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「少女像」設置問題に思うー冷静な状況認識と議論、そして対応を

 韓国は釜山の日本総領事館前への「少女像」設置を受けて、日韓関係がギクシャクしている。一昨年末のいわゆる「日韓合意」を受けて、京城の日本大使館前の「少女像」を撤去するはずが、釜山にまで設置されたことで、日本政府としては遺憾の意を示すとともに、在韓日本大使らの一時帰国、日韓通貨スワップ取極協議の中断等の措置が採られることとなった。(その根拠として、菅官房長官は領事関係に関するウィーン条約の規定を挙げている。具体的には第30条第3項「接受国は〜領事機関の公館を侵入又は損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害又は領事機関の威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有する。」が該当する。)

 これを受けて、日本国内では政府の「毅然とした」対応を賞賛する声が上がるとともに、元慰安婦支援の名目で10億円を拠出したにも関わらず「少女像」を撤去しない韓国に対する嫌悪感が広がっている。

 そもそも、この「日韓合意」というもの、両国政府が署名した合意文書が存在するわけではなく、あくまでも日韓両国外相による共同記者発表という形がとられており、合意を根拠として今回の一件を云々するのは難しいだろう。

 また、発表された内容にしても、「少女像」の撤去については、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。」とされているだけで、撤去を約束する内容とはなっていない。したがって、10億円拠出したのだから撤去せよと主張するのも難しいと考えざるをえない。(一方で、今回の日本政府の措置、内容の妥当性は別として、「公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し」とあることからすれば、先のウィーン条約の規定をその根拠の一つとして挙げたことは理にかなっていると言えよう。)

 だいたい、「少女像」なるものを設置したのは韓国政府ではなく「民間」の団体である。韓国政府ができるのは、良好な日韓関係の維持のために撤去することを要請するか、韓国の公物管理法に基づいて、公物管理の観点から撤去等を行うかのいずれかであろう。

 だからこそ、そうせざるをえないように、日本政府としては断固とした対応をすべき、といった声も聞こえてきそうであるが、韓国の現政権は末期症状であり、国民感情を煽るようなことは何もできまい。つまり、期待しても要求しても何も動かないであろうということである。

 それ以前の問題として、昨年の年始の拙稿でも述べたが、「少女像」なるものは「慰安婦問題」との関係性は明らかではなく、なんとなくそう理解されてしまっていると考えた方がいいようなシロモノである。旧日本軍が朝鮮人の少女を慰安婦として強制連行したかのようなイメージを持たせるための反日プロパガンダの道具であると言ってもいいだろう。しかし、「日韓合意」においては「少女像」と「慰安婦問題」を結びつけてしまった。まんまとプロパガンダに乗っかってしまったわけである。単刀直入に言って、反日プロパガンダを10億円で止めてもらうことを求めるに等しい一昨年の「日韓合意」は失敗であったということだろう。

 そしてこの「少女像」、ご承知のとおり韓国のみならず米国等でも設置されている。「少女像」を通じて、日本=少女を慰安婦として強制連行した悪い国・民族という負のイメージを拡散するために行われているわけであるが、米国で「少女像」設置の資金を提供し、これを進めている団体には中国系の団体も含まれると聞いている。そこまでくると、「少女像」設置を巡る問題は日韓関係に止まらない問題であると理解した方がいいだろう。

 すなわち、「少女像」は日本のイメージを貶め、日本を攻撃するに際しての格好の道具の一つとなってしまっているということであり、「日韓合意」により、その道具としての価値が皮肉にも高まってしまったということであろう。

 そうした状況下での中国軍機の対馬海峡上空通過である。筆者には今回の「少女像」設置問題と見えない糸で繋がっているように思われてならない。(加えて米国が政権移行直前である。)反日プロパガンダを使って弄ばれる日本、聞きたくもないし書きたくもないが、現状を端的に表現すればこうなるのではないか。

 こうしたことを踏まえれば、やれ韓国はどうのと言う前に、これは相当に注意深く行われなければならないが、従軍慰安婦問題を巡る事実を慎重かつ丁寧に発信するということを始めるべきなのではなかろうか。時間はかかるし、紆余曲折あるだろうが、始めるしかない、率直にそう思う。そして反日プロパガンダによる負の連鎖に終止符を打つことを目指すべきであろう。(安倍総理は、就任早々の平成25年初頭、本気で戦後レジームからの脱却を目指そうとした。しかし、米国から「歴史修正主義」のレッテルを貼られて、見事なまでに折れてしまった。それ以降、真逆の対米従属にひた走ることになったのだが。)

(昨年の拙稿も参照されたい。「「慰安婦問題」を巡る日韓合意と中国の地域覇権の伸張―本質は慰安婦問題にあらず?」

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