか、岐路に立っているということは肌感覚からも理解できる。個人的に、そこにどのようにコミットしていくのか、ということが課題として突きつけられた、というのが正直な感想になる。

 まぁ、そうは言っても、生活があるからね。そことの折り合いもつけながら、無理せずにやっていかないとね。

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