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70代半ばまで生き甲斐をもって働くためには、50代半ばまでにキャリアプランの見直しを。

■74歳までは働き続けるのが当たり前の社会へ

今月、現在は65歳以上の「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、65〜74歳は「准高齢者」と区分するよう日本老齢学会などが提言しました。日経新聞の記事では、これまで年金制度などの社会保障で「支えられてきた」年代を見直す、つまり65歳から74歳が「支えられる側」から「支える側」へ回る社会保障制度の抜本的な見直しへの布石ではないかと示唆されています。

「本当にそんな歳まで元気で働けるのか?」という疑問も浮かびますが、この記事では、これまで日本人の平均的な健康寿命と言われてきた男性71歳、女性74歳は「日常生活に制限のない期間の平均」や「自分が健康であると自覚している期間の平均」の主観的な数値であり、実際の健康年齢は男性82歳、女性85歳であると結論づけています。

このような社会になれば、従来「高齢者」になる65歳までは再雇用で働き、その後はリタイアライフをエンジョイする、というというコンセンサスがあったものを、今後は74歳まではしっかり働き、引退後、10年前後は引退生活楽しむ、というライフサイクルが一般的、という方向に変わってくるのではないかと思われます。また、支える人が増えることにより年金制度崩壊の危機を回避することもできるという、実は現在の日本において最重要かつ喫緊の課題も解決されることになります。

しかし、そんなユートピアを本当に実現にするためには、社会保障制度や税制にとどまらず、働き方に関するさまざまな制度や私たち自身の考え方の改革もまた、必要ではないでしょうか。

■社会保障制度や税制と同時に働き方制度の変革も

社会保障制度の変更が必要という点については、本日のダイヤモンド・オンラインの記事で野口悠紀雄氏も指摘しておられます。野口氏は「働かないほうが得」という現在の制度を見直すよう提言されていますが(就労収入があればあるほど年金受給額が減額され、医療費負担が増える)、私もまず、働いて収入が増えても受給する権利のある年金はきちんと支給され、その分は健康保険料はもちろん、所得税や住民税にも上乗せされない、という仕組みが必要だと思います。

次に検討が必要なのは、働き方の問題です。

定年延長の話が出ると必ず「これ以上まだ働けというのか」という怨嗟の声が上がります。実際、大学を卒業してから60歳まで40年近くにわたり、満員電車の「痛勤」に耐え、「家族のため」「会社のため」と身を粉にして働いてきた方々からすれば、無事に定年を迎えたのにまた15年も同じ生活を繰り返さなければならないのかと絶望的な気持ちになることでしょう。

また、長寿社会で多くの人が90歳を超えて長生きするとはいえ、60歳を過ぎれば病気などで倒れたり亡くなったりする人も徐々に増えてきます。健康を保っていたとしても、加齢につれ体力や集中力、新たな知識や技能を習得する能力もだんだん衰えていくのを自覚する人も多いでしょう。体力的にも精神的にもぎりぎりの状態を維持しながら75歳まで働きづめで旅行や趣味を楽しむ暇もないのであれば、働く期間が長くなることは、生き甲斐を得られるよりも逆に苦痛になってしまう可能性があります。

その意味で、例えば、勤務時間の短縮や勤務日数の選択制、日数上限を決めた無給の休暇制度の創設など働き方にゆとりをもたせ、「60歳以上になったらもっとずっと自由な働き方ができる」と定年後の会社員人生を楽しみにできるような労働条件を、企業単位の就業規則だけでなく、国家的な法整備も含めて創っていくことが必要だと思います。

■「いつまで働くか」だけでなく「何をして働くか」も考える

定年後の就労について、もう一つ考えておかなければいけない重要なポイントは、「どんな仕事をするか」です。

これまで60歳以上の方々を何人も雇用してきた経験から言うと、60歳を過ぎて新しい仕事や会社にチャレンジするのは非常に困難と言わざるを得ません。唯一の例外は同業他社で働いてきて、これまで培ってきた知識や技術を活かすことですが、会社によってそれぞれ企業文化が違いますので、新しい環境に慣れていくのには時間がかかります。年齢を重ねれば重ねるほど、短時間で環境に適応する能力や、新しい仕事にチャレンジする好奇心や気力が衰えていくのです。

そう考えると、ずっとこれまでと同じ会社や仕事を続ける意思がないのであれば、50代半ばくらいまでには仕事人生の最後まで続けられる会社や仕事をみつけておくのがベストではないかと思います。個人的には、多くの人にとってこのくらいの年齢がラストチャンスではないかと感じます。

■40代後半になったら仕事人生の後半戦に備えての具体的な準備への着手を

私自身は昨年、53歳で19年間経営してきた会社を退職し、新しい仕事人生を歩み始めました。

この年齢で退職した最大の理由は、毎月、日本とシンガポールの往復生活をしながら家庭と会社を維持していくことが体力的・精神的にきつくなったことですが、いっぽうで、これからまだ20年程度、もしくはそれ以上の期間仕事をするにあたり、ずっと続けることが不可能な仕事を止め、新しく始めたいことを始め、自分の仕事を再構築したいという気持ちが強くなったこともあります。

その結果、50代前半というのは最後のチャンスだと思い、3年近い準備期間を経て後継者に仕事を譲りました。もちろん、同時に新たな仕事への布石も打ってきました(私の場合、会社員の選択肢はありませんでしたので、新事業の準備のみですが)。多くの方々に「まだ辞めるのは早すぎるのでは?」と言われましたが、自分自身の感覚としてはぎりぎりのタイミングだったと今でも思います。

また、シンガポールに自分の会社を作ったのは48歳のときでしたが、この時も「これから年齢的にどんどん新しいことにチャレンジするのが億劫になる。であれば、まだ健康に問題がなく、気力も十分な今こそ起業のラストチャンス」と思い会社設立を決断しました。

さまざまなビジネスアイディアを長年にわたって温めて「いつかは起業したい」と考えている方も多いとは思いますが、起業、転職ともに、第二の仕事人生を始めるならばできるだけ早く、できれば40代後半には具体的な準備に着手し、50代半ばまでには実現したほうがよいと私は思います。

人生100年時代を迎え、仕事人生も40年弱から60年近くに延びようとしている現在だからこそ、自分のキャリアプランを、これまでとは違う方向から考え直すときに来ているのではないでしょうか。

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