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【大予測:メディア(新聞)】伝統メディアが反転攻勢に

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安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)

新聞の凋落が止まらない。新聞を購読している大学生の割合は約22%という数字もあるが(「若者の新聞離れ」は本当? 新聞を購読している一人暮らし大学生は約◯割! マイナビ調べ 2016年6月19日)、この数字は就活生も入っていると思われ、実際にキャンパスで学部生(1~2年生)と触れ合っていると実感としてもっと少ないような気がする。そもそも、通勤電車の中で新聞を広げている人をほとんど見かけなくなってしまった。電子版を読んでいるご仁もあろうが、スマホ画面を覗くと、ゲームをやっているサラリーマンも結構見かけるのでその数がそう多いとも思えない。

実際の発行部数を見れば一目瞭然だ。ピークは1997年の5,377万部。その後一貫して減り続け、2016年は4,327万部で、およそ20年で2割近く減っている。(「新聞の発行部数と世帯数の推移」新聞協会調べ)

若い世代が新聞を購読しない理由として、先のマイナビの調査によると、「高いから」といった金銭的な理由はともかくとして、新聞にとってより深刻なのは、「ネットやTVのニュースで事足りる」とか、「スマホで十分」などといった理由だろう。

冷静に考えれば、Yahoo!ニュース、Googleニュース、SmartNews, Gunosy, NewsPicks, Antenna、LINE NEWSなど、私たちがスマホのアプリメインで日常的に読んでいる記事はほとんどが伝統(既存)メディア、つまり新聞、通信社、テレビの記事なので、新聞を購読していなくても新聞記事を読んでいる事に何の変わりもないのだ。ただ、新聞にとって毎月購読料を読者から頂く、というこれまでのビジネスモデルが崩れつつある、ということだ。

こうした状況下、新聞各社はただ手をこまねいてきたわけではない。電子版で独り勝ちなのは日本経済新聞。日本を代表する経済紙としてのブランドから既に320万人超(内、有料会員約48万人)の電子版登録者を確保し(「日経電子版会員数・属性」2016年2月1日現在 日本経済新聞社調べ、並びにプレスリリース 2016年9月28日 による)、一人気を吐いている。朝日新聞はデジタル会員登録者数230万人超(内、有料会員30万人に迫る)で、日経を追っている。(「【2016年年頭あいさつ】朝日新聞社・渡辺雅隆社長 文化通信より」。ついで毎日新聞(デジタル無料会員登録者数約64万人・有料会員数非公開 DIGIDAY「オーディエンスファーストで読者の居場所にいち早く」:毎日新聞デジタル担当取締役 小川 一氏 2016年3月10日)、産経新聞(産経新聞iPhone版とAndroid版アプリ総ダウンロード数650万超、(2016年4月現在 産経デジタル調べ)と続く。読売新聞はデータを公表していない。

こうした数字を見ると、新聞のデジタル戦略がうまくいっているとは到底思えない。その理由の一つは、新聞や通信社など伝統メディアがYahoo!ニュースなどの巨大ニュースプラットフォームに記事を提供している事だろう。月間152億PV(「Yahoo!ニュース月間150億PVの内訳を解説 スマホはPCの約2倍に」news HACK by Yahoo!ニュース 2016年10月5日)を誇るお化けプラットフォームに自社コンテンツを配信しないという選択はなかっただろうが、先の大学生アンケートにあるように、新聞記事は無料で読めるもの、という認識が当たり前になってしまった。記事はお金を払って読むものである、という概念がそもそも存在しなくなったことは新聞のみならず、週刊誌や月刊誌などすべての活字媒体に打撃を与えた。

そこで、デジタルの世界においてお金の取れるコンテンツ作りが必要となってくるわけだが、日本の伝統メディアは出足が遅れた。2015年にデジタル購読者数100万人を達成し、デジタル版の売上(2014年4億ドル=約480億円)を、2020年までに8億ドル(約960億円)へと倍増させる目標を設定しているニューヨークタイムズと比較して、日本勢のそれは大分見劣りする。筆者は読者がお金を払ってでも読みたいコンテンツ制作力が重要だと考えている。では、各紙の取り組みを見てみよう。

まず、英ファイナンシャル・タイムズを2015年に8億4,400万ポンド(当時のレート換算で約1,600億円)で買収した日本経済新聞だが、そのシナジー効果が出ているかと言われると懐疑的だ。まずウェブ版を見てみよう。そもそもトップのタブに項目が多過ぎて、どれから見たらいいかわからない。ファイナンシャル・タイムズの記事を読もうと思っても、タブの2行目に「FT」とあるだけで、高い買い物をしたわりに扱いの小ささに疑問すら湧く。せっかく良質なコンテンツがあっても読者の目に触れなければ意味がない。

また、デジタルコンテンツとして有望なインフォグラフィックス(注1)だが、上部タブにはそのカテゴリーがなく、スクロールすると下の方に「ビジュアルデータ」というコーナーがある。その中にある、安倍首相がアメリカ・ハワイの真珠湾を訪問した時の特集「真珠湾訪問ライブ」などは、写真と動画を多用し、記事に簡単に飛べるようリンクが貼ってあるので便利だ。それ以外にも、「データで探る日本の「発明力」世界で稼げるか」、「フリマvsオークション ネット売買の両雄比較」、「日経アジア300指数 データが示す成長力」、「セブン新体制、統治の構図とコンビニ40年」など興味深い記事が一杯だ。活字だけでなく、写真と動画を組み合わせており、若い世代にも十分アピールするものとなっている。が、折角のコンテンツもほとんどの人に知られていないだろう。

また日経は、2013年11月から、アジア経済ニュース英語新媒体「Nikkei Asian Review」(日経アジアンレビュー:以下、NAR)を創刊した。アジア新興国のリアルタイム情報が得られるこのサービスに大いに注目しているが、これまた日経電子版の上部タブに「アジア」という項目があり、そこをタップすると一部コンテンツがNARからの転載、という形で掲載されているだけで、やはり元のサイトまでたどり着く人はまれだろう。NAR自体、独立したコンテンツ配信サイトであり定期購読料はデジタルプランで年間119.99USドルとなっているが、日経デジタルとの連動がよりスムーズになればその購読者も増えるものと思われる。折角、日経電子版には「My ニュース」という、読者が自分の読みたい記事のジャンルをカスタマイズできる機能があるのだから、NARの存在を知ってもらえば、日経電子版の読者をNAR定期購読へと導くことも不可能ではないだろう。

もう一つ私が注目している日経のデジタルコンテンツがある。それが、オンラインフォーラム「ソーシャルパネル by NIKKEI」だ。2016年4月にスタートし、これまでに「変調マクロ経済」と「ビジネス未来会議」の2グループが立ち上がっている。日経の編集委員と専門家がパネリストとしてFacebookグループ上で論戦を繰り広げるもので、読者はこのグループに参加すればコメントすることが出来る。さらに、読者は不定期で開催されるリアルトークイベントにも参加資格がある。(抽選、有料)特定のジャンルのニュースについて紙面には無い編集委員の深い洞察や意見が読め、その分野のプロがコメントを書き込む為、非常に専門性の高いディスカッションが行われる、全く新しい試みだ。日経というブランドだからこそ成し遂げることが出来る試みだ。

まだ実験段階なのか、立ち上がっているテーマも少ないが、増えてくればこちらも有料コンテンツとして有望だろう。今は、特定の編集委員が属人的に運営している感があるが、是非続けて育てていくべきコンテンツだろう。こうした魅力的なデジタルコンテンツをうまく連携させてパッケージ化して如何に読者に届けるか、そして課金するかが今後ますます重要になってくるだろう。

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