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【大予測:資本主義】国家に企業が従う統制経済復活 その4

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岩田太郎(在米ジャーナリスト)

米資本主義の約束と、現実の乖離が頂点に達した時、米国民は型破りな非政治家・非専門家・非官僚のドナルド・トランプ氏を大統領に据えた。

トランプ次期大統領は、規制撤廃や法人税減税など企業にやさしい政策を実行しながらも、米国内の雇用を守れと叫ぶ「国民情緒」という超法規を企業利潤に優先させるなど、新自由主義型の資本主義とは相容れない「計画経済」「統制経済」を、企業の利潤追求の総本山である米国で実行に移し始めた。

国家の経済への介入は、すでに我が国でもお膳立てが整っている。日本銀行の国債や株式購入による金融緩和で、債券市場はすでに日銀の支配下にあるし、株式を大量保有される企業が国家意思の支配下に入る準備もできている。

また、トランプ次期大統領が、「資本主義国においても、政府が企業の活動に介入してよい」との前例を作ってしまったことから、安倍晋三総理がそれに倣うハードルは、ぐっと下がった。戦前の統制経済の再来は近いかもしれない。

経済学者たちも変節してゆくことだろう。著名な経営学者の村本福松・大阪商科大学教授は1919年に日本人として初めてハーバード大学経営大学院で経営学修士(MBA)を取得し、日本に米国式の経営学を導入する先駆者となった。1937年当時に飽和状態と考えられていた大阪市の百貨店出店状況が、まだ新規出店の余地ありと正確に分析するなど、エコノミストとしての目は確かだった。

米経営学に対する理解は、「何人も及ばぬほど深大であった」とされる村本教授は1934年、「経営学の真に正しき姿」を説くなかで、経済性(つまり利潤)の追求こそが、善の実現につながると論じていた。ところが、10年も経たない戦中の1942年になると、経営学の研究課題が、「(統制経済で)国家的要請である高度化企業の実成を目指すこと」であると主張するようになる。

村本教授は米国帰りで「西洋かぶれの売国奴」と見られかねないことから、「無実」を証明するために、極端な変節をしたという解釈も成り立つだろう。だが、疑いをかけられる恐れのなかった他の大多数の経済学者たちも同時期に、統制経済派に変節していたのだ。何が経済学的に正しいかが、大衆迎合する政府の都合に合わせ、いとも簡単に変わり得ることを示している。

そのような大衆迎合的な政府は、経済の需要不足を解決しようと、孤立主義や保護貿易など経済統制策を取るようになる。「破滅博士」の異名をとるニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が指摘するように、「1920年代と30年代に米国がそうした政策を追求した時に、第二次世界大戦の種がまかれた」のであり、トランプ次期大統領の政策は「経済的そして軍事的惨劇の確実な一歩」になる可能性がある。

また、前ミネアポリス連銀総裁のロチェスター大学教授、ナラヤナ・コチャラコタ氏は、「30年代を通して世界的な需要不足が続いた。50年代には大体において解消されていたが、第二次世界大戦がもたらした破壊こそが、その回復の源だった」と述べ、「30年代と40年代の経験は、世界的需要不足がもたらす経済的圧力が非常に敵対的な地政学的結末をもたらすことを示している。不幸なことに、そうした敵対的な地政学的な結末をもたらすしるしが、1年前に比べ、飛躍的に増えた」と、不吉な予測をしている。

だからこそ、統制経済の逆である自由貿易が、繁栄と平和をもたらすとの言説が戦後に広まったのだ。しかし、その自由貿易こそが収奪と搾取のメカニズムであり、経済の長期停滞と平和の揺るぎをもたらすということが明らかになってしまった。リベラルエリートたちの「自浄策」も、状況を悪化させるのみだ。

その絶望的な認識のなかで、大衆迎合政治と統制経済が台頭している状況が、2017年初頭の我々が置かれた状況である。多くの指導者や学者や識者が変節し、政治や経済の統治のあり方が激動する一年となろう。そのなかで、大きな戦争の萌芽が見られるようになる。だが、そのなかで、今ははっきり見えない「資本主義の代替」のヒントも現れよう。

(了。シリーズ全4回。その1その2その3。)

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