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「過剰」はムダだが役に立つ?

長時間労働や人手不足の影響で、日本の宅配便の便利なシステムや、コンビニの24時間営業について、「過剰サービス」ではないかという意見が出始めている。多少不便でも「翌日配達や即日配達は必要ない」とか「深夜営業は0時で終了するべき」とか「お正月は百貨店も営業しなくていい」という意見だ。こうした意見には非常に説得力がある。

ネット上では先月下旬、流通大手「佐川急便」をめぐって、「予定日の2日後、3日後になっても届かない」とか、「年末の荷物量増加で遅配多発」といった投稿が相次ぎました。営業所に電話で問い合わせても誰も出ないため、しかたなく出向いたという人からは「自転車で一時間かけて行くと、お客様の怒号の嵐、裏では泣いている女の子の声、地獄絵図でした」といった投稿もありました。(略)宅配ピザの「ドミノ・ピザ」でも、ある騒動が起きました。この会社では、持ち帰りでピザを2枚買うと、安い方の1枚を無料にするというサービスを打ち出していますが、これを目当てに大勢の客が殺到したのです。(略)行き過ぎたサービスは働く人にしわ寄せがいき、結果的に人手不足を助長しかねないため、一部の業界では見直しの動きも出ています。

出典:News Up そのサービス 過剰ではありませんか?(NHK NEWS WEB)

日本人の「サービス過剰」は今に始まったことではない。東京五輪に向けて「おもてなし」が期待されることもある。本当にそのサービスは必要なのか、価格に見合っているのかなど真剣に考えなくてはならない。

個々の商品・サービスに関して「過剰」かどうかについての意見は保留するが、「別に不便でもいいんじゃない?」という考えがあまりに広く蔓延してくると、どうしても気になることがある。それは、グローバルの視点で考えると、そもそも「日本語でサービスを受ける」ということが「過剰サービス」であるという考え方もある点だ。グローバル企業の本質は均質化、画一化によるスケールメリットである。利益面を考えれば、本音では1億人程度の日本市場における「日本語サービス」には一番に切り込みたいのではないだろうか。

例えばサポートセンターである。日本人のオペレーターのコストは世界でも有数に高いと言われている。「自分は英語ができるから別に英語でも構わない」という人が仮に増えて多数となるならば、米国企業のようにインド等の安価なサポートセンターに業務を丸ごとアウトソースすることができる。日本と比べると大幅に安いコストで済むかもしれない。日本国内での人手不足による問題もなくなる。「簡単な受付業務のやりとりならば、カタコトの日本語でもよい」という人が仮に増えれば、企業は大連やフィリピンなどに在住の日本語ができる地元のオペレーターにアウトソースすることありうるだろう。費用が浮く分、商品本体の価格は押さえて日本市場で提供できる。

それならばサポートだけでなく「説明書」も、そして、いっそ「ソフトウェア」も・・・と極端な商品仕様上の「サービスカット」にもなりかねない。もっとも、今のところ日本語でのサービスを全て英語に切り替えたりすると、かえってトラブルやクレームは増えるだろう。だがすでに、並行輸入品などをWebで購入する顧客にとっては、現地語の説明書とサポートは普通のことである。

結局のところ「過剰サービス」かどうかの判断は、顧客の中のどの購買層が、商品やサービス価格との比較において「どの程度のサービスを望むか」「どこまでならば我慢できるか」という期待と許容とのバランスの問題である。日本の消費者が同質性、均一性を保っていた時代には概ね多数の消費者の意見に合わせていれば、企業にとっての大きな判断ミスは起きなかった。高度成長期はなど中間層の平均レベルに合わせていれば良かった。

だが、日本市場においても多様性が増すに連れ、サービスの「質(多様性)」は常に求められいく。例えば、電車内や駅構内のアナウンスや案内も以前は日本語だけだったが、外国人の観光客や居住者が増えるに連れ、英語、中国語、韓国語と続くようになる。いずれはスペイン語、ロシア語、広東語、フランス語、ポルトガル語・・・と連なるかもしれない。もちろん限度はあるだろうが、こうした需要は増え、ある種の「過剰サービス」の状態となる。

最近の大規模マンションでは、日中は女性の配達員の人が荷物を運んできてくれるケースが多い。これは良い悪いではなく、実際に日中の大規模マンションで、女性の主婦の方が荷物を玄関口で受け取る割合は多い。受け取る側の立場だと、配達する人は女性である方が確かに安心感があるのだろう。これも過剰といえば過剰なサービスだが、確かにこうした需要があるのは納得がいく。そのうち地域によってはインド人やブラジル人の配達員がその地域を担当するなどといったサービスが生まれるのかもしれない。一見過剰とも思われるサービスも需要があるので企業は行っている。

結局、日本ではこの「過剰」によって雇用が生み出されていたりもする。仮にコンビニやファーストフードが全国的に深夜営業を止めた場合、その分の雇用が失われる可能性は否定できない。これにも注意を払っておく必要がある。特に地方都市などでは、夜の10時過ぎくらいに大通りに出ても、居酒屋とコンビニエンスストアとガソリンスタンドくらいしか、街に営業(雇用)の拠点のないことがよくある。もちろん深夜営業に代わるような日中の雇用や新しい雇用が生まれればそれにこしたことはないのだが。

「過剰」は一見ムダだが一方で多くの人にとっては役にも立っている。また、雇用も生み出している。そうした面にも注意を向けたい。

※Yahoo!ニュースからの転載

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