記事

ゲイツが「トランプはJFKのようになる」と判断した理由 ビル・ゲイツとトランプのイノベーション論 - 山本隆三

1/2

 日本ではトランプ次期大統領が孫正義ソフトバンクグループ社長と会ったことが大きく報じられているが、米国ではトランプがマイクロソフト創業者のビル・ゲイツと電話で8分間話したことを多くのメディアが報道した。電話でトランプと意気投合したゲイツは、電話の2週間後の12月中旬にトランプタワーを訪問した。ゲイツは大統領選挙中トランプを評価しないと示唆していたが、電話での会談後出演したテレビ番組では「宇宙開発を進めたジョン・F・ケネディ元大統領と同様に、トランプの米国はイノベーションを通し主導権を取る可能性がある」と持ち上げた。

 ゲイツは地球温暖化問題を懸念しており、国連の会議に出席し解決のための支援を呼びかけるほど問題解決に力を入れている(『アマゾン、アリババ、ソフトバンクも ビル・ゲイツが募る革新的エネルギー同盟』)。彼のいま一番の関心事だが、温暖化懐疑論の立場に立つトランプとは大きく立場が異なる。

 トランプは11月下旬のニューヨークタイムズ紙のインタビューでは「温暖化が人為的な理由により引き起こされることも少しはある」と認め、選挙期間中に離脱すると主張していたパリ協定に関しては「開かれた心で考えたい」と答え柔軟性を示したが、その後の閣僚人事では温暖化懐疑論者の閣僚への指名が続いており、トランプの基本的な立場は変わっていないようだ。トランプの何が温暖化問題を懸念するゲイツの評価を変えさせたのだろうか。

トランプを評価するゲイツ

 11月の大統領選後トランプと電話で話をしたビル・ゲイツは、その後いくつかのマスコミのインタビューを受けたが、その中でゲイツはジョン・F・ケネディに触れ、「エネルギー分野であれ、教育、感染症防止であれ、トランプ政権は物事を組織立って進め、法的な障害を取り除き、イノベーションを通し米国のリーダシップを発揮するだろうという前向きの見方ができる」とトランプとイノベーションについて会話した結果を述べている。

 ゲイツはさらに「エネルギーと気候変動問題は米国がリーダシップを発揮するチャンス」とトランプに話し「多くのイノベーションの機会があり、適切に研究を進めれば大きな収益が期待できる」との話をしたと述べている。ゲイツは「エネルギー分野の研究・開発において米国が先頭を切ることが重要だ。この分野は政府予算のなかで大きな金額ではないが、シェールガスと同様に、(低コストの低炭素エネルギーが)米国経済を助けることになるとトランプに働きかける」とも述べている。

 米国企業の海外進出に反対し、保護主義を主張しているトランプはイノベーションの重要性をどのように認識しているのだろうか。大統領選時のトランプの主張から考えてみたい。

トランプ大統領を生んだラストベルト地帯

 トランプが大統領戦に勝利した大きな要因は、接戦州と呼ばれる共和党、民主党の票が常に拮抗するペンシルべニア、オハイオ両州を制したことだった。トランプが石炭復活を打ち出し、クリントンが石炭縮小を主張したことが、アパラチア炭田北部に位置する両州の票の行方を左右したことは『トランプ大統領で得をする日本企業は?』で述べた通りだ。

 接戦州となったペンシルべニア、オハイオ州に加え、2008年、2012年の大統領選時オバマが勝ったウィスコンシン、ミシガン両州においてもトランプが勝利したことも、トランプ大統領選出を確たるものにした。日本のメディアでも度々報道されたラストベルト(錆び付いた地帯)と呼ばれる地域だ。

 製造業が衰退した地帯と呼ばれるものの、この両州では今でも製造業で働く人が多い。州の雇用者のうち製造業が占める比率をみると、表の通り、ウィスコンシン州は全米2位、ミシガン州は3位だ。


 しかし、自動車産業を中心に製造業は衰退し、製造業を離れた人は、州外に去るかあるいは医療・福祉を中心とした産業に転職した。全米の製造業で働く人は2000年には1700万人だったが、減少を続け、最近歯止めがかかったものの、今は1200万人だ。図-1の通り、この間米国の全雇用はリーマンショックによる落ち込みを除けば、順調に伸びている。


 製造業で職を失っても、米国の失業率は高くなく職はある。ラストベルト地帯の失業率も高くない。しかし、大きな問題がある。製造業ほど稼げる産業が州内にないことだ。図-2に米国の産業別賃金を示した。製造業の賃金は平均より高いが、医療福祉を含む教育・健康産業は平均を下回っている。製造業が衰退することの問題は高賃金の職場が失われることなのだ。米国を再度偉大な国にと、製造業復活を謳ったトランプが両州で支持を集めたのは製造業の高賃金を求める有権者が多くいたためだ。


あわせて読みたい

「ドナルド・トランプ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    籠池氏の印象操作する邪悪な自民

    小林よしのり

  2. 2

    森友問題は国家システムの私物化

    小林よしのり

  3. 3

    証人喚問が"犯罪捜査"という暴論

    郷原信郎

  4. 4

    森友学園騒動の本当の問題は何か

    ニコニコニュース

  5. 5

    森友問題で考えた"FAX"の破壊力

    常見陽平

  6. 6

    官僚の世界における"忖度"の実態

    郷原信郎

  7. 7

    昭恵氏メール報道 TVで印象操作?

    小林よしのり

  8. 8

    人気店が"一見さんお断り"の理由

    内藤忍

  9. 9

    誰が書いた? 昭恵氏FB投稿に懸念

    郷原信郎

  10. 10

    みんなのクレジット 無残な実態

    吊られた男

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。