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新世代テクノロジーが変える米企業幹部

 シリコンバレーで台頭しつつある新世代のモバイルやクラウド、データ技術を取り入れることで成長けん引を目指す企業が増えるなか、多くが昔ながらの問題に直面している。最新技術の導入が企業経営の形を変えつつあるのだ。非テクノロジー企業がテクノロジーやネット系のベンチャー企業の様相を強めている。

 データに基づく新たな手法により、縦割りだった事業部門の間にある壁は崩れ、経営構造は平らになり、生産プロセスは簡素化しつつある。多くの企業が幹部の役割や責任を考え直すきっかけになっているとIT企業の幹部や業界アナリスト、経営コンサルタントは話す。

 信用情報大手エクイファックスの世界情報責任者を務めるデーブ・ウェブ氏は「より従来型のビジネスモデルから、テクノロジーやIT周辺に構築されたビジネスモデルに移行する企業は、この進化を支えられる経営慣行を取り入れなくてはならない」と述べる。保険大手リバティ・ミューチュアル・インシュアランスや日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった大企業はそうした変化を遂げつつある。

変わる組織の形

 エクイファックスでは中核の信用調査報告サービスから新たな分野に事業を拡大するなか、テクノロジーがさまざまな面で経営の形を変えている。製品や事業部門の幹部の役職は、かつて部の最高情報責任者だった者が占めつつある。そうした幹部は、顧客データを利用した、より短期で頻繁な開発サイクルで知られる「アジャイル」管理技術をより広範に活用している。

 アトランタを拠点とするエクイファックスは2015年にアラバマ州オーバーンに技術開発施設を開設した。従業員当たりのマネジャー数は他の拠点の半分ほどだ。

 同施設では、エクイファックスの世界の事業向けにオートメーションサービスとプラットフォームサービスを開発している。マネジャー3人と従業員33人は、ビジネス担当とテクノロジー担当からなる小さな職能横断型チームに分かれている。マネジャーは、世界のプラットフォームエンジニアリングのバイスプレジデント、オートメーションの統括役、クラウドおよびシステムの統括役からなる。

 ウェブ氏によると、これらのマネジャーはトップダウン型の指示を出す代わりに、自律型のチームがデジタルのデータソース、コラボレーションツール、シェアリングツール、強化されたフィードバックループを活用し、より迅速に結果を出す手助けをしている。

 リバティ・ミューチュアルでは、個人と共有のクラウドで現在行われているオペレーションの約80%をオンラインのコラボレーションツールとシェアリングツールが占めている。ジェームズ・マクグレノン最高情報責任者(CIO)は、それらのツールによってビジネス、販売、IT部門がかつてないほどまとまったと話す。

 そのため、これらの部門を統括するマネジャーの役割は「物事の進め方を指示すること」から離れ、複数の職能を備えた協力的なチームが自分たちだけで「仕事を終わらせる」ように導くコーチのような役割に移りつつあるという。

 承認や書類作業の段階を省くことによって従業員は、仕事のペースを上げたり、より頻繁に新たな機能を取り入れたり、ユーザーの迅速なフィードバックに基づいて途中で軌道修正したり、失敗を早期に見つけてやり直したりする余地を得る。「それは、製品やソフトウエアの構築、全ての従業員の役割や責任に関する私たちの考え方を全面的に変える」とマクグレノン氏は話す。

 フォレスター・リサーチのバイスプレジデント兼アナリスト、テッド・シェードラー氏は「デジタルが会社の一定の割合に達したら、再編が必要だ」と述べた。

世界全体で2兆ドル超

 マッキンゼー・アンド・カンパニーでビジネステクノロジー慣行を担当するディレクター、ポール・ウィルモット氏は、これらの新たなモデルに共通するゴールが動きの加速であり、「中間管理の階層をいくつか取り除くこととデジタルアプリが相まって、それが可能になる」と話す。

 調査会社インターナショナル・データ・コープ(IDC)によると、デジタルテクノロジー支出は年平均16%を超えるペースで拡大し、2019年には米企業だけで約7320億ドルに達する見通しだ。世界全体では2兆1000億ドルに上ると予想されている。

 ガートナーのバイスプレジデント、マーク・ラスキーノ氏は、意思決定でウェブ発のデータに頼る割合が高い新たなデジタルベンチャーについて、可能な場合は常にタスクの自動化技術を使う傾向にあると話す。

 ボストン大学のマーシャル ・ バン・アルスタイン教授らは昨年ハーバード・ビジネス・レビュー誌で、フェイスブック、グーグルの親会社アルファベットといった消費者向けインターネットの大手が巨大な規模を特徴とするのと同様に、非テクノロジー企業がデジタルプラットフォームの規模拡大にますます力を入れていると主張した。

幹部にもインスタントメッセージ

 デブ・ヘンレッタ氏はP&Gでアジア地区を統括して数年たった頃、テクノロジーに詳しい若いデータアナリストを月次戦略会議に出席させると主張して、幹部チームの反感を買った。

 ヘンレッタ氏は「彼の作ったアルゴリズムは、事業の問題を示唆し始めていた初期の傾向を調べるのに役だった」と述べ、最近導入されたデジタルツールを通して同社に入ってくるセルスルー(販売)、顧客情報、市場シェア、その他データを総合したリポートに言及した。

 ヘンレッタ氏は、経営幹部の会議に下位のマネジャーを招き、会社のヒエラルキーを覆した自身のやり方に、部下が納得したわけではないと話す。同氏は12年に米国を拠点とするP&Gの電子商取引部門を引き継ぎ、15年半ばにP&Gを退社。現在は経営コンサルティング会社SSA & Co.のシニアアドバイザーを務めている。

 アクセンチュアのCIOアンドリュー・ウィルソン氏は、自身が働き始めた若い頃には、「経営幹部にインスタントメッセージを送る」というのはばかげた考えだったと話す。それが「Microsoft Teams(マイクロソフト・チーム)」「Slack(スラック)」「Workplace by Facebook(ワークプレイス・バイ・フェイスブック)」といった新たなコラボレーションツールの登場で、マネジャーは「接続と接触を保つ」という新たな義務を課されているという。

By ANGUS LOTEN AND JOHN SIMONS

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