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トランプをどうめくっても反米意識が再燃する中南米 - 岩城薫

 「トランプ旋風」を最も恐れているのは歴史的に米国の影響が最も素早く、露骨に表れるラテンアメリカだろう。キューバとの国交正常化はどうなるのか。米国を敵視してきた故チャベス政権の流れをくむ産油国ベネズエラの対米輸出は滞るのか。国境に壁を築き、メキシコは「仮想敵国」の扱いを受けるのか。

不吉な問いは枚挙にいとまがないが、トランプ米次期大統領が発言通りのことを進めると、影響が出るのは経済規模の小さな中米諸国だ。

 1980年代まで続いた左翼ゲリラとの内戦を経て親米国となったエルサルバドルからは約150万人、グアテマラからは100万人が米国へ移住しているが、その半数近くは滞在許可を得ていない。トランプ氏が公約通り、不法移民を強制的に本国に送り返した場合、国内には居住地や職が足りなくなり、確実に犯罪は増える。

 同じことがメキシコにも言えるが、人口の少ない中米の方が影響は深刻だ。以前なら、組織犯罪などで治安が悪化すれば、米国が軍事面などで間接支援をしてきた。だが、ビジネス第一で「世界の警察官」など関心がないトランプ氏にこうした介入は期待できない。

 今後、米国が南米諸国と2国間で交渉を行う中で「移民強化」のカードをちらつかせるだろう。各国政権はその弱腰ぶりを国民にさらす形になり、内政や社会の混乱を招くこともあり得る。内戦から経済、治安に至るまで常に米国に左右されてきた中米はこの先、トランプ氏に神経をとがらせていくことになる。

 ベネズエラなど南米の左派系の国々ではトランプ氏による差別的言動、左派に対する執拗な批判が反米意識をよみがえらせ、台頭する右派との対立をあおる危険がある。

 米国の支援金が南米で最も多く注がれてきた右派政権のコロンビアも安泰ではない。左翼ゲリラとの和平合意が成立しても、他国の争いに関心が低いトランプ氏が支援額を一気に減らすこともあるだろう。そうなれば、ゲリラの社会復帰から被害者救援まで、和平後の再建策は滞る。

 中南米諸国は歴史の節目節目で米国を「植民主義者」「差別主義者」とみなし、国民の被害者意識をあおりナショナリズムを高めてきた。90年代以降、米国敵視は徐々に緩まったが、トランプ氏が差別発言を繰り返せば、新たに反米ムードが広がることも考えられる。中南米がどう転ぶかは、日本にもいずれ影響の出るトランプ外交を占う「リトマス試験紙」でもある。

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