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日本経済を予測する上で今年のリスクシナリオを考えてみる - 塚崎公義

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新しい年を迎えたので、今年の経済見通しが次々と発表されています。しかし、今年の日本経済は、「昨年同様に緩やかな回復を続ける」とする以外のメインシナリオは考えにくいでしょう。そこで本稿は、日本経済に今年起こりえるリスクについて考えてみることにしましょう。ちなみに筆者の専門は経済予測であり、軍事・外交面の予測には難があり得ますが、悪しからず。

国内的には、特段のリスクが見当たらず

 日本国内を見る限り、政治面でも経済面でも特段のリスクは見当たりません。政治面では自公の安定政権が続くでしょうから、概ね無風でしょう。都議会選挙を契機として自民党内に亀裂が生じる可能性はありますが、それが経済政策に大きな影響を与えることはないでしょう。もちろん、安倍晋三総理が健康問題等で辞任される可能性等はゼロではありませんが。

 経済の面でも、特段のリスクは予想されません。消費税率の引き上げは予定されていませんし、財政金融政策が景気の腰を折ることは考えにくいでしょう。為替レートの円安と原油高が進行すれば、インフレ率が一時的に2%を超えることは考えられますが、それで金融政策が変更されることもないでしょう。一時的な要因によることが明白で、インフレ率が安定して2%を超えるといった状態にはほど遠いからです。

 国内要因だけを考えれば、株価の暴落も考えにくいでしょう。株価はトランプ相場で大幅に上昇しましたが、PBRやPERを見る限り、未だに「大幅な買われ過ぎ」という水準にはありません。

 少子高齢化による労働力不足は着実に進行し、非正規労働者の待遇は改善を続けるでしょう。その結果、高い時給が払えない非効率な企業は淘汰されるかも知れませんが、労働力が高い時給が払える効率的な企業に流れるのであれば、それはマクロ的な日本経済にとってはリスクというよりもむしろ望ましいことでしょう。

リスクというより、予想に近いのが、米国のインフレ懸念

 トランプ次期米国大統領の政策は、未だ全貌が見えて来ないものの、米国内の雇用を増やす政策が採られることは確かなようです。財政政策で景気を浮揚させれば、物価には上昇圧力がかかるでしょう。

 移民の流入を阻止したり、違法な移民を強制送還したりすれば、現在移民が従事している低賃金労働の従事者が不足し、人件費が上がることでインフレ圧力を強めることになるでしょう。もしかすると、ボトルネックが生じるかもしれません。イメージとしては、清掃要員が大幅に不足して、営業停止に追い込まれるホテルが続出し、営業しているホテルの宿泊料が需要と供給の関係から高騰する、といった感じです。

 中国からの輸入品に高額関税を課す、といった保護貿易主義が採られるとすると、これも米国経済のインフレ要因になります。中国製品よりも高い他国製品に輸入先がシフトするかもしれず、米国国内での生産にシフトするかもしれませんが、いずれにしても中国製品よりは高く付くでしょう。国内生産の場合には、米国内の労働力需給を逼迫させて賃金を上昇させ、「賃金コストの転嫁によるインフレ」を引き起こす可能性もあるでしょう。

 米国がインフレになる(あるいはインフレ懸念が高まる)と、日本経済にはいかなる影響が出るのでしょうか? 理論的には購買力平価説に基づき、物価の上がる国の通貨は安くなる(ドル安円高になる)とも言えそうですが、実際には「米国のインフレ懸念が高まるとFRBが利上げをするであろうから、日米金利差が拡大してドル高円安になるだろう」という金融市場の思惑からドル高円安となり、日本の景気にとってはリスクというより追い風となる可能性もあります。米国の利上げによって資金が引き上げられて困る途上国も多いでしょうが、日本の場合には資金が米国に流れることは困ったこととは言えないでしょう。むしろ、景気の予想屋にとっては経済予測以上に景気が良くなってしまう「上振れリスク」なのかもしれません。

TPP離脱はリスクにあらず

 トランプ次期大統領がTPPを離脱したとしても、何も起きません。TPPが発効すれば起きたかもしれないことが起きなくなった、というだけですから、今より悪くなることはありませんので、これはリスクとは言えないでしょう(良くなることもありませんが)。

 トランプ次期大統領は、NAFTAからの脱退も考えているようです。これについては、メキシコ経済にとっては大きなリスクであり、メキシコに進出している日本企業の子会社にとっても大きなリスクでしょうが、日系メキシコ企業は、日本企業ではなくメキシコ企業であって、失業するのはメキシコ人労働者です。日本経済への影響は、せいぜいメキシコ子会社から東京本社への配当金が減る程度の話ですから、気にする必要はありません。

 年明け早々、トランプ次期大統領が、トヨタがメキシコに工場を作る計画を批判したことが話題になりましたが、これでトヨタの日本人従業員が失業するわけではありませんから、(株式投資家は別として、日本経済を予想する人にとっては)過度な懸念は不要です。

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