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米連邦最高裁判事任命問題と株式市場の行方

「裁判所と株式市場が、なんでカンケーあるの?」

みなさんはそう思うかもしれませんが、連邦最高裁判事の任命問題が、今後のアメリカの株式市場の動きに影響してくると思います。

説明します。

米国連邦最高裁判所は、司法、立法、行政の「三権分立」の原則の一翼を担う、大事な機関です。

司法とは「法律を実際に解釈し、あてはめることで、係争を解決する」こと、つまり最高裁判所を指します。

立法とは「法律を作るところ」、つまり議会を指します。

行政とは「政府を運営するところ」、つまり大統領府(ホワイトハウス)を指します。

このように三つの機能を分離させることで、権力の濫用を防ぐわけです。

最高裁は大統領の権限を制限し、軍最高司令官(Commander in Chief)としての大統領の決断を差し止めることも出来ます。

議会に対しては、可決した法案を「違憲だ!」として無効にする力も持っています。

つまりドナルド・トランプや、現在共和党が過半数を占めている下院ならびに上院の動きに「STOP!」をかけることができるのは、最高裁だけなのです。

最高裁はアメリカ合衆国憲法の精神を解釈し、判例を通じて、憲法の「読み方」を明確化し、論争に最終的な決着をつける責務を帯びています。

アメリカ合衆国憲法は、たいへん短い文書です。全部で7.200文字しかありません。

これに対して、例えばEU憲法(リスボン条約)は7万6千文字もあります。

合衆国憲法はとても大掴みな事しか書いてないので、もう少しそれに肉付けするカタチで「フェデラリスト・ペーパーズ」と呼ばれる85の論文集が、「準憲法」の役目を果たしています。

「フェデラリスト・ペーパーズ」の大部分はアレクサンダー・ハミルトンとジェームズ・マディソンによって書かれています。そしてそのかなりの部分は、政府の横暴から個人の権利や人間性を守るための抑制ならびに均衡をどう実現するか? という命題に費やされています。

最高裁は、1)合衆国憲法、2)フェデラリスト・ペーパーズ、3)過去の判例、などを援用しながら「国民がアメリカ政府に何をやって欲しくて、なにをやって欲しくないか?」をハッキリさせるという使命を帯びているわけです。

ここまで読むと、最高裁というのは、とてもパワフルな機関だということがお分かり頂けると思います。

その最高裁は9名の判事から構成されています。最高裁判事には任期がありません。つまり一度任命されたら、一生務めるわけです。奇数になっているのは、五分五分のデッドロックになることを避けるためです。

しかし去年の2月にスカリア判事が心臓発作で死去し、現在、最高裁判事は8名となっています。

そのうち共和党大統領が任命した判事は4名、民主党大統領が任命した判事は4名です。つまりいまはデッドロックになってしまっていて、何も決まらない状態なのです。

オバマ大統領はスカリア判事が死去した後、すぐにガーランド氏を任命しようとしましたが、共和党に支配されている上院はこの人事に抵抗し、公聴会すらも開きませんでした。

つまり最高裁判事の欠員は、もうかれこれ1年近くも続いているのです。

連邦裁判所で進行する裁判はテレビに放映されることはありません。なぜならば、軽薄な世論に判決が左右されることを防ぐためです。

また同様の理由から、いまどのような審議が進行中なのか? ということもリアルタイムでは公開されません。

国民は、結論だけを知らされるわけです。

このため、いまペンディング(係争中)になっている案件は何で、幾つ進行しいているのか? ということすらわからないのですが、法曹界の識者によれば、かなりの案件が最高裁のところでひっかかっているそうです。

トランプとしては、自分が大統領として「やりたい放題、暴れる」ためには、まず最高裁判事に自分の息のかかった人間を送り込み、守りを固める必要があります。

大統領の任命した最高裁判事は上院が承認する必要があります。これは早くても3月半ばくらいまでかかるでしょう。もし民主党がフィリバスター(filibuster=議事妨害)すれば、承認は4月頃までかかる可能性もあります。

1828年以来、対抗政党から当選した新しい大統領が就任してすぐに最高裁判事を任命したケースは16回あり、そのうち14回で上院で過半数を占めている政党(=現在は共和党)の最高裁判事候補が承認を獲得しました。しかしその14回のうち、大統領が就任して直後に最高裁判事を任命した例は1829年と1853年の2回しかないのです。

後のケースでは大統領は慎重に機が熟すのを待ち、タイミングを見計らって候補を発表しています。

もしトランプが最高裁判事の任命を後回しにし、議会が税制改革に集中できる環境を作れば、市場はこれを好感すると思います。

しかし最高裁判事任命問題をトランプが強行した場合、承認に思いの外、手間取って、今年中に税制改革法案が成立しなくなるリスクもあります。

アメリカの株式市場が買われてきた最大の理由は「トランプ減税」です。だから今年中に税制改革法案が成立しないのなら、株を買う理由は無くなります。

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