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メードインアメリカン主義

かつてアメリカではバイ アメリカン主義がはびこったことがあります。一回目は1933年の大恐慌時に国内産業保護、育成の為に政府調達の製品にアメリカ国内製を優先購入することを義務付けました。同様の法律は2009年にオバマ大統領のもと、バイアメリカン条項として鉄鋼など公共投資にかかる財の購入をやはり、国内製品優先とするものでした。

これとは別に日本がアメリカに輸出攻勢をかけていた70年代から80年代にかけて様々な物品についてバイ アメリカンのボイスが高まり、アメリカ製の製品を買おうという動きが出たことがあります。自動車などがその典型で私が80年代初頭ニュージャージー州にいたとき、その議論をしたことを覚えています。

今でもカナダから国境を越えてアメリカに渡ると途端にアメ車が増えることでアメリカに来た、という実感を持ちます。アメリカから消え去った産業もある中で自動車や鉄鋼を死守する政府の姿勢、国民に一体感を持たせるその啓蒙は日本ではあまり見られない動きであります。

同じような展開は中国が瓜二つで、外国から導入した技術を展開し、いつの間にかデザインから仕様までパクられていて中国の内製化が一気に進むというパタンが見られます。自国製品を愛するという意味では米中は似たところがある点では「喧嘩するほど似たもの同士」なのかもしれません。

北米では注目のデトロイトモーターショー(北米自動車ショー)が始まりました。今回は自動車ショーの中身より政治的駆け引きの方に注目が集まってしまいました。主要各社の工場展開や投資姿勢にばらつきが出たことであります。

まず、アメリカ主要3社ですが、フォードはメキシコに作る予定だった工場計画を撤回し、アメリカ ミシガン州でそれを展開することにより700人の雇用を守ると発表しました。次いでフィアット クライスラーはやはりミシガンとオハイオ州に設備増強投資で10億ドル(1170億円)を投じ、2000人を追加雇用すると発表しています。

一方、GMは計画していたメキシコ工場での生産計画は変更しないと発表し、トランプ氏からの名指しの批判を受け流す姿勢を見せました。トヨタは9日に豊田社長の記者会見をおこない、なんと今後5年でフィアットクライスラーの10倍にあたる100億ドル(1兆1700億円)を投じると発表しています。

自動車産業はすそ野が広く、また、アメリカ国内における消費の原点でもあることから自動車産業を製造から消費まで絶対に守るというスタンスは政治的なプロパガンダとしてはよく理解できます。トランプ氏のツィッターは二つの効果をもたらしました。対メキシコという感情的な部分をリードすること、もう一つはトランプ氏を大統領に引き上げた白人労働者階級への当然見せるべき姿勢、という点であります。

GMは敵対する姿勢を見せましたが、多分、真綿で首を絞められるような事態になり、何らかの変更、ないし、撤回を余儀なくさせられると思います。

では、メードインアメリカン主義はワークするのでしょうか?実態面としては私にはやや厳しい現実が待っていると思います。アメリカは既に雇用状態は過熱感があり、完全雇用に近い状態とされます。経済学的には労働者のクオリティが下がり、賃金が上がることからありそうであり得ないのが「完全雇用(=失業率0%)」なのであります。

12月のアメリカの雇用統計でも労働参加率が上がったことで失業率がやや悪化したのですが、この労働参加率の上昇とは今まで働く意思がなかった人たちが労働市場に戻ることを意味します。主婦であり、高齢者であり、ふらふらしている若者であったりするわけです。

これは日本でいう「1億総活躍時代」にもつながるのですが、雇用市場の過度の刺激は生産性の低下を招きやすくなるという問題が生じてしまいます。もう一点は労働市場に労働者が払底すると賃金が安い単純労働をする人間が減り、社会が廻らなくなるリスクがあります。カナダでは資源ブームの際、一時期その状態に陥り、外国からの単純労働者を積極的に受け入れたケースがあります。

とはいえ、日本の実業界はアメリカへの投資を増大する方向で足並みがそろってきています。例えば日本電産の永守社長は自動車業界がアメリカ回帰をするなら自社もそれに足並みをそろえてアメリカでの生産拡大を検討すると述べています。孫正義氏もトランプ氏との会談を経て500億ドル、5万人の新規雇用を生み出すとぶち上げています。

個人的には少なくとも否が応でもトランプ流の流れについて行かざるを得ない雰囲気なのだろうと思います。実務的には雇用のゆとりはさほど深いわけではなく、シリコンバレーやシアトルからの「自動化」の技術発展がより期待されると思います。つまり、自動運転車、ドローンによる配送から農作業を含めた作業効率化、更にはアマゾン コンビニにみられる無人店舗化でありましょうか?そのうち、スターバックスやマクドナルドでロボットがコーヒーやバーガーを作る時代が遠くない日に訪れるのでしょうか?それぐらい人は足りなくなると思います。

ところでこのトランプ政策のボトムラインは何処にあるか、といえば十分な人口と健全な消費活動が展開される経済規模が生み出す強気の内需拡大策であります。日本でこれをやってもあまり効果がないところが寂しいところであります。

では今日はこのぐらいで。

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