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【大予測:金融】米・中・EUで不確実性高まる

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神津多可思(リコー経済社会研究所所長)

「神津多可思の金融経済を読む」

2017年の十干十二支は丁酉(ひのととり)。この丁の字は、二つの流れがぶつかる様を表しているのだと言う。また、酉の字は、醗酵という言葉からも分かるように、何か新しいものが生まれてくる様を示すそうだ。要するに、すっと流れるようにはいかず、新しい展開が訪れる年になるということか。

2016年は、金融経済をみる者にとってサプライズの年であった。英国のEU(欧州連合)離脱を巡る国民投票然り、米国の大統領選挙然りである。さらに、その後の金融市場の反応もサプライズだった。英国経済は心配したほど弱くならなかったし、トランプ新大統領誕生も金融市場では直ちにポジティブに評価された。事前にできるだけ情報を集め、一番起こりそうなことを予想する訳だが、ここまで現実の展開が予想とずれてしまうと、2017年を展望しようにも展望のしようがない気もしてくる。

2017年は、世界経済のそこかしこにリスク要因がある。まず米国だが、そもそもトランプ政権が具体的にどういう政策の組み合わせをするか、実はまだよく分かっていない。国内の雇用確保を強調していることからすると、米国ドルの独歩高は許容しないように思えるが、他方で減税・インフラ投資を主張しているので、それからすると金利高であり、それはドル高をサポートする。

トランプ次期大統領は、FRB(連邦準備制度理事会)の低金利政策を批判してきた。しかし、すでに長期金利が上昇している下で、ここから短期金利をするすると上げれば、それがさらに長期金利に上昇圧力をかけることになり、結果的に国内景気にとってはマイナスとなるだろう。そうでなくとも、米国の景気拡大はもう8年目に入っており、いつ調整局面が来てもおかしくはない。現実にはどういう経済政策のバランスになるのだろうか。

欧州に目を転じると、英国のEU離脱交渉が3月から始まるのに加え、大陸側でも政治リスクが大きい。イタリアで親EU政権が事実上国民からサポートされず政権が交代したが、2017年はオランダ、フランス、ドイツでも重要な選挙が予定されている。全般的なムードとして、移民反対、反EUの政治勢力の躍進が囁かれている。EUの中核であるこれらの国々で、万が一、反EU政権が誕生したりすれば、欧州経済は大きく動揺することになる。

身近な中国でも、これまでのところ新常態へのソフトランディングが進んでいるように見えるが、対GDP比ではバブル時の日本を上回る負債が企業部門で積み上がっている。また、沿岸大都市部での住宅価格の上昇を続けている。これらは成長率の鈍化と不整合な現象だ。他方、人民元安が進んでおり、外貨準備が急速に減少しているのも気がかりだ。

幸い、日本経済には2017年中に顕現化しそうな内生的リスク要因は見当たらない。もっとも、高齢化、人口減少への対応という、もっと長い目でみた重要な課題があり、その解決の展望がないことが、じわじわと重しとなっている。

以上のような世界経済に数あるリスク要因については、2016年の反省に立てば、現在考えているようなメイン・シナリオ通りにはいかないと覚悟すべきなのであろう。20世紀前半に米国シカゴ大学の教授だった経済学者フランク・ナイトは、将来を予測するときに、先験的にも、統計的にも、まったく確率分布が想定できない事象を、リスクとは区別して不確実性と呼んだ。メイン・シナリオはどうしてもリスク分析的になるが、2017年の新しい展開は不確実性で満ちているのかもしれない。

そうした環境においては、メイン・シナリオは立てるにせよ、常在戦場の気持ちを忘れず、予想外の出来事が起きた場合には臨機応変の対応を風の如く疾くとるということが求められるのであろう。しかし想定外のことが起きたときに人間はパニックに陥る。私達は2011年の東日本大震災の時にもそれを経験した。言うは易く行うは難し。緊張の解けない丁酉の年になりそうだ。

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