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伊勢崎賢治の「新国防論」を読む

 昨年から図書館に申し込みして順番待ちをしていた本が、この正月に次々とOKの通知が来て、このところ読書で時間を過ごしています。この本には「9条もアメリカも日本を守れない」という副題がついていて、毎日新聞出版による2015年11月発行の単行本です。9条もアメリカも日本を守れないのならば、何が日本を守れるのかという答えを先に言ってしまうと、それは「敵を作らない外交」なのでした。

 国防を論じる最初の認識として、日本は「背中がスカスカで国防の『懐』がなく、地政学上、非常に脆弱な位置にある」ということがあります。海岸線に原発を並べた現状は、どこの国も国際法を守ってくれるという「性善説」を前提にしないと、国防を考えることもできないのです。これは親米、反米をも超えた絶対的な命題なのです。

 伊勢崎氏は世界の紛争現場で何度も「武装解除請負人」の役目を果たしてきた人ですから、戦争を抑止するために効果のある条件づくりを熟知しています。その経験から語られる国防論には、本物としての説得力があります。著者は護憲論者ではありますが、非武装論者ではありません。交渉には丸腰で行きますが、正義のための武力行使を否定はしません。ただし現状のままの自衛隊に武器を持たせて海外に出すことには、絶対反対の立場です。法的な整備が全く出来ていないからです。

 著者は巻末に「日本の指針」として10項目を列挙して、この本の内容を総括しており、この部分を読むだけでも有益ですが、私の印象に残ったテーマを二つ紹介しておきます。

 その一つは「突発的な危機は空から起きる」ということです。陸には警察があり、海には海上保安庁がありますが、空の警備には戦闘機しかありません。つまり空では日常的に正規軍同士が領空をめぐって接触する機会があるわけです。しかもそれは客観的な事実関係を確認しにくい高空で、短時間のうちに起こります。ここで偶発的な衝突が始まった場合には、直ちに国際関係を緊張させる可能性があるのです。

 それだけに、空の警備には慎重な対応が求められます。戦争は、よく一発の銃声から始まると言われますが、戦闘機の先制の一撃は、直ちに「敵機の撃墜」につながるでしょう。そのような危険を相互に感じるような、瀬戸際までの接近をしない自制心が求められます。

 もう一つは、中国脅威論を煽らないということです。脅威の優先度を見誤らず、「憎悪」を排除して大局的に捉え、非軍事での対応を強化しなければなりません。「歴史修正主義」のレッテルは、日本の国防外交上の最大の障害になります。それよりも日本自身が、国際人権世論を味方に引きつけることが、何よりの安全保障になるのです。これを「心を入れ替え、善行を重ねている前科者」の立場と伊勢崎氏は表現しています。

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