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世界経済成長のエンジンはどこにあるか?

私が子供のころ、アメリカはすごいと思いました。製品も文化芸能も社会も進んでいて羨望のまなざしでした。欧州もすごいと思わせました。イタリアのアパレルもフランスの洗練された各種ブランドもドイツの機械製品も初めて見たときは驚愕でありました。

多くの日本人は欧米の溢れる魅力ある製品とエスタブリッシュメントに「必ず追いついてみせる」と力強い熱意を持ちました。それが日本の高度成長を支えたバックボーンであったと思います。つまり目指す目標が明白にあったとも言えます。また、日本の奇跡の回復劇は欧米にも大いなる刺激を与え、彼らにして本気にさせたという好循環が生まれたともいえましょう。

世界経済の成長エンジンが片肺になったとしたらそれはほぼ同時に起きた日本のバブル崩壊(1990年)とソ連の崩壊(1991年12月)であります。かつてこの二つの崩壊を同一軸で語ったものはあまりお見掛けしなかったと思いますが、私はこの二つの事象が与えた世界経済成長エンジンへの影響は甚大だったと考えています。

日本のバブル崩壊は日欧米三つ巴の戦いから一つが脱落したことを意味します。これは欧米にとって勝者のポジションを勝ち得たようなものでしょう。次いでソ連崩壊は世界の二大体制の崩壊劇であり、アメリカの緊張は解けてしまいます。これがパクスアメリカーナでありアメリカ一極主義であります。

ところがアメリカはここで間違いを犯します。イラク戦争への介入であります。これをきっかけにアメリカはイスラム過激派との長い戦いを強いられるのですが、実際にボディーブローのように影響を受けたのは地政学的なこともあり、欧州だったという皮肉な結果が生まれます。

つまり、日米欧の足並みがそろった時ほどの成長エンジンを回復できない状態がしばし続くのですが、90年代半ばのパーソナルコンピューターの時代の幕開けは人類の生活そのものをすっかり変えた産業革命の始まりでありました。もちろん、現在もその革命は続いています。

ここで日本は数多くのノーベル賞受賞者という実績が見て取れるように高いレベルの産業の基礎研究、製品改善や安定供給で世界経済に大きな寄与をします。一方、アメリカは二度のバブル(ドットコムバブル⦅2000年ごろ⦆ と住宅バブル⦅2006年ごろ⦆)を経ながらも基軸通貨ドルという立場をうまく利用した金融政策が功を奏しリーダーとして君臨し続けます。

この間、欧州はEUの構造的問題が発覚し経済成長エンジンは大きく劣化、更に中国製の安い商品に太刀打ちできない産業界が続出します。

ではBRICSと称される新興国はどういう役割だったのでしょうか?私には経済成長のエンジンになったとは思えません。米国主導の世界経済に燃料を補給し続けた絶大なる支援者のように見えます。新興国が供給したのは安い労働力、資源、工場であり、頭脳はほとんど移管されていません。(盗まれたものはあります。)つまり原則、先進国が吸い上げるのが主体で、新興国発のエンジンが存在したとは言いづらいと思います。(たとえばIBMのパーソナルコンピューター部門の中国への売却は頭脳ではなく、コモディティ化したパソコンという発想だったはずです。)

但し、新興国の出現はグローバル化そのものであり、それらの国々のおかげでアメリカの企業は莫大なる利益を計上し、企業買収を通じて資本経済をより強固なものに変えていきます。つまり世界経済にとって日米欧、特にアメリカの果たした役割は極めて重要であったことは否めないのであります。

今日、このテーマを書いた理由はトランプ次期大統領が生み出す反グローバル化主義がもたらすであろう世界経済の成長リスクであります。ツィッターでつぶやき、メキシコに工場を出すことを批判し続けるトランプ氏の経済プランはアメリカ国内経済とそれ以外の国の経済を比較した場合、リスクが顕在化し、予見できない波乱が起こりうる気がします。

1月11日のトランプ氏の記者会見はアメリカ国内経済を優先する姿勢をより強固に示したと思います。製薬会社が海外でクスリを作ることにそこまで反対するのは雇用より法人税収入の確保ではないかと勘繰りたくなります。

「トランプ方式」は初期に於いて非常に効果的で即効性があります。そのため、資金がアメリカに集中し、高い期待感を醸成します。ところが「自己都合主義」ですから資金が外に回らなくなり、アメリカ以外の国では行き詰まり感が出やすくならないでしょうか?

世の中にはバランス感が必要です。「アメリカとそれ以外の国」という「1%と99%」をほうふつとさせるような話は世界経済ではあってはいけないのです。仮にそうなれば大多数は成長シナリオから脱落する悲劇が待っています。

「金持ちはカネをばらまくことでもっと金持ちになる」と言われます。トランプ氏は財布のひもが固く、ケチで頑固なイメージが付きまといます。今、どんな国家元首も専門家も経営者もアメリカが何色に染まるのか、固唾を呑んで見守っています。私にはトランプ氏が色を出す前に間違った配色をしないよう働きかけることがもっと重要ではないかと思います。

残念ながら欧州の主要元首はほぼ全員、無力化しています。残るは安倍首相しかいないのです。世界の成長エンジンが再びフル スロットルで加速できるかを占う世界の数少ないキーパーソンの一人であります。次回のトランプ氏との会談に注目しています。

では今日はこのぐらいで。

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