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「ばっちゃん」の貧困少年支援の意味~NHKスペシャルは支援現場を好む

■「ばっちゃん~子どもたちが立ち直る居場所~」

僕は広島県の青少年支援アドバイザーであり、ここ数年は年に何回か広島を訪れている。

その広島で活躍するこの方を中心に据えたNHKドキュメンタリーが放映され話題を呼んでいるようだ(NHKスペシャル「ばっちゃん~子どもたちが立ち直る居場所~」)。

この地道な取り組みは素晴らしい。また、このような地道な取り組みが不登校支援や虐待支援、ひきこもり支援や発達障害支援などをテーマにたくさん展開されていることを僕は知っている。

だから、番組の内容や「ばっちゃん」自体は尊敬できるし、ここを起点として同種の取り組みを行なう人々が増えることを願う。

だがこの「現場」レポートとは別のレベルで、僕はいつもの問いを抱く。

それは、

「なぜメディアは『個別の現場』から始めるのだろうか」

という問いだ。

ばっちゃんの奮闘、少年たちの苦しみと意欲の意味はよくわかる。が、「それ」から始める必要はあるか?

この映像は、この問題を一般視聴者、つまりは日本に住む人々に訴える時にそれほど必要なのか?

こうした映像は後回しにして、虐待を産む社会構造をもっともっとわすりやすく解説することから始めるコンテンツづくりは不可能なのだろうか。

某I上氏的な「一見わかりやすいが結構上から目線」的伝達でもなく、よくある専門家解説でもなく、某H下氏的「一見わかりやすいが結構個人的ルサンチマン蠢く」つぶやきでもなく、かといって「ばっちゃん」の現場から始めるのではない、直球で問題そのものに肉薄する手法は不可能なのだろうか。

やはり、この「ばっちゃん」や、大阪市西成区の某支援施設のドキュメンタリーである「さとにきたらええねん」的ドキュメンタリー(「さとにきたらええねん」公式サイト)のような特例的個別現場事例からしか我々は問題の本質(貧困問題とその解決案)に近づくことはできないのだろうか。

■ アンチ一般化思考

そうした特例の素晴らしい事例から始まる手法では、「あの人やあの施設だから、その素晴らしい支援は可能なのだ(普通は不可能)」という、ある種のアンチ一般化思考を生む。

このアンチ一般化思考はわりとタチが悪く、日本社会内の「支援」現場にある種の逃げ姿勢をとらせることを許容する。それは、ばっちゃんだからできた、Sさん(西成「さと」)だからできた、という逃げだ。実際僕は、そうした言葉を時々聞く。

一概に個別例から始まるメディアの手法が古いと批判することはできないが、メディアは伝え方に工夫することはできる。

それはたとえば、単純に「支援する側」ではなく、「支援しながらも過去に支援された人々、今は支援もしながらこつこつ現場から『伝える』工夫もしている人」という、過去に「当事者」今は「経験者」兼「支援者」兼「伝達者」という複合的立場の人々を取材することだろう(元ひきこもり当事者たちが実践している)。

またたとえば、全然別のジャンルから(たとえば宗教やホームレス支援)子ども若者のジャンルに到達してしまったという人々もいる。また、「哲学カフェ」といったアカデミズムの傍流から現代社会問題のコアにたどりつく人々もいる。

それらの人々の個別事例ではなく、それらをまとめて解説する「ことば」から始める手法も考えられる。

■メディアには力がないか

そのようなことをFacebookに書いていると、旧知の某先生から「メディアにはそれを伝える力がない」というコメントをいただいた。

が、はてしてそうだろうか。メディアには、現代社会がもってしまった問題に対して、総合的解説ができる人が内部に存在しないのだろうか。

僕の仕事(大阪の府立高校に「高校生居場所カフェ」をつくる、あるいは大阪市の住吉区や平野区内に行政の横断的ネットワークをつくる)を通して出会うメディアの方々を見ていると、確かにそうした力はないようにも思える。

同時に、あるようにも思える。

ややこしくて申し訳ないが、つまりはメディア人はパッション~熱意はある。が、センシティブさが紋切り的だ。これは、彼女ら彼らが中流・上クラスより上出身だというどうしようもなさ(でないと「一流大学」にも「一流企業」には入れない)から来る。

けれども、これまた身もふたもないのだが、彼女ら彼らへの「発信教育」さえ行なえば、まだメディアには可能性はあると僕は考える。

つまり、現代社会にとって最も必要な一つは、現代社会の問題を伝達するメディア人への教育なのだ。それはおそらく、内部研修では不可能だろうし、メディア人個人が行なう「個別研修」(読書とか)でも不可能だ。

けれども、「支援現場偏向」という姿勢は、メディア研修で十分変更可能だとは思う。

やっかいなのは、支援現場の「感動」を求める、一般市民の嗜好なのかもしれない。この嗜好が、支援ではなく、社会システムの前提を問い直す「予防」視点から遠ざける。もっと言うと、予防は「汚れている」的心境を市民に伝えているのかもしれない。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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