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この手があった!? 若者の就職支援にゲームを活用するオランダ政府 万年学生よさらば?

この手があった!? 若者の就職支援にゲームを活用するオランダ政府 万年学生よさらば? 経済のマイナス成長が約10年続き、長く寒い「冬」に突入したままのオランダだが、中央統計局の統計によると若年失業率は昨年度から高止まりしており、18歳から25歳までの労働人口の13.3%が未就労だそうだ。若年層は短期契約勤務者が多いため、解雇されやすいのも原因のひとつだが、本質的な原因は就労先の減少にある。しかし、若年層の多くは状況を冷静に受け止め、むしろ客観視しているふしもある。

◆万年大学生が増える理由

 成人年齢(満18歳)に達しても、「希望通りに就職できるはずがないから」と腹をくくったまま将来を憂えることなく、大学生のまま安泰に(?)過ごそうと考える者も多い。なので、大学生のまま三十路を越えても、オランダ人はあまり気にしない。これはなぜか? まず、授業料が安いので、アルバイトだけでどうにか賄えるためだ。一般大学なら年間2,000ユーロ(約19万円)ほどしかかからない。加えて、学生の身分にはメリットがたくさんある。例えば、特定のスーパーマーケットやデパート、美容院などでは学割がきくので、生活費もかなり抑えられる。さらに、交通費(バス、路面電車)に至っては、国内なら無料でどこへでも乗り放題ときている。そのうえ、下宿代の半額を市役所の生活保護課がまかなってくれる場合すらある。つまり学生でいる限り、贅沢をしなければ社会人よりも楽な生活が送れてしまうというわけだ。これが万年大学生を増やす理由なのである。

 これだけ特典があれば、「学士さま」としてのうのうと暮らしたほうが、確かに快適だろうが、この事態を重く見た政府は意図的に長期間在学する者、つまり卒業見込みがあるのに故意に留年した者に対して、留年1年ごとに罰金3,000ユーロ(約29万円)を課すことにした。ところが今度は、この罰金制がない国を求めて万年大学生たちの大移動が始まってしまったのだ。手っ取り早い行き先は、オランダ語が通じるベルギーである。国境を越えれば簡単に入学できるため、“隣国”留学するオランダ人大学生が増大しているそうだ。ベルギー側は、身分確保のために入学する彼らのために国の財政負担が増える、と困惑することしきりだ。

◆ゲーム感覚

 景気が良かった頃、大学卒業生は社会に重要な存在だった。有能で意欲的、そして頭脳明晰な彼らを雇えば、会社は安泰といわれていたのである。しかし、いくら優秀な人材がいたとしても現状では就職先すら見つからず、まさに宝の持ち腐れでしかない。この時期をうまく乗り切る術を、留年や隣国留学に見出したとしても、一概に批判はできないかもしれない。

 そんな万年大学生らのモチベーションをあげるため、苦肉の策として話題になっているのがオンライン就職斡旋サイトである。これは、文部省が各市の教育委員会と提携して開発したシリアス・ゲーム(疑似体験シミュレーションを通じて、問題等を解決するゲーム)を含むアプリだ。使い方は簡単。まず、「将来の夢・あなたらしいスタイル」「希望職・あなたの選択」「履歴書の書き方・あなたのやり方」「面接・あなたをアピール!」などのアイコンを選んでクリックする。すると、「あなたのプライベートコーチ」として、5、6人のアバターが出現するので、彼らのアドバイスに従いながら、将来の夢を選択したり、履歴書のサンプルに記入したりしながら、就職のシミュレーションをするわけだ。このゲームを使うと、人間関係をスムーズに活かすことがいかに就職活動にとって重要なのかも体験できる。

 個々のマニュアルに従い、就職までの全過程を疑似体験しながら、随所に含まれるレベルアップ要素によって達成感も得られるこのサイトは、大手・中小企業とのタイアップにより、人材募集ページへも直接アクセスできるようになっているのが特長だ。つまり、ゲームでトライした就職活動が、実地に開始できるサービス機能も満載されているため、楽しみながら興味を持って就職活動ができる、と謳っているわけだ。

◆効果のほどは?

 実際に、このアプリゲームを使って、就職に成功した人に聞いてみた。彼女が将来に描いた青写真は、仲間と一緒に弁護士事務所を設立すること。しかし、不況でそれも夢物語だった。失意のままボランティアで弁護士の付き添いのようなことをして法廷へ出向く日々を送っていたところ、このアプリゲームを知り、ならば自分も、とトライ。運よく、サイト上の人材募集に応募し採用され、新たな方向性を見出すことに成功したという。現在、海外養子縁組斡旋団体の秘書として、充実した日々を送っている彼女だが、最初は「ゲーム感覚での就職」にかなり半信半疑だったそうだ。しかし面接の際、シリアス・ゲームでシミュレーションしたときと全く同じ場面に出くわし、ゲームの有用性を感じたという。予想体験をしっかり積んでおいたおかげで面接時にあがることもなく、結果的には就職に成功したというわけだ。

 履歴書はメール送信、初回の面接はスカイプで行なうのが当たり前のオランダだが、今後、就職を成功へ導くシリアス・ゲームの導入により、万年大学生たちが、果たしてその身分を返上する日がやってくるのかどうか。大企業もこれらのゲームに注目し、就職活動の手助け用や、新入社員指導用に取り入れる会社も増えているという。ゲーム世代の台頭により、就職活動までゲーム化する時代に突入したようだが、これが功を奏して失業率が下がるということはあるのだろうか。経過を見守りたい。

(カオル イナバ)

>>>合わせて読みたい:12歳にして将来の青写真を描くオランダの子どもたち

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