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マリオの生みの親、宮本茂インタヴュー:ゲーム制作の真髄、アップルとの取り組み

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(Photo by John Lamparski/Getty Images)

伝説的ゲーム制作者の宮本茂が、自分がアーティストというよりはデザイナーであること、趣味の日曜大工、そして自身の引退がまだ先であることなどを語った。

1981年当時のマリオの制作責任者である宮本茂は、12月15日リリースのiPhone/iPad向け『スーパーマリオ ラン』のプロモーションのため、アメリカにまる1週間滞在していた。滞在中は人気番組『ザ・トゥナイト・ショウ』でザ・ルーツとのギターでの共演や、ニューヨーク・ソーホー地区のアップル・ストアでのトークイベントへの参加など多忙を極めた。彼の新しいゲームが任天堂以外のデバイスでプレイされることは、宮本が30年以上勤め、常にパイオニアとして走り続けてきたこの会社のアプローチに大きな変化をもたらすものだ。

宮本の大規模な宣伝ツアーの終盤に我々ローリングストーン誌は彼への取材を行い、彼のクリエイティヴ・プロセスや年を重ねることに対する感想、引退時期は近いのかどうか、自分をクリエイターとしてどのように見ているかといったことについて話を聞いた。また彼は任天堂の新ゲーム機『ニンテンドースイッチ』の開発をリードをしなかったことで、ユニバーサル社とのパートナーシップによる任天堂テーマパークの構想に関わることができたとも明かした。

ー今週のアップル・ストアでのプレゼンテーションで、あなたのコア・チームは30年間一緒に働いているとおっしゃっていましたね。どのようにしてよい関係を保ち続けてきたのですか?

興味深いことですよね。私はよく「自分が最も誇りに思っていることはなんですか?」と訊かれるのですが、長いことその答えに窮していたんです。しかし数年前、同じコア・グループと30年間ともに働き続けてきたことこそ私の本当に一番誇ることだと悟りました。そんな事はなかなかあることではありませんから。

コア・グループは私と手塚卓志、中郷俊彦、そして4人目のメンバーの近藤浩治です。通常、この4人で一緒に仕事をしています。それにはいくつかの理由があります。この4人はある意味特別だと私は思うんです。なぜなら私たちはみな任天堂の社員で、あなたがたが通常取材するような他のクリエイティヴ・グループとは違う形で活動していますから。30年以上一緒に働き続けているもうひとつの理由は、私たちが関わるのは開発プロセスの中の特定の役割であって、そこに特化したことでよい結果を出すことができているという点です。

ーその"開発プロセスの特定の役割"とは何ですか?

まぁ私はボスの役割ですね。私が一番年上ですから。

鍵となるのは、私たちは自分たちのやっていることが本当に楽しいものかを確かめるために、本当に親しい関係の中で一緒に働いているということです。それが私たちがいつも追求していることです。また、私たちがよい関係を保つためにやり続けていることは、共に時間を過ごすことです。日本は本当に労働時間の長い国ですから、私たちはいつも昼食を一緒に食べ、夕飯も一緒に食べに出かけます。

もしゲームなどのアイデアで面白いものがあれば、たいていの場合4人の意見は一致します。基礎的な部分ではみんな同意できるんです。もうひとつ気がついたことは、そのように私たちはおもしろさに関して一致しているわけですが、グループ外の誰かが来て私たちがやっていることを見ると「それってそんなにおもしろいかな?」というふうに訊かれることなんです。

私たちは本当に互いを信頼しています。そしてその信頼は『スーパーマリオ ラン』の開発にも現れていました。私たちはスマートフォンというフォーマットの中で何をすべきで、何をすべきでないのかということについてほぼ一致していました。とてもすばやく様々なことが決定されました。

ー具体的にどのような部分で一致していたのですか?

はじめから今回はできる限りシンプルなマリオのゲームを作りたいと決めていました。30年前に私たちが最初に『スーパーマリオブラザーズ』を制作したときに、なぜあれほど人気が出たのかといえば、操作は基本的に右に進むこととジャンプすることだけだったからです。極めてシンプルなゲームでした。それからマリオは時を重ねるごとに複雑化してゆき、今ではコントロールが難しいゲームになっています。今回は「もしプレイヤーの操作はジャンプだけで、他は全部自動的に進んでいくゲームを作ったらどうなるだろうか?」というアイデアから始まりました。考えなければいけなかったのは、どうやってそのベーシックな構造を実現し、それでいておもしろいゲームにするのかということでした。

ーあなたは先ほど、自分が一番年上だから自分がボスだとおっしゃいました。年をとるにしたがって、自分が楽しいと思っているものが他の人たちもそう思えるのかということが心配になることはありませんか?

心配になったとしても、心配したから他の人が楽しいと思うものがわかるようになるわけではありません。実際、自分の作ったものがどれだけ売れるのかを見るのは楽しいです。私が考える"他の人が楽しいと思うもの"を作ろうとするよりも、ただ自分が楽しいと思うものを作り続けて、他の人もそれを気に入るかどうかをみるのが私のやり方です。

ーあなたのチームでのおもな仕事はなんですか?クリエイティヴな部分ですか?あなたのメイン・フォーカスは何ですか?

もし建築に例えるならば、基礎となる構造の部分を建てることが私の役割です。ですから、制作の中でやろうとしていることが全体へ影響することなのか、それともシンプルな変化を特定の小さなエリアでつければいいのかということを見極めるのは得意になりました。

ーあなたはマリオの制作に30年かかわり、ある意味ではマリオとともに生きてきました。マリオとの関係はどのようなものでしょうか?マリオに飽きたりはしませんか?

私はこのことをタレント事務所を経営するような感じで見ているんです。様々な個性豊かな人たちがいるわけですが、新しいテクノロジーや新しい試みを世に出すときには、まずマリオにその新しいものを体現するキャラクターとして選びます。そして、もしそれがマリオにあまり合っていないものであれば、そこではじめて他のキャラクターを選びます。それが私とマリオの関係ですね。もうひとつ言うとすれば、私たちはいつもマリオの見た目を進化させています。いつでもフレッシュにアップデートしているんです。

ークリエイティヴの面でどのようなものから影響を受けていますか? ゲームからインスピレーションを受けることはあまりないと過去にあなたはおっしゃっていましたが、映画やテレビ番組などはどうですか?

ふつう、私は自分の製品と競合するようなものは見ないんです。でもテレビはたくさん観ますね。特にドラマが多いです。若いときには漫画もたくさん読みました。そして、どれが売れていて、どれが売れていないのかということにはいつも興味があったんです。最近では様々なテレビドラマを観て、成功しているドラマの人気の秘密は何かということを考えるようにしています。どのようにそのドラマが構成されているのかという部分ですね。というのも、成功しているテレビドラマの人気の理由というのは、ゲームが成功する理由と重なる部分があると考えているからなんです。

それ以上に考えているのは、私が毎日を過ごす中でおもしろいと思うことを、どのようにゲームに生かすことができるかということですね。

ー例えばどのようなものですか?

私たちがWii Fitをつくる何年も前に、日本ではみんなで家に集まって、こんな風におもしろいダンスをするのが流行っていたんです。思い出すのは、ある日私が近所の家に行ったら、きちんとした格好をした弁護士の人が、リビングでそのダンスを踊っていたんです。子どもたちはお父さんがそのダンスを踊る姿に大笑いだったのですが、彼が楽しい時間を過ごしていたことは明らかでした。Wii Fit用のゲームとバランスボードの制作を始めたときには、その時のイメージが頭の中にあったんです。

ーあなたは極めて多忙な日々を送っていますね。仕事以外のことをする時間をどのようにして作っているのですか?

たしかに平日は夜遅くまで働いていることが多いですが、週末に家族と過ごすことは必ずしています。週末の時間は仕事からは完全に切り離しています。時間がかかるので、ゴルフやギャンブルなどはしません。そういったものに時間を使わないようにしています。

ー休みの日にはどんなことをしますか?

昔はよく子どもたちとキャンプに行ったりしたけど、今は家でゆっくりすることが多いかな。"何もしない"ということはあまりよく思われないこともありますが。今は子どもたちも成長して独立していますので、妻とガーデニングを楽しんでいます。あとは日曜大工ですね。家具を作るのが好きなんです。

ー『スーパーマリオメーカー』や『スーパーマリオ ラン』の『王国作り』モードなど、最近のゲームにクリエイティヴな要素が多いのは日曜大工の影響ですか?

日曜大工の影響と言えるほどではないかもしれません。でも何かに取り掛かるときには必ず座って絵を描くことから始めます。プロジェクトが一旦動き出してからは、そのプロジェクトのことを常に考えています。日曜大工のプロジェクトでも、ゲームのプロジェクトでも、それは同じです。

ー今でもアナログな方法で仕事をしていますか?コンピュータでの作業に入る前に手描きでアイデアをまとめますか?

ゲームがどうなるかという絵はあまり描きません。グラフやフローチャートを描くほうが多いですね。というのも私はゲームの構造をデザインするのが役割ですから、物事がゲームの中でどう進んでいくのかというプロセスの下書きを描くのです。それはいつも最初に紙に描きます。日曜大工の時でさえも、計画を紙に描くことはします。どの長さに切るのか、そしてどうやってそれぞれの部分を組み合わせるのかということをわかっていなければいけませんからね。

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