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自動車のコモデティ化

バンクーバーでクルマにマニアックな連中はマニュアルトランスミッションを愛している人が結構多いものです。何故、と聞けば「運転する楽しさ」とほぼ100発100中返ってきます。コーナリングでは手前でシフトダウンしてコーナーの先が見えたところでぐっと踏み込んで、加速感を感じながらさっと抜ける、という手と足のギアチェンジプレイは車の運転が大好きな人たちの趣味の領域であります。

クルマが好きな人は何が好きか、といえばスタイル、躍動感、自分の世界…などいろいろ求めるものがあるかと思います。だからこそ、世界の中で様々なメーカーがそれなりに生き残り、ユニークなクルマを生み出しています。1980年代、世界では7つぐらい、日本では3つぐらいの自動車会社しか生き残れない、とされていましたが、日本でそれ以降、なくなった自動車会社はありません。どちらかといえば富士重工やマツダのように個性を売り物にする独自路線でファンを囲い込みました。

2016/17の日本のカー オブ ザ イヤー。下馬評ではプリウスと大激戦になるとも言われながらも富士重工のインプレッサが大賞となりました。中を覗いてみるとプリウスは371点であったのに対してインプレッサは420点と割と点差が出ています。もう一点、見逃してはいけないのは上位10車のうち、日本車はこの二つ以外に8位のホンダフリード、9位の日産セレナだけで残りは欧州勢でした。インプレッサが受賞した理由は歩行者保護エアバックといった「初もの」を含めた安全性能が高く評価されました。

カーオブザイヤーは1980年以来外国の車が受賞したのは後にも先にも一度だけ、2013/14年にVWのゴルフが受賞しています。今後、日本のクルマが何時もカーオブザイヤーに輝くとは言い切れない時代になっていることは確かでしょう。ここには車に対する期待感が大きく変わってきていることもあろうかと思います。

かつては見た目のソアラ(1981年)、MR2(84年)、バブルの象徴であるセルシオ(89年)、ディアマンテ(90年)、不況期の小型車ブームでマーチ(92年)、シビック(95年)、運転者の個性化の象徴としてレガシィ(03年)、ロードスター(05年)、新技術と燃費向上時代にはプリウス(09年)、リーフ(11年)といったそれなりの時代背景が大賞受賞車にはあるように見受けられます。

では自動車が今後どのように発展していくのか、といえばこれは確実に自動運転に向かっています。各社し烈な開発競争に入っていますが、そこに見えるのは楽しいというよりより実質主義になってきたような気がします。

GMボルトの完全自動運転車の試作車が実験を開始するようですが、ミシガンでは雪が自動運転の目であるレーダーの邪魔をするため苦労しているとコメントされています。自動運転車はアメリカが実験しやすい環境があることで一歩有利な気もします。また、グーグルを含むIT関連企業との連合も図りやすいことがあるのでしょう。そうなればまさかのアメ車のカー オブ ザ イヤーが数年後に実現するかも知れません。

産業界の話題に対して盛り下がる人もいるでしょう。車にはロマンがあったのに、と回顧する人々です。私の知り合いにMGのクラッシックカーを10数台近く所有している人がいます。倉庫にいくとBMWの三輪車(しかも前が開く)などもあり、唖然としますが聞けば「全部動くよ」と。(MGに関しては世界一のコレクターと聞いています。)もう一人の私のお客さんのカーマニアは古いアメ車を集めて5-6台持っています。先日は77年のトランザム(スーパーカーもどきです)をゲットしたと喜んでいました。「乗っているの?」と聞けば「Of course!」と嬉しそうに答えます。

自動運転の車になぜ、ドキドキしないのかといえば自分でかわいがる必要がないからであります。勝手に動くモノなんです。(まさにIoTです。)電車やバスのスタイルにこだわる人はそう多くはないでしょう。それと同じでコモディティ化してしまう気がします。

今、日本ではインフラを利用してビジネスが進むようになりました。格安携帯は通信のインフラからの派生です。安い電気代は電気のインフラ利用です。2017年にはガスの自由販売も始まります。それらは人々が見えない資産であるインフラを利用し、安く利用できるという価値を享受しているともいえます。

自動車が仮に自動運転になれば所有目的とは「プライベート移動機」であります。家の前にいるその箱に乗って目的地を指示すれば勝手に連れて行ってくれます。その間、箱は移動するためのディバイスであって愛着を持つかといえば私には疑問であります。

「俺、新しい自動運転移動機買ったけど、君、助手席に乗らない?」といえば「わたし、用事ないから乗らない」と返ってくるでしょう。これではほとんどサマになりません。

自動運転の開発が進めば日本には本当に3つの自動運転移動機メーカーしか残らないかもしれません。(突然全部が全部、自動運転になるわけではないと反論はありましょうが、長い目で見ればその趨勢はかわらないでしょう。)未来は誰もわからないけれど世の中の展開とはそんなものかもしれません。とすればその頃には人々は何にロマンを感じてドキドキするようになるのでしょうか?

私にはこれがどうしても引っかかっていて腑に落ちないのであります。

では今日はこのぐらいで。

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