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秋田県の苦渋の決断:日本海のハタハタは回復するのか?

秋田県では、ハタハタの漁獲枠を増やすように要求する漁業関係者と、漁獲枠を維持すべきと言う県水産振興センターで、意見が割れていたようです(一つ目の記事)。結果として、漁獲枠は増枠されず、水揚げも低迷したようです(二つ目の記事)。ハタハタの資源管理の現状について私見を述べます。

ハタハタ沖合豊漁で見解割れる 資源対策協議会
今季の沖合底引き網漁の豊漁を受け、漁協関係者はハタハタの資源量が、県水産振興センターの推計を大きく上回る可能性を指摘し、漁獲枠を超えた後も特例的に漁業者が漁を継続できるよう求めた。資源保護への悪影響を懸念するセンターは否定的な見方を示した。協議会が先月決めた2016年漁期(9月~17年6月)の漁獲枠は昨季と同じ800トン(沿岸漁480トン、沖合漁320トン)で、過去18年では最低水準。
http://www.sakigake.jp/news/article/20161123AK0011/
季節ハタハタ漁、男鹿中心に低調 「本隊接岸の実感ない」
秋田県の今季の季節ハタハタ漁が低調だ。県水産振興センターによると、13日時点の漁獲量は約240トンで漁獲枠480トンのほぼ半分。漁は既に終盤だが、男鹿市沿岸を中心に水揚げが振るわず、市内の漁業関係者は「大きな群れが来ないまま終わってしまうのか」と困惑している。
http://www.sakigake.jp/news/article/20161219AK0005/

「ハタハタは豊富にいるけれども、海洋環境の影響でたまたま沿岸に来なかった」ということになっているようです。本当にそうでしょうか。ハタハタ資源が豊富な時代は、秋田県でも1万トンを超える水揚げが安定してありました。また、年による凸凹はあるにしても、漁獲量が比較的安定していました。確かに、獲りやすい場所に、魚の群れの密度がまとまるかどうかで、毎年の漁獲量は変動します。問題は、近年は変動のベースとなる水準があまりに低いことです。また、魚の量が減ると、分布が狭まり、年による当たり外れが大きくなります。環境条件がかみ合わないと漁獲量が激減すること自体が、魚が少ないことの証なのです。ハタハタ資源は依然として低水準であり、漁獲枠を期中改定して増やすような状況ではないと考えます。

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(http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1226650318985/files/hatasuii.pdfより引用)

研究によって、群れを作って回遊する魚は、資源量が減ると群れの大きさを維持したまま、群れの数が減ることがわかっています。巻き網、トロールのように、魚探やソナーで魚群をピンポイントで一網打尽にできる漁業は、資源が減ってもその影響をあまり受けません。とくに県をまたいで広範囲の漁場を利用できる沖合漁業の場合は、船頭の腕が良ければ、本当に魚がいなくなるまで、水揚げをすることが出来ます。一方、漁場が限定された沿岸漁業は、資源が減った影響はまともに被ることになります。沿岸漁業者は、漁獲規制を恐れて「今年はたまたまとれなかっただけで魚はいる」と主張し、規制に反対するケースがほとんどです。規制が導入されない結果として、大規模漁業が魚を獲り尽くすのをアシストし、自分たちの獲り分を減らしているのです。

資源の持続性を考えると、最低でも初期資源の20%程度の水準は維持したいところです。本来であれば、秋田県でも3-5千トンぐらいは安定してとれる水準までは、資源の回復を優先すべきです。予想より魚が多いのであれば、すぐに獲ってしまうのでは無く、資源回復に回すべきです。トロールでまとまった水揚げがあるたびに漁獲枠を増やしていたら、いつまで経っても資源は回復しません。

以上より、秋田県水産振興センターの漁獲枠を増やさないという判断を私は支持します。とはいうものの、他県や沖合トロールが水揚げをしているのに、秋田の漁業者だけが我慢をするのは難しいことも理解できます。秋田県水産振興センターは大変なご苦労をされただろうし、漁業関係者にしても苦渋の決断であったでしょう。最大の漁獲県として、率先して規制をするという姿勢には頭が下がります。

本来であれば、日本海のハタハタの資源回復は、資源を利用している全都道府県の漁業者が、共通の枠組みで行うべきです。県をまたぐ回遊資源の規制は国(水産庁)の役目です。国が音頭を取って、長期的な回復計画を策定し、一時的な減収補償をしつつ、スピード感と強制力をもって漁獲規制をすべきと考えます。

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