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菅官房長官と黒田日銀総裁による円安政策とは何か

 27日の日経新聞の一面に、気になる記事というかコメントがあった。これは菅官房長官とのインタビューのなかで、為替に関して、円安となっているのは私たちが為替の危機管理をちゃんとやっているからだ、との発言である。具体的な対応については、「そこは色々と。私たちへの意識は強く、中途半端な決断ではない」と官房長官は発言していたのである。

 これはアベノミクスの元締めとも言える人物からの発言だけに、「色々と」とは何をしたのかはたいへん気になる。菅官房長官など官邸関係者が見ているのはドル円と日経平均が主だとみられる。官邸がたとえば為替に絡んで米国政府やFRBに直接働きかけをしたとは思えない。米大統領選挙についても結果が出てから慌てて首相がトランプ氏に会いに行ったぐらいで、事前に何か準備がされていたとは思えない。

 官邸による危機管理、中途半端な決断ではないものとはいったい何であろうか。トランプラリーが起きる前の円高の要因は、中国をはじめとする新興国経済の減速への懸念によるリスク回避の動きによるものであった。その後、英国のEU離脱などによってさらにリスク回避の動きを強めたが、これらは日本政府がどうのこうのできる問題ではない。

 トランプ氏の大統領選の勝利をきっかけとした円安ドル高も、日本が牽引したわけでは当然ない。リスク回避の反動のきっかけにトランプ氏の登場がなったわけでもあり、素直な市場の動きとも取れる。

 それでも「中途半端な決断ではない」ものとしては、ひとつ該当しそうなものがある。日銀が9月に決定した長短金利操作付き量的・質的緩和である。11月の消費者物価指数はコア指数で前年比マイナス0.4%となったが、日銀がいくら異次元緩和をしようとも物価は結果として目標には全く達していない。アベノミクスの主役であった金融政策は目標達成には何ら効果を及ぼさなかったこととなるが、それに危惧したのは日銀だけでなく、官房長官も同様であろうか。

 今年9月の日銀の総括と長短金利操作付き量的・質的緩和の決定に関しては、これまでの経緯からみても菅官房長官がまったく関与していなかったとは思いづらい。特にアベノミクスについては当初から物価そのものよりも、為替というか円安と株高が意識されていたはずである。特に長短金利操作付き量的・質的緩和についても、重点が量から金利に移行するため、リフレ派の意向を汲んでいるとみられる菅官房長官にとっては「中途半端な決断」ではなかったのかもしれない。ところがこれがトランプラリーの結果、功を奏する格好となった。

 黒田日銀総裁は12月26日の講演において、海外経済の好転が明確になっていくにしたがって、日本の長期金利にも上昇圧力がかかってきているものの、10年物金利は「ゼロ%程度」で安定的に推移しており、このことは「イールドカーブ・コントロール」が所期の効果を発揮していることを示しているとしている。これにより、グローバル経済の回復のモメンタムを、わが国経済にとってより大きな「推進力」に増幅していくことが可能になるとしている。

 何ということはない。直接触れていないが、日米の長期金利の較差の広がりにより円安効果を生み出すことを指摘しているとみられる。この見方を菅官房長官は共有しているのではないかと思われるのである。

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