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英国の英断が生み出す新しい世界地図

英国のメイ首相が17日の演説でハードブレグジット(強硬的なEUからの離脱)を打ち出すのではないか、と噂されています。英国は昨年の国民投票の結果を踏まえ、新内閣はEUからの離脱に関して「慎重ながらもボトムラインを割らない議論」を進めてきました。つまり、EUからの離脱で英国国内へのインパクトを最小限に留める方法はないのかとベストの答えを探してきたわけです。ですが、大陸側から厳しい姿勢が垣間見えることで折衷が見込まれるネゴシエーションは止めてさっさと「はい、わかりました」といって出ていく姿勢を国民と共に醸成してきたように見えます。

ハードブリグジットとはEUとの関税同盟もあきらめるということであります。これは英国が本来望んでいた移民制限だけという穏健的処置はEUが認めないので強硬な姿勢に転じてきたと言えます。

これを受けて英国ポンドは対米ドルで急落し、ベンチマークの1.200を一時割り込むところまで売られています。歴史的には1.05がありますが、仮にハードブレグジットを強行した場合、1.000もありうるとする市場の見方もあります。強い英国ポンド売りは英国の将来の不安を表すものでありますが、個人的には英国はしたたかな国ですので強硬離脱をしたとしても寛容になれるかもしれません。

これは世界地図上での外交勢力争いともいえます。トランプ氏が当初から英国のEU離脱については「結構なこと」と賛意を示していました。16日にはトランプ氏が英国の前司法長官のマイケル ゴーブ氏から英タイムズ紙の取材を受けましたが、その際、トランプ氏は英国支持、ドイツ批判という明白な路線を打ち出しました。

歴史的に英国とアメリカは兄弟のようなものであります。金融市場に関しても悪い言い方をすればニューヨークを中心とするアメリカ市場は肉体であって頭脳はロンドンのシティにあったといっても過言ではありません。つまり、アメリカにとって英国の弱体化は自国に必ず影響が生じます。そこで、トランプ氏としてはドイツを叩き、欧州大陸を揺さぶる戦略に出ながら英国への援護射撃を行っているように見えます。稚拙でありますが、大きな影響力がありそうです。トランプ氏はメキシコ産BMWについても高い関税をかけると得意の個別企業糾弾をしています。

トランプ氏は自国中心主義と捉えられていますが、このところ、アライアンス中心主義にシフトしてきたと思います。ここは選挙当時と少し変わってきた感じがします。アライアンスを誰と組むか、ですが、アメリカのオールドフレンドであります。英国、イスラエル、日本、あと戦略的にカナダとは喧嘩しないとみています。また、かつて陽が当たらなかったところにも目をつけています。台湾、ロシアであります。

英国がEUとの関税同盟を結べなくなるとスコットランドなどが再び、英国からの離脱を問う国民投票に走るかもしれません。英国は小さい国ながらも圧倒的な能力と歴史を持つ威厳ある国家であります。そしてそれ以上に上手なアピアランスと儲け方を知っています。この国から発信される文化、歴史、社会、経済は今でも世界に伝播します。シェークスピアから11世紀にできたオックスフォード大学、産業革命、ロールスロイスにダイソン、更にはビートルズからエルトン ジョンまでこの国の特異な潜在能力はEUとの関税同盟が切れたぐらいではへこたれません。

つまり、英国の離脱は欧州大陸にとって極めて大きな損失であり、ドイツが再び帝国主義に走りやすくなるきっかけを作る可能性すらあります。そして欧州の混沌はロシアを利するのです。例えば私が今、一番注目している欧州の弾薬庫はセルビア、コソボ問題だと思います。第一次世界大戦のときと同じ民族問題であります。揉める欧州はトランプ氏を有利にする勘定になります。

英国は輸出型の国家ですので英国ポンド安は国内景気に大きくプラスになります。日本と同様、ポンド安のおかげでロンドンの株式指数FTSE100は12月初頭の6700ポイント強から7300ポイントを超える水準まで一気に上げてきています。ちなみに昨年離脱を決めた時には一時6000ポイントを下回っていたのですからそれから2割以上も上げているのであります。

個人的には実際の離脱にはまだ数年かかることから英国は緻密でしたたかな計算をしたうえでEUとの関税同盟が無くなっても英国に損失が生じない手段を考えるとしてもおかしくないとみています。以前、書きましたが私の知り合いでイートン校を卒業した英国人が「もう一波乱あるからまだ(投資は)駄目だ」といった意味はその後が良いという趣旨であると理解しています。

但し、私の最大の懸念は世界を再びブロック化する動きが強まる可能性が高くなってきた点であります。アメリカがアライアンスを組めばメキシコも中国もアライアンスを組みます。その明白な仕切りラインが出来た時、世界地図がどうなるのか、よく考える必要がありそうです。

皆さんの周りでアライアンスといえば航空会社がそうでしょう。そして、多くの皆様はそのアライアンスに縛られているはずです。これと同じことが地球規模の地殻変動が起きようとしているとすればとてつもない不安がよぎるのは当然であります。

では今日はこのぐらいで。

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