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飲酒時の犯罪には処罰されないケースも? 「心神喪失」と「心神耗弱」

 酒に酔った男に女性が殺害された事件で、飲酒の影響によって被告は「心神耗弱状態」にあったと認定され、求刑25年に対して懲役14年の判決が言い渡される事件がありました。飲酒時の犯罪はどのような場合に軽くなり、どのような場合に認められないのでしょうか。裁判官として8年、弁護士として14年務める田沢剛弁護士に聞きました。

処罰されない場合と刑が軽くなる場合

 まず「責任能力」について考えてみましょう。ものごとの是非や善悪を判断し、それにしたがって行動する力を「責任能力」といいます。刑法では、これを持たない「責任無能力者」の行為は犯罪が成立しないという考え方をします。

 刑法では、精神病や薬物中毒などによる精神の障害によって責任能力がまったくない人を「心神喪失者」、責任能力が著しく減退している人を「心神耗弱者」としています。心神喪失者の場合は処罰されず(刑法39条1項)、心神耗弱者の場合は有罪でも刑が軽くなる(減軽)とされています(同39条2項)。

「複雑酩酊」と「病的酩酊」

 飲酒による行為が焦点になる事件では、責任能力の有無は、酩酊(=酒に酔う)の程度がポイントになると、田沢弁護士は説明します。

 一般的な酩酊である「単純酩酊(普通酩酊とも)」の状態であれば、完全責任能力があるとされます。それに対して「異常酩酊」の状態には、激しく興奮して記憶が断片的になる「複雑酩酊」と、意識障害があり幻覚妄想などによって理解不能な言動が出てくる「病的酩酊」の二つの状態があり、複雑酩酊であれば心神耗弱(限定責任能力)、病的酩酊では心神喪失(責任無能力)と認定される可能性が高くなるといいます。

 ただし、心神喪失者や心神耗弱者であっても、お酒を飲む段階で責任能力があるとされれば、刑事責任が問われる可能性もあります。

行為と責任の同時存在の原則

 これまで、犯罪の実行段階で責任能力がなければ、これに対する非難を加えることができないとされていました。これを「行為と責任の同時存在の原則」と言います。「非難を加える」とは、要するに「責任を問える」ということです。

 しかし、たとえば酒を飲むと暴れて何をするか分からない、という病的因子を持っている人物が、そのような状態を利用して他人の殺害を計画して実行した場合、「行為」と「責任」の同時存在の原則を貫くと、殺害の実行段階で責任能力がないので処罰できないという理不尽な結果になりかねません。

 そこで、原因設定行為(この場合は飲酒行為)の段階で責任能力があれば、これに基づく結果に対しても責任を問えるという考え方が出てきました。これを「原因において自由な行為の理論」といいます。

 酒酔いなど悪質な自動車運転で死傷事故を起こした際に刑罰を重くする「危険運転処罰法」(2013年成立)ではこの考え方が採用されたといわれています。

(取材・文:具志堅浩二)

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