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個人型確定拠出年金iDeCoをやらないほうがいい人

高橋成壽=文

「とりあえず加入しよう」で大丈夫か

平成29年1月から始まる個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の対象者拡大に伴いiDeCoで投資しよう! というニュースや記事を見ることが多くなりました。今回の加入対象者の拡大によって、6700万人の現役世代をほとんどカバーすることができることになります。

このiDeCoの投資資金が、投資信託の購入に回るとなれば、株式市場に大量の長期投資マネーが流入します。金融機関各社は、新規顧客の獲得と囲い込みのため、熾烈な顧客獲得競争を展開しています。このような状況にあって、日本全体がiDeCoに興味を持っているからこそ、この雰囲気に流されるのではなく、「自分はiDeCoに加入すべきなのかどうか」を、立ち止まって考えることが必要です。

高所得者ほどトクをする

ではまず、iDeCoへの加入について、一般的に言われるメリットについて考えてみましょう。

▼メリット
1.掛け金分が節税になる。(掛け金が全額所得控除される)
2.利益が出ても課税されない。(運用益がまるまる残る)
3.将来、年金として受け取るときにも節税できる。(税制優遇措置がある)

まず1の「掛け金分が節税になる」点ですが、得をしやすいのは高所得者です。反対にあまり得をしないのが低所得者です。「所得控除」とは、掛け金分、税金額が減るということではなく、課税対象所得が減るということです。掛け金の金額(控除額)に自分の所得税率を掛けたものが実際の節税額です。累進課税制度の適用されている所得税の仕組み上、高所得者が得をしやすい構造になっているのです。

2の「利益が出ても課税されない」という点ですが、投資対象のほとんどは投資信託です。投資信託に投資をして、利益が出るかどうかは神のみぞ知るところ。実際は投資の神様でさえ、将来の利益を確定させることはできません。まだ手にしてもいない利益について考えるより前に、損をしたらどうなるのか? という視点も持っておく必要があります。

3の「将来、年金として受け取るときに節税できる」点ですが、税制は常に変化します。将来時点での税制は現段階ではわからず、税制優遇措置が年金を受け取る際にも継続されているかどうかは定かではありません。ちなみに、60歳でiDeCoで運用された資金を受け取った場合、収入が0か少ない場合は、税制優遇のメリットを最大限享受できますが、60歳以降も高所得者であり続けた場合は、所得税率も高くなるため、実際の税制優遇のメリットは半減します。

このように一般的にiDeCoについて言われるメリットには、加入する人によっては、必ずしもメリットとなるとは限らない内容があることがわかります。

60歳になるまで下ろせない

またiDeCoには、その他の加入するにあたって注意すべき点もあります。

▼注意点
4.投資で利益がでるかどうかは不確定である。
5.投資において大切な流動性(換金性)がない。
6.対象となる投資商品が少ない。

まず4の「利益がでるかどうかは不確定である」点は、上述の通りです。ただし、利回りが低いものの、定期預金タイプも一部にあります。

5の「流動性がないこと」は、もっとも留意すべき点であると感じます。通常、金融商品は、自分の好きなタイミングで現金化することができます。しかし、iDeCoでは60歳にならないと資金を取り出すことができません。将来手元の資金が枯渇した場合にも、解約することができないのです。頑張って積立をするのはいいのですが、将来の資金計画をしっかり理解する必要があるでしょう。

例えば、子供の教育資金の支払いと住宅ローンの支払いが重荷となる40代や50代の時に、手元にお金がないばかりに、住宅ローンの支払いが滞る可能性も無きにしも非ず、です。教育資金が支払えず、やむなく借入や奨学金を利用する必要がでてくることも考えられます。FPという筆者の仕事柄、定年を待たずに生活資金が足りなくなる相談者の様子を目の当たりにしてきた身としては、将来設計ができていないのに、iDeCoに投資をするという選択をするのであれば、無謀にも思えます。

6の「投資先が少ない」点については、一般的に確定拠出年金の投資対象は20銘柄程度であることを考えると、日本にある数千という投資信託からほんの一部しか投資対象として選ぶことができない点は、ある意味機会損失と言えるかもしれません。

iDeCoは「お金持ち」に向いている

以上、iDeCoについて一般的に言われているメリットについて改めて考え、その他の注意点も検討しました。その結論として言えるのは、iDeCoに適しているのは、高所得者であるということです。所得税率が30%以上あるような方々には、節税効果が大きく、加入するだけで税金が安くなる仕組みは願ったりかなったり。税金が3割安くなるという事は、投資で3割損が出てもいいということと同じです。現在の貯蓄額が多い人も、資金が枯渇する可能性が低いため、iDeCoに向いているといえます。

一方で、所得税が少ない方やそもそも所得税を払っていないような専業主婦を始めとする、無所得者と低所得者は、加入することだけでのメリットは、実は少ないのです。

金融機関各社はサービスを競って、加入者の確保に動いていますが、そもそも自分がiDeCoに向いているかどうかを知ってからでも、加入を検討するのは遅くありません。国や金融機関が加入を推奨する仕組みには、理由があるということを改めて考える必要があります。iDeCo加入者の資金は、60歳まで凍結され、株式相場などに流れていきます。ようやく資金を手にすることができる何十年か先にどうなっているかは、誰にも分らないのです。

iDeCoへの加入を検討されている方は一つの意見として参考にしてください。

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