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  • Willy

「学者・博士」になりたい小学生に伝えたいこと

第一生命が主に小学1〜6年生を対象にして毎年行っている「大人になったらなりたいもの」の調査において、「学者・博士」が男の子の間で2位になったそうだ。第一生命はレポートの中で「大隅氏がノーベル賞を受賞したころから人気が再燃」と解説している。子供の「未知のことを発見する」、「社会を変える」、「それらによって名を残す」という知的欲求は素晴らしいものであり、そういう心は大切に育てたいものだ。

一方で、近年高学歴ワーキングプアが問題になるなど博士の就職難が日本社会に影を落としている。大きな夢と厳しい現実の狭間で、博士をとり学者を目指す子供やその親はどのようにキャリアを考えていけば良いのだろうか。

日本の一番大きな問題は、「学者・博士」になりたいという子供や若者たちが、いつしか「未知のことを発見する」「それによって社会を変える」という本来の意味を離れて、「大学の中で閉じこもって好きなことだけやる」という狭い意味の「学者・博士」を目指しているというところにあると思う。

確かに戦後、日本ではたくさんの人が大学や国立の研究所に雇われて研究者となり、その一部は世界的に活躍してノーベル賞を取ったりした。しかし、多くの研究者がそうしたキャリアを築けたのは日本が右肩上がりで成長していた時代の産物でもある。

近年、多くの分野で大学教員などのアカデミックポストの競争は熾烈を極めている。アカデミックを目指す40代半ばくらいまでの多くの人達は、年配や引退した研究者を見て「昔は良かったのに」とか「自分たちはなんと不運なのか」と思ったことが一度や二度ではないのではないか。

しかし恵まれた時代に大学教員になった人は、その時代の流れに乗ってキャリアに成功したのである。もし彼らが50年後に生まれていたら、大学教員を目指したのかすら定かではない。逆にいまアカデミックを目指している人は、確かに研究能力が高いかも知れないけれども、50年も前に流行った職業にいまだにとりつかれているという意味で社会の流れを読めていないのである。

これからの社会で、真の意味での学者・研究者がどんな職業に就くのかは全く明らかではない。米国などの大手企業の研究者たちが起こすイノベーションの大きさは、長期的に見ても大学の研究者のそれよりもずっと大きなものになる可能性がある。あるいは、同じアカデミックでも資金に恵まれた資源国が多くの研究者を雇うことになったり、教育需要の拡大する人口の多い発展途上国の大学でキャリアを積むのが流行るかも知れない。あるいは、大きな戦争が起こり軍の研究所がイノベーションに大きな役割を担うことになる可能性もある。

別に大学研究者の役割が終ったと言っているのではない。そういうキャリアも依然としてあるけれども、日本はそれを目指す人だけが多過ぎるのである。

こういうことはここ20年くらいずっと言われているが、遅々として状況は改善されていない。若手研究者は企業に行きたくないと言い、企業は博士は役に立たないと言う。それは、人が若い頃に考えていた夢にどうしても捕らわれるからだろう。私自身、24歳の時には大学を去って一般企業に就職したのに、結局は大学に戻ってきてしまったのだからそれは痛いほどわかる。数学科で優秀だった同期の中には、そういうことに苦しむのが嫌だからという理由で敢えて学部を出てすぐに就職した人もいたくらいだ。博士を終え30歳くらいになってそういう事を言われて転身するのはものすごく大変だろうと思う。

だから、もっと若い人に私は言いたい。60年前の人がノーベル賞を取ったのを見てそれを目指すのは、電話交換手だった大好きなおばあちゃんを見て電話交換手を目指すようなものだと。これからどんな人がイノベーションを起こして社会を変えるのか、自分の頭で考え、勇気を持って進むことが大事であると。

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