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東芝に落ちた原爆

第二次世界大戦中、アメリカは敵対するドイツや日本に対抗するため、原爆の開発、製造を早急に行わなくてはいけないと判断し、巨額の資金を投じて「マンハッタン計画」なるものを推進します。この計画によりアメリカは原爆を作り、それを日本に落とすことでその作戦を正当化することになりました。

この「マンハッタン計画」には多くの学者や会社が関与していますが、その中で主たる業務を請け負い、原爆に大きく貢献したのがStone & Webster社であります。この会社は戦時中、原爆を含めた爆弾などを作る会社として一躍有名になります。その後、同社は紆余曲折し、倒産も経て、株主も変わりながらも最終的にアメリカの原発会社、ウエスチングハウスの傘下に収まります。これが僅か1年前の2015年12月であります。

この頃、ウエスチングハウスの親会社である東芝は不正会計問題で揺れに揺れていたころであり、子会社のアメリカ原発会社がStone & Websterを買収する話は陰に隠れてほとんど見えない状態でありました。当時の東芝のIRでウエスチングハウスによるStone &Webster社の買収についてその金額は一切語られていませんが、買収額は2億2900万ドルで当時の為替からすれば275億円程度だったとされます。(12月27日付日経には買収額はゼロドルだったとありますが、私が2015年10月28日付アメリカのWorld Nuclear News をみる限り2億2900万ドルがプロジェクトの達成に応じて2回に分けてCB&Iに支払われることになっています。但し、それが既に払われたかどうかは不明です。)

尚、日経の報道(16年1月5日付)によればうち、買収額のうち105億円をのれんとして計上しています。つまり、ざっくりStone & Websterの純資産価値が170億円程度だったということになります。

今回の最大の問題は買収にはStone & Websterが関与したアメリカと中国の全てのAP1000型の加圧水型原子炉のついて過去、現在、未来のライアビリティ(責任)をウエスチングハウスが全面的に引き受け、顧客にそれを書面で交わしているそのリスクを東芝本体が過小評価か見過ごした可能性が高いと思われます。個人的にはこの取引がカギだったように思えます。

今回、年末のこんな時期に原爆に深く関与したStone & Webster社絡みで突如数千億円から5000億円規模の減損処理を迫られています。正に原爆の会社に原爆を落とされたようなものであります。

ここまでお読みになってお気づきになった方も多いと思いますが、この話、どこか変ではないでしょうか?買収金額275億円、純資産価値170億円程度の会社を子会社のウエスチングハウスが買収しただけでなぜ減損処理に数千億円も要するのか、という点であります。つまり一桁違う損失を抱えているということです。

想像するに買収した時期は不正会計問題で東芝のウエスチングハウスに対するグリップが甘かった時です。Stone & Webster社はそれまでウエスチングハウスと一緒に仕事をしながらも常に費用負担等で訴訟などトラブルを抱えていた一種の犬猿の関係だったようです。それを安い買い物をするがごとく買収することで抱き込んでしまい、味噌も糞も一緒にしてしまったのであります。当然ながら見えない瑕疵、損失も十把ひとからげですから福袋ならぬゴミ袋そのものであったとみてよいのでしょう。

東芝不正会計問題で2016年3月期に長年指摘されたウエスチングハウスののれんの減損処理を2600億円ほど行います。東芝は2006年にウエスチングハウスを5400億円で買収し、うち3300億円がのれんとして残っていました。この「会計処理作業」が出来たのは虎の子、東芝メディカルをキャノンに売却した為に懸案のウエスチングハウスの減損を進める枠が出来たからであります。言い換えれば会計原則と自己資本の余剰部分とのバランスをみながら最適な処理を進めた一種の会計ありきのリストラであります。とにもかくにもウエスチングハウスという臭いものには蓋をしたはずでした。

が、買収から僅か1年しかたたないStone & Websterは充満した臭い匂いで折角の蓋を吹き飛ばした、というのが今回の流れでしょう。ではその具体的中身は何なのか、個人的にはAP1000型原子炉の抱える潜在的問題だろうと思いますが、明らかに背任的要素がどこかにあります。少なくとも買収当時の社長である室町正志氏に火の粉が被らないことはないでしょう。

問題は東芝は生き残れるのか、であります。9月末の自己資本は3600億円。この損失を計上すれば自己資本は吹っ飛びます。ただ本業が好調で今期1500億円程度の利益を見込んでいたことを考えれば債務超過ギリギリのところに踏みとどまるかも知れません。しかし、同社ほどの大企業がそんな綱渡りはできないため、金融支援を要請するのは当然の流れでしょう。報道されているメモリー半導体部門の分社上場化もオプションの一つになるのかもしれません。

第三者的な物言いかもしれませんが、東芝という立派な会社に育て上げてきたのにウエスチングハウスという原発会社の買収でこの会社は解体的出直しを迫られているとすれば同社の買収決断した西田厚聡氏の責任はとてつもなく重く、余りにも多くの負の遺産を残してしまったとしか言いようがありません。結局、アメリカのヤンキーを日本の品行方正な大企業には扱えなかったということなのでしょうか?残念でなりません。

では今日はこのぐらいで。

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