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貧困の学習支援は、「義務教育」

■なぜNPOが学習支援なのか

最近僕は思うのだが、貧困層の子どもへの学習支援をなぜNPO等が行なう必要があるのだろうか。

有力NPOが行なう学習支援だけではなく、各地の社会福祉協議会(社協)が大学生をスタッフにして行なう学習支援も含めると、いわゆる「ソーシャルセクター」が行なう学習支援は、生活困窮者自立支援法の成立以降、各地で活発に行なわれていると思う。

その前線で子どもへの学習支援を行なっているのがNPOや社協というわけだが、僕の知り合いにも献身的にこれを行っている団体があるだけになかなか表現が難しいいものの、一義的には貧困層子どもへの学習支援はソーシャルセクターが行なうものではないと思う。

それはまずは、「学校」の仕事だと僕は思うのだ。

当たり前だろう、学校というネーミングのもと組織されている義務教育機関であれば、子どもの個別的事情からはほぼ関係ない貧困のような社会的あるいは保護者的事情によって「社会参加の機会」を子どもが奪われる事態については、まずは公的制度がフォローすることがわかりやすい。

義務教育はそんな「個の努力ではどうしようもない事態」に陥った子どもたちをフォローするためにつくられた近代制度だと僕は捉えている。

議論はあるかもしれないが、近代=人権擁護だとして、そうした子どものヒューマンライツを擁護する具体的社会的リソースが「義務教育」なのだ。

貧困とは、近代人権擁護システムが真っ先に取り組むべき課題であり、その先陣に「義務教育」、特に小学校低学年の教育システムはあるはずだ。

■「とびだせ青春」で「金八」で「熱中時代」

それが、このたび提案されている「学習指導要領」案を見てみると(学習指導要領改訂答申…小3で英語導入、年間35単位時間)、貧困支援という最もエポックな話題に対して向き合っていない。

小学3年生から英語を学ぶ等、いつもながらの派手な提言はあるが、相対的貧困層1/6人、非正規雇用4割、「下流」層4割と固定した我々の階層社会を前提とした教育提言がほぼない。

これはある意味スゴイことだ。義務教育のあり方を考える時に、最新の社会事情が考慮されない行政分野が文部行政だということだ。エリート教育や勝ち組養成については常に配慮されるが、社会の4割を占めるアンダークラスはその存在が看過されている。

あるいは、当然貧困層の子どもの問題は把握しているにしろ、それをスルーする。それをなかったことにするか、あるいは貧困層子どもへの細かい学習支援は学校にはムリと、なぜか諦めている。

が、学校や教員が率先して貧困層子どもをターゲティングして、小学1年生から網にかけていけば、そしてそこに予算的フォローをしていけば、実はそれほど難しくはないように僕には思える。

引退教師に現役時代より安い人件費を設定し、それら引退した「情熱のある」元教員たちに貧困子どもたちへの学習の意味(小さい頃に学習の習慣があれば貧困層から脱しやすい)を伝える。

引退教師たちは、引退後に教壇に立つ意味さえ明確に伝えれば、カネを超えたところで動いてくれる。そもそも教師たちとはそうした熱意ある人たちであり、貧困こどもの学習支援をしてくれる教師たちとは、そうした「とびだせ青春」で「金八」で「熱中時代」な人々なのだ。

■これは「人災」

つまりは、単に、教育委員会システムの硬直化と首長の未決断が、我々にそれ(義務教育の貧困学習支援)を不可能だと思わせているのではないだろうか?

引退教師は毎年たくさんおり、実は貧困子どもフォロー予備軍の元教師たちはたくさんいる。

が、現在の現役管理職教師層には、引退教師層がついていこうという気にさせない人がいる。そうした人材育成と組織養成と組織内構造(少ない管理職と疲弊する大量の現場層、福祉職教員の圧倒的少なさ等)に嫌気が指して、貧困子どもへの学習支援を行なう人材がいないように一見映る。

要は「仕組み」の問題で、これをトップダウンで提案していけば、議論はあるだろうが、目的(貧困子どもの学習レベルをあげて貧困・虐待連鎖を防ぐ)が人道的なだけに、人々は聞く耳を持つと思う。

これらは、児童虐待予防とともに、システム硬直化(村上春樹のいう「壁」)が原因だと僕は思っている。つまり、これは「人災」だとも言える。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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