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温暖化防止、米国の利益より世界の利益優先を

パリ協定、目標実現すれば漁獲高600万トン増
海の未来、ネレウスプログラムが試算


世界の平均気温上昇を、地球温暖化対策の新しい国際ルール「パリ協定」が掲げた1・5度に抑えれば、放置した場合に比べ年間の漁獲量は600万トン増える。こんな研究結果を、日本財団がブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)など7つの大学・研究機関と共同実施するネレウスプログラムが発表し、昨年末、学術雑誌「Science」に掲載された。

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日本財団ネレウスプログラム提供

パリ協定は、二酸化炭素(CO2)排出量が世界の1、2位、全体の40%以上を占める中国、米国が昨年9月そろって批准し発効した。しかしドナルド・トランプ米次期大統領は選挙戦の中で「温暖化はでっち上げ」、「米国の製造業の競争力を削ぐ」と早期離脱を表明、当選後、やや態度を軟化させたもののニューヨークタイムズ紙のインタビューに「離脱についてあらゆる可能性を排除しない」と答えるなど、消極的な姿勢を見せている。

トランプ氏にとってCO2の排出規制は、同氏が掲げる「偉大な米国の復活」の足かせになるということであろう。人類の産業活動が地球温暖化の原因、あるいはそのひとつといった認識が希薄なのかもしれない。締約国が脱退を希望する場合、協定の規則で4年間の待機時間が必要となるようだが、留まったまま国内の取り組みを緩和したり実施しなくとも罰則はない。

全ての国が協力して地球温暖化対策に取り組むのがパリ協定の狙いであり、米国の姿勢は排出量1位の中国や途上国、さらには排出量5位の日本の対応にも影響する。地球温暖化は国を越えた地球全体のテーマであり、ネレウスプログラムの研究成果も、パリ協定の趣旨の実現を促すデータとして重視される必要がある。

ネレウスプログラムは2011年にスタートし、これまでも「気候変動と海洋環境の変化」、「世界の魚資源の未来」など、海の未来を地球規模で予測する研究成果を発表、パリ協定を採択した2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でも取り上げられた。温暖化による海水温の上昇や海水の酸性化などによって魚資源が全体に冷たい海水域に移動するため「赤道周辺などの一部地域では2050年の商業魚種の漁獲高が40〜60%減少する」といった報告も公表している。

今回の研究では漁業の変化を数値化したコンピューターモデルを使い、海水温の上昇をパリ協定が掲げた産業革命以後1・5度の上昇に抑えた場合と、放置した場合に避けられない3・5度上昇のケースを比較、海水温の上昇に伴い熱帯海域の魚が温帯海域に、温帯海域の魚が北極海域に移動することで起きる各海域の漁獲高を比べ、「地球温暖化が1度抑えられるごとに潜在漁獲量は、放置した場合に比べ300万トン以上増え、パリ協定の1・5度が達成されれば600万トン増える」と結論付けている。

対象になっているのは河川・池など内水面漁業を除いた遠洋や沿岸の海面漁業。世界の海面漁業の漁獲高は年間9000万トン前後で推移しており、600万トンは全体の6、7%に当たる。特に熱帯海域では魚が深海や環境が適した温帯海域へ移動するため漁業が絶滅する地域も発生する、などと指摘している。

地球温暖化の原因をめぐっては、さまざまな議論があるが、近年の異常気象や台風の巨大化ひとつとっても温暖化との関係を抜きにして考えにくい。疲弊した海を元に戻すのは最早難しい、といった指摘もある。海にとって気候変動は、かねて指摘されてきた乱獲以上の脅威であり、海の危機は地球の危機でもある。特定の国だけが無関係ということは有り得ず、米国も例外ではない。温暖化防止は各国が国の利益より地球全体の利益を優先させて、本腰を挙げて取り組むべき喫緊の課題である。(了)

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