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ネット社会がもたらす配達という利便には大きな代償が伴う 便利さだけを享受することはできない

 クロネコヤマトの配送業務に関わる人たちの悲痛な叫びです。
「アマゾン多過ぎ」ヤマトドライバーから悲鳴続出、「利便性」が生んだ過酷な実態」(弁護士ドットコム)
「現場はパンク寸前だという。前述のAさんは次のように証言する。「この1年で周りのドライバーが10人ぐらいやめました。下請けの人にお願いして凌いでいるけど、社員自体はなかなか増えない。この間も、体験入社の子を1日、トラックの助手席に乗せたところ、『仕事が慌ただしすぎる』と言ってやめてしまいました」」

 アマゾンの配達業務を請け負っていることが現場での業務量を一気に増大させ、現場の運転手に過酷な労働を強いているという構図です。
 もちろんアマゾンだけの問題ではありません。アマゾンの分が減ったとしても他社の分が増えるでしょうし、結局、インターネットによって簡単に商品が注文でき、配達してくれるということあり、しかも送料無料がそれに拍車を掛けていました。
 そのアマゾンも昨今、送料を有料にシフトしました。

 アマゾンでは、働かされている人も下請けに出された配達のためのドライバーも過酷な労働環境に置かれています。
アマゾンの送料無料が終わる、送料はアマゾンや宅配業者で働く労働者に還元させ労働者の生活を取り戻そう

 しかし、現場の労働者には還元されていない状況と言わざるを得ません。
 本来、定価で販売されるものが送料無料ということになれば実質的な値下げです。
 それでも利益を上げるためには労働者からの搾取を強めなければなりません。
 過酷な労働を低賃金で強いることが利益の源になるのですから、非常に問題です。

 本来、配達のためのコストが別途、かかるはずなのに無料だったり廉価だったりするのは、労働者にしわ寄せがいっていることを私たちも自覚しなければなりません。
 クロネコヤマトではありませんが、先日、佐川急便のドライバーが荷物を投げつけていたということがニュースになっていました。佐川急便の調査では事実だったようですが、配達しても一向に達成感が得られないだけでなく、再配達というように何度も訪問しなければならなくなり、なお一層、ドライバーの気持ちを暗いものにします。ストレスが溜まるのもわかります。
 もちろん荷物を投げつける行為が許されることはないのですが、訪問先が不在の場合、再配達になるのはドライバーの責任ではなく、それが加重労働をひどいものにしていくのですが、労働者は時間単位で労働力を切り売りしているのですから、それに見合う適正な対価が受け取れなければストレスが大きくなるのは当然のことです。

詳しい動機まではわからないが…
佐川急便


 適正な対価は当然に負担するという認識を消費者としても持つべきものです。
 店舗に買いに行けば、時間もお金も掛かるのに、それが無料であるはずもありません。配達による効率化によって、個々の消費者が買い物に行くコストよりは安くなるということはあっても無料ということにはなりません。
 生産性が上がったわけでもなく、すべて労働者にしわ寄せがいっているのです。

 それ以上に大きな問題は、既にドライバーのなり手がいなくなっているということです。仮に過酷労働が克服されたとしても、既にそれだけではドライバーを確保するには危機的な状況です。
 若い層がきつい労働を敬遠しているだけでなく(対価や労働時間が適正であってもきつい仕事です)、車の免許にも興味がないという状況の下では配達してくれる労働力すらも確保できなくなってきています。
介護だけじゃない トラック運転手が不足 日本はあらゆる分野で劣化している

 一昔前までは就職に有利だからとかいう動機もあり、みな免許を取りに行ったものでした。
 しかし、就職のためですら免許を取ろうともしない状況が生まれているのです。
 少子化のもと、苦労も知らないまま大人になり、多くのニートまで生まれている時代に、就職のために車の免許を取ろうとする層など今後、ますます減少していくことでしょう。

 便利さだけを享受してきたことのつけが押し寄せてきています。
 便利を享受するためにはそれを下支えすることが不可欠なのですが、下支えは嫌って便利さだけをということがあり得ないということの自覚が欠けてきた現代社会はあまりに病んでいます。

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