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2017年の国際秩序は再編へ?

今日の横浜北部は、晴れると思ったら昼前から小雨が。

さて、今日はうって変わってワシントン・ポスト紙に掲載されたコラムの要約です。

サミュエルソンといえば主に経済について書いているベテランコラムニストですが、正月に掲載したコラムでアメリカの冷戦後を大雑把に振り返る内容を書いておりました。

やや大味ですが、興味深いのでその要約を。

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2017年の新世界秩序

by ロバート・サミュエルソン

2017年に繰り返し問われることになる疑問は、「われわれは第二次世界大戦後に確立した、米国の経済力と軍事力に裏打ちされた国際秩序の漸進的な崩壊を目撃しているのではないか?」というものであろう。

1991年のソ連崩壊から「アメリカは世界に残った唯一の超大国である」とする議論が流行したが、そこでは「パックス・アメリカーナ」が平和と繁栄を推進するものとされてきた。グローバル化と貿易は国家同士の絆を深め、市場と政府の監視を混合させたアメリカの経済・政治モデルは「世界の模範」とされて、生活水準の向上は、民主主義の考えと制度を強化するはずだと論じられたのだ。

たしかに純粋な軍事力という点ではアメリカに対抗できる国はなく、90年から91年にかけて行われた湾岸戦争はこのことを証明しているように見えた。

もちろん核兵器という恐るべき存在は残っていたが、安全な形での「膠着状態」に置かれていた。核保有国の数も少なかったし、最大の保有国であるアメリカとロシアも「核戦争が起こったら終わり」であることを互いに理解していたために、核の使用は考えられなかったのだ。

ある有名な批評家が述べたように、「歴史の終わり」への舞台は整っているように見えたのである。

ところが実際はそうはならなかった。このような「気休め」的なビジョンは、現実の世界を反映していなかったし、反映したことさえなかったのかもしれない。あらゆる面で「実際に起こった未来」というのは「想像された世界」を裏切ってきたのである。

世界経済の成長は減少し、主要国のほとんど(米中独など)の経済成長率は以前のレベルから落ちており、これによって世界的な景気鈍化をつくりだしている。そして当然ながら、さらなる繁栄と民主政治の到来は失敗したのである。

民主制度への幻滅は、経済への失望と同時に起こっている。グローバル化と貿易は不人気なものとなり、工業先進国の労働者の賃金と雇用を低下させた原因として非難されるようになった。これらの国々では、高齢化する労働者を守るための福祉政策に取り組む上で苦労しており、国民の声は、民主制の理想を強化するのではなく、経済ポピュリズムやナショナリズムの方向に逸れていってしまっている。

その結果が、英国のEU離脱とドナルド・トランプだ。

「唯一残った超大国」という考えの方もうまく行っていない。「パワー」というのは、自ら望むことを得ることのできる能力のことを意味するのだが、この定義からすれば、中国とロシアのほうがパワーを持った国であると言える

実際のところ、「超大国」(superpower)という言葉そのもののほうが、誤解を招きやすいものであったり、時代遅れになったのかもしれない。アメリカは重大な地域に部隊を派遣するだけで、望みどおりの結果を得ることができるわけではないからだ。

他にも、核の分野での合意感覚が薄れてきていることが問題だ。北朝鮮は核武装したし、イランも将来的にはわからない。核兵器の保有国が増えると、致命的な計算違いをするプレイヤーの数もそれだけ増える可能性が高まるかもしれないのだ。

第二次世界大戦以降のアメリカは、グローバル戦略の面でつまずいている。アメリカは同盟国を軍事的に守っている間に、平和が繁栄と安定した民主的な社会につながり、共産主義の心理的・政治的な魅力は拒否されると考えていたのだ。もちろんいくつかの面で障害は発生したが、それでもこの戦略は全般的には成功したといえる。欧州と日本は再建され、ソ連は失敗し、共産主義の信用は失墜したからだ。

このような話の流れからいけば「アメリカは冷戦後の国際秩序の構築を狙っていた」ともいえる。ところがアメリカが予期できなかったのは、他国からの反応と、歴史の複雑さであった。

実に多くの理由から、現在の国際秩序は不安定な状態にある。中国やロシアをはじめとする多くの国がアメリカの指導的な立場を不満に思っているからだ。そしてアメリカ人の多くも、この役割に疲れはじめている。新しいテクノロジー(Eコマースやサイバー戦など)によって、パワーと影響力はさらに再配分の方向に加速している。

ここで興味深いのは、アメリカの指導者たちがむしろ自国のパワーの低下に貢献する働きをしているということだ。オバマ大統領の軍事力に対する軽蔑はあまりにも明白であったために、シリアでも見られたように、アメリカの敵だけでなく、同盟関係者たちの間でも軽視されることがあったほどだ。

この帰結については、私の同僚のリチャード・コーエンが以下のように書いている。

「 第二次世界大戦の後、アメリカのリーダーシップは世界平和の維持という点において、決定的な役割を果たしてきた。好むと好まざるにかかわらず、アメリカは世界の警察官であった。他に巡回するような警官が存在しなかったからだ。ところがそのようなリーダーシップはすでに失われてしまった。そして同時に平和も失われつつあるのだ。」

トランプも国際秩序の弱体化を自分なりに感じている。彼が注目している分野は貿易だ。たとえばトランプは「中国とメキシコからの輸入に高関税をかける」と脅している。

これが貿易戦争の勃発につながれば、アメリカの労働者や企業にもその反発による「副作用」が出てくる可能性もある。過去に強力な貿易保護主義が台頭したのは1930年代であるが、この時の「実験」は悲惨な結果に終わったことは広く知られている。

さらに大きな問題もある。最新刊『国際秩序』(World Order)の中で、ヘンリー・キッシンジャーは世界が最大の危機に直面するのは国際秩序が一つのシステムから別のシステムに移り変わる時だと論じており、「自制は消滅し、最もなだめようのないアクターたちの、誇大妄想的な主張も受け入れられるようになる」と書いている。

そして「新しい秩序のシステムが確立されるまで混乱(カオス)が続く」と記しているのだ。これはたしかに冷静な警告であろう。

===

既存の秩序の崩壊、という意味では前回まで書いた次の本の内容紹介にもあった「冬」の時代の到来ともリンクしているとも言えそうですね。

ハーバード大のアリソンが主導する「ツキュディデスの罠」のプロジェクトでもそうですが、多くの識者たちはトランプの登場によって、何か新たな秩序への変化を予感しているのでしょうか?

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