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大前研一「教育を変えると、世の中が5年で変わる。21世紀の義務教育と大学の役割」

【第11回(最終回)】日本の高度成長を支えた、「正解」をいかに早く覚え、再現するかという従来の教育は、「答えのない時代」を迎えた今、うまくいかなくなった。日本の国際競争力を高める人材を育成する上で、障害となっているものは何か。21世紀の教育が目指すべき方向は何か。本連載では、特色ある教育制度を取り入れている先進国の動向から、日本の教育改革の方向性を導き出す。

日本も北欧型の教育に舵を切る必要がある

これまで述べてきたことを整理します。図-32を見ていただきたい。

 (2667)

国、地方、学校、親(家庭)の四つの単位で、21世紀型の教育に大きく舵を切る必要があります。日本、シンガポール、イギリス、フィンランド、ドイツ、スイス、米国とありますが、パーフェクトな制度を持つ国はありません。

かつて日本の教育は、工業化社会をつくるという目標を達成することに成功しました。では、これから先どうすべきか。今後は確実に少子化、人口減少が進みますから、北欧型に舵を切ることが必要です。すべては無理でも、少なくとも教育の一部は、文科省の全国一律の指導要領から自由にすることが望ましいでしょう。

社会性のある人間をつくる

21世紀の教育が目指すべき方向ははっきりしています。「社会性のある人間をつくる」「食べていく手段を身につけさせる」の2点です。前者は義務教育、後者は大学の役割です。そのために、義務教育を高校まで延長し、優れた人材にはメンター、ファシリテーターをつける。大学は職業訓練学校だと割り切り、場合によっては自治体や企業と組んで、デュアルシステムを導入することが有効ではないかと思います(図-33)。

 (2671)

教育が変われば世の中が変わる

まずは日本全体で、国の人材力・国力の低下に対する危機意識を持つことが必要です。人材は、国力を高める上で一番大きな武器になりますから、日本も生き残りをかけて、人材育成・教育に正面から取り組まなければなりません。

教育システムを変えると、世の中は5年で変わります。親が変わり、企業も変わります。「20年かかる」と言う人もいますが、私が見た韓国、フィンランド、デンマークは5年で大きく変わっています。小手先の改革ではなく、本質的な考え方を変えることで、新たな価値観が社会全体に広がっていくはずです(図-34)。

 (2674)

学校を自由に選択できる「教育バウチャー制」

最後に、日本の教育を改革する上で、政府、個人、企業がどうすべきか、それぞれまとめておきます。

まず政府は、教育の目的をはっきりさせる。「世界のどこでも通用する人材」を育てることを目指し、義務教育は社会人の育成、大学は世界のどこでも稼ぐことができる能力の習得を最終目標とします。

「教育バウチャー制」を導入し、親に教育バウチャー(使用目的を教育に限定した引換券)を交付して、親が自由に学校を選択できるようにします。現行の制度のように、文科省が学校に定額の交付金を出すのではなく、学校を競争にさらすのです。中学・高校の教育費に、日本は1人につきおよそ70万円かけていますから、70万円分のクーポンを最初から親に与えます。学校は集まったクーポンの額に応じた補助金を受け取る仕組みにすれば、選ばれなければ学校経営が成り立たないため、一気に改革が進むと思います。

親が教育の主導権を握る

その上で個人としては、やはり親が教育の主導権を握ることが大切です。学習指導要領のエージェントと化した先生、学校に任せきりで、子供が家に帰ってきたら「宿題やりなさい」などと言っているようでは駄目です。学校の先生の言いなりになるのではなく、子供に責任感、社会性、思いやりなどを教えながら、適性を見きわめてテーラーメイドの教育をすることが、子供の能力を引き出すことにつながります。

採用するなら30±2歳まで

企業も新卒一括採用をやめる。1人ずつ個別採用で、30±2歳くらい、28~32歳の人を採るのです。給料も個別に決めます。大学を出たばかりで実務遂行能力のない新卒を採ると、社会に順化させるために6年間は投資が必要になります。私の経験則から言って、だいたい28歳以上で、社会人としての基本が身についた人材を採用するのがいいでしょう。逆に、32歳を過ぎた人材は前の会社で10年働いているので、良くも悪くも前の会社の色に染まってしまっている。ということで、30±2歳というのが、私の見つけ出したゴールデンルールです。

文科省は変わりませんから、まずは皆さんの会社で危機感を持って採用方式を変える、家庭で子供の教育を変える。ここから始めるしかないだろうというのが私の結論です。 (大前研一向研会定例勉強会『世界の教育トレンド(2013.6)』より編集・収録)

(本連載は今回で終了です)

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