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【大予測:資本主義】国家に企業が従う統制経済復活 その1



岩田太郎(在米ジャーナリスト)

「いよいよ来たか」。トヨタ自動車の関係者が、ドナルド・トランプ次期大統領のツイッター投稿に反応した。

トランプ氏は1月5日、「トヨタは米国向けのカローラを生産する工場をメキシコに(10億ドルを費やして)新しく建てると言っている。あり得ない!米国に工場を建てるか、高い国境税(関税)を支払え」と脅しをかけたのだ。

トランプ次期大統領は、就任前から世界一の超大国の指導者の絶大な権威を使い、資本主義のルールに則ったトヨタのメキシコ生産に難癖をつけて堅調な日本車の勢いを削ぎ、トヨタや日産自動車やホンダなどに勝てない米自動車メーカーを保護しようとしているように見える。

日本メーカーがメキシコや日本で生産し、米国で販売するクルマに高い関税がかかれば、日本経済にも大打撃だ。1980年代から「日本は、米製造業や労働者を不公正な貿易で痛めつける国」と攻撃してきたトランプ氏には、そうした意図が実際にあるのだろう。

だが、それはより遠大なトランプ氏の「資本主義大改革」の一部に過ぎない。正統性を失った新自由主義的な米国主導の戦後体制を、「非資本主義的な統制経済」「保護主義」や「『世界の警官』をやめた米国」「ロシアとの同盟」など、従来ではありえない発想で内部からひっくり返し、崩壊の危機にある資本主義や富裕層・エリートの生き残りを図るしたたかな戦略が、そこにはある。

この戦略の枠組みのなかでトランプ氏は、米製造業の企業にも次々と「米国内で生産を行わないなら、高い関税を払え」と脅迫している。ビッグスリーの一角、フォード自動車は、トランプ氏の圧力に屈し、メキシコで16億ドルをかけた新工場建設計画を断念し、代わりに米中西部ミシガン州に投資することを発表した。ゼネラル・モーターズのメキシコ生産も攻撃を受けている。こうしたなか、メキシコでの雇用がビッグスリーの中で一番多いフィアット・クライスラーが、標的になるのも時間の問題だ。

大統領当選以来、トランプ氏は米空調大手キャリア、鉄鋼大手USスティール、IT大手IBM、通信大手スプリントを傘下に持つ日本のソフトバンクなどに、「米国内での雇用を新規創出する」、あるいは「工場海外移転をやめ、米国内の雇用を維持する」ことを約束させている。「来る5年間に2500万人分の雇用を創出する」という、選挙中に広げた大風呂敷公約の実現が極めて難しいため、象徴的な「戦果」でカバーしようというわけだ。

こうしたなか、トランプ次期大統領の口先攻撃を受けてもいない企業が、海外移転した海外工場を米国に戻す、メキシコ生産を諦めるなどの対応を自主的に取り始めた。電動工具大手ブラック・アンド・デッカーのジェームズ・ロリー最高経営責任者(CEO)は、「中国やメキシコとの貿易が不確実な今、工場を米国に戻すことがビジネス上の賢明な判断だ」と述べ、恭順の意を表明。

さらに、メキシコで自動車向け機能性樹脂の工場新設を検討中の旭化成の小堀秀毅社長も、「場合によっては米国内の拠点拡大がいいかもしれない」と語り、自動車向けモーターをメキシコで生産する日本電産の永守重信会長兼社長も、「メキシコからの輸出がだめなら、米国工場に生産移管の可能性もある。トランプさんが一番好きな国から持っていけばいい」と柔軟な態度を示した。

一連の動きを評し、米リベラル系メディア『アトランティック』は、「トランプ氏が以前ボス役をやっていたリアリティ番組そのものだ」と揶揄するが、水面下で進行する重大な米資本主義の歴史的変動を見逃している。それは、「国家が企業や投資家の利潤追求のプロセスに介入し、ルールを恣意的にねじ曲げる」という、資本主義総本山の従来のドグマが根底から否定される「宗教改革」だ。

米国内の雇用を守れと叫ぶ「国民情緒」という超法規が次期大統領の政策の根幹となっており、それはおよそ資本主義と呼べる代物ではない。しかし、そうした逆説的手法でトランプ氏は「資本主義という宗教」を守ろうとしているのだ。

(その2に続く。全4回。毎日18時配信予定)

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