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世界の潮流が変わる年 ―安倍外交の活きる年― - 屋山太郎

会長・政治評論家 屋山太郎
 

 新年を展望してこれほど先が見えない年は珍しい。世界の礎石と見做される米国を検証してみる。トランプ現象と言われたほどの変化を発信した米国がどう変わるのか。まずオバマ政権が続けてきた対ロシア、対中国、対中東、対日本などの外交政策に大きな変化が出てくるだろう。 新しい世界に安倍外交はどう対処するだろうか。安倍氏にとって世界はより対応し易い姿に代わっていくのではないか。

 安倍外交の戦略は一言で言えば「日米同盟を基軸として、中国を押え込む」というものである。国際的に常識的な言い方をすれば、日本の“仮想敵国”は中国である。中国を押さえ込むために安倍氏はインドとの親交を深め、オーストラリアとの軍事的連携を探ってきた。

 一方でASEAN10ヵ国との親密度も深めてきた。安倍外交によって最近では海洋国家であるイギリスもフランスも「太平洋」に強い関心を示すようになった。日仏は今月6日、外務・防衛閣僚会合(2+2)をパリで開き「南シナ海での国際法遵守を求める」と明記した共同声明を発表した。当然、同海域の軍事拠点化を進める中国を牽制する狙いだ。フランスは南太平洋のニューカレドニアや仏領ポリネシアに領土や基地を持つ。同会議で両国は防衛物品を互いに融通する交渉を始めることになった。これは軍事同盟に準ずるような意味を持つ。

 英日間では16年、日本の海上自衛隊がロンドンに入り、秋には英最新鋭航空隊が青森に来た。下敷きにはかつての日英軍事同盟がある。イギリスもフランス同様の権益が太平洋にある。 トランプ氏の悪態は今のところ中国に集約しつつあり、真意は「敵は中国」というものではないか。とすれば、安倍戦略との思惑の違いは見当たらない。米国も日米同盟を強化して、中国に第1列島戦は超えさせない戦略だろう。九段線内の領海化などはもってのほかといった強い姿勢を示すのではないか。

 歴代自民党政府や歴代米国大統領は中国の野望と見損ない、下手に出て、融和政策で乗り切ろうとしてきた。日米の親中政策が成功した例を見せて貰いたい。オバマ政権8年間で米国の国防費はひたすら減少した。その間に中国の軍備は10年間で4倍にもなり、明らかに米国の脅威となった。トランプ氏は「偉大なアメリカを再び作る」と述べている。経済的政策がどうまとまるか見当がつかないが、軍事力強化に向かうことは確かだろう。

 かねて親中派の朝日新聞はオバマ和平戦略を賛美してきたが、1月8日の社説にはこうある。

 「オバマ政権の8年、言葉で築く平和 未完に」 平和のお題目や言論による平和論では平和は達成できないと悟ったのかと思ったら、結論はこうだ。 「だからこそオバマ氏のレガシー(遺産)を世界は受け継いでいけ」だと。朝日新聞は世界の変化に何も学ばなかったらしい。こういうのを空論と言う。(平成29年1月11日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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