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「日本死ね」とつぶやく学生をとりまく採用のからくり 『お祈りメール来た、日本死ね 「日本型新卒一括採用」を考える』 (海老原嗣生 著)(文藝春秋 刊)|インタビュー・対談

「新卒一括採用」と言えば、「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」と並ぶ、日本型雇用の柱の一つ。しかし、就職活動を失敗するとずっと非正規社員になってしまうとか、学業が圧迫されるとか、様々な問題が指摘されています。それでは日本だけが悪いのか? 雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんが、新著『お祈りメール来た、日本死ね』で、論点に答えました。


『お祈りメール来た、日本死ね 「日本型新卒一括採用」を考える』 (海老原嗣生 著)(文藝春秋 刊)

――まず始めに、「お祈りメール」とは何でしょうか?

 不採用通知メールのことを、最近の学生はこうやって呼ぶんです。かつての就職活動は紙ベースでしたが、2000年代からは殆どが「就職ナビ」と呼ばれるWEBサイトへ移行しました。不採用通知ももちろんメールです。「当社とはご縁がありませんでしたが、今後のご活躍をお祈りしております」という遠回しで慇懃なメールが一方的に送られてきて、一方的に終了してしまうんです。これで傷ついちゃう学生も多い。

――ネット就活は便利な反面、問題もあると。

 真面目に活動すると、こんなのが何十通も来ちゃうんですね。もう一つ、長期化という論点もあります。企業側も優秀な人材を確保すべく、倫理憲章上では「6月1日選考解禁」なのに、「インターンシップ(職業体験)」「企業説明会」と称しては、企業は学生にアプローチしようとします。ただ、15年くらい前は、倫理憲章も有名無実だったために、2年生から就職活動に駆り立てられてもいました。その頃よりはよくなったかと思います。

――学業が阻害されるという嘆きも聞こえてきます

 本の中にデータをたくさん載せているのですが、いまの「憲章」は罰則も無いし、抜け駆けする企業がすごく多い。だから学生も大学側も苦しんでいる、という印象ですね。実は、「憲章」と「青田買い」のいたちごっこは100年も続いているんですよ。2016年度卒の就職活動は6月開始に前倒しされましたが、このような実行力がないような押し付けが政府からも来て、企業側も守るか・守らないかで困っている。誰もが悩んでいるこの問題をウォッチし続けてきた身としては、一度きちんと整理する必要があるな、と思い、今回一冊にまとめることにしました。

――日本型雇用が悪なのでしょうか。

 その面はあると思います。ただ、日本型で助かっているところもある。何も知らない新卒学生が、OJTで立派な職業人になれる点ですね。とりわけ、欧米のような限定型職務ではないから、徐々に難しい仕事を覚えていく形――「ゆで蛙型」と呼んでいます――で仕事が覚えられることなど。実際、日本の入職は、欧米の若者に比べたらずっと楽です。日本の就活が辛いからと、欧米型を安易に羨む前に、事例とデータに基づいて検証したほうが良いと思います。

――欧米ではどんな就職システムになっているのでしょうか。

 超エリート層は自ら仕事を取っています。その代わりに残業もたくさんする。一方で、それ以外の大多数の人は給料も上がらないし、ジョブが出来る人しか採用してもらえません。だから職業訓練が必要で、在学中にインターンシップをする学生が多い。ただ、これがすごいブラックで……「搾取だ」と考える人が4割もいる。日本みたいな物見遊山の展覧会では決してありません。この過酷な“就職活動”に乗れない人は、スモールジョブやワンダラージョブに落ちざるを得ない。「残業がなくて職業教育もされて羨ましいなあ」という意見は、良き一面しか見ていないということを知って欲しいですね。

――本書では欧米型の若年雇用について詳しく述べられています

 日本は職務無限定の「就社」システムで、向こうは入り口から職務が決まっている「就職」システムです。フランスの例と比較してみると、向こうのエリート層(グランゼコール)というのは少数精鋭で、上位10校を足しても早稲田大学よりかなり少ない人数しかいない。早慶じゃ学歴にもならないし、MARCHクラスはエリートではないんです(笑)。早めに選別されて「籠の鳥」になっちゃうという意味では、日本の方がみんなに門戸が開かれていると言えます。小さい頃野球選手になりたかった人でも、成長の過程で自分の「相場観」が分かってくるようになりますよね。でも、日本は誰でも応募できちゃうから、たくさんお祈りメールをもらうことになるというわけなんです。

――いま日本が考えるべきテーマとは。

 1つめに、日本型雇用の良い所を整理すること、2つめに、欧米型雇用とは何かを知ること、3つめに欧米の大変さを知ること、そしてそれを踏まえて、改革案を考えることでしょう。いまの日本では「卒業後に日本型採用をやりましょう」というおかしな方向に向かっているのです。これもずいぶん虫のいい話です。「日本型=未経験者の人柄採用」ですから、いくらでも早期選別自体は可能です。そうしたら、卒業後まで待っている企業はないでしょう。一方、欧米なら、未経験採用はほんの少数のエリートのみになる。大多数は、新卒にこだわらないけど、その分、企業実習、見習い訓練などで、経験を積まねばならない。卒業後に、未経験者を、大量に、という三条件のかけ合わせは成立しないのです。

――最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。

 日本型雇用の良い部分については、多くの人が、「それは欧米でもそうなのだろう」と誤解しています。たとえば、社員から見ると出世のチャンスが開かれていて、人事から見ると上下左右に自由に人を動かせるという良い所があります。職務ポストごとに採用している欧米では考えられない、とっても都合の良い仕組みなんです(笑)。本書で論じた採用問題は「誰もが通る道」ですから、身近な話題でもあるわけで、この取っつきやすいテーマを通して、雇用の全体像を理解していただけたら、と思います。

 そして、これを機に議論が活発になることを期待しています。

 就職活動中の学生のみなさん、日本に生まれたのはそんなに不幸じゃないし、「落ちて入ったけど幸せ」ってこともたくさんありますよ!

海老原嗣生

1964年生まれ。上智大学経済学部卒業後、大手メーカーに入社。その後、大手人材系企業へと転職し、新規事業企画や人事制度設計などに関わる。2008年よりHRコンサルティングを行う株式会社ニッチモを設立、代表取締役に就任。主な著書に『「若者はかわいそう」論のウソ』『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』『即効マネジメント』などがある。

お祈りメール来た、日本死ね 「日本型新卒一括採用」を考える
海老原嗣生・著(文藝春秋 刊)

定価:本体820円+税 発売日:2016年11月18日
詳しい内容はこちら

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