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平均工賃は月額2万円以下… 「一億総活躍社会」の実現に不可欠な障害者の就労支援とは

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参加者の熱に溢れた日本最大の障害者就労支援フォーラム

パネルディスカッション「働くこと、雇うこと⇔雇ってもらうこと、働いてもらうこと 〜それぞれの課題と責任、希望と期待〜」の様子(撮影:畠山理仁)

12月3日、4日の2日間、東京のベルサール新宿グランドで「就労支援フォーラムNIPPON2016」が開催された(主催:日本財団、共催:就労支援フォーラムNIPPON実行委員会(一般社団法人日本精神科看護協会、一般社団法人日本作業療法士協会、公益社団法人日本精神保健福祉士協会)。

 このイベントは、全国各地で障害者支援に取り組む事業所、企業、自治体、行政、医療、研究・教育機関など様々な職種の関係者が参加する日本最大の催しだ。2014年、2015年に続いて3回目となる今年は約1500人が参加。メイン会場で開かれた3つのパネルディスカッションとシンポジウムだけでなく、12の分科会も開かれた。

初日のメイン会場に入って驚いたのは参加者の多さと真剣さだ。ホールにはびっしりと椅子が並べられ、空席はほとんどない。千人以上の参加者たちは登壇者たちの言葉を一言一句聞き漏らさないよう、集中して壇上を見据えていた。

また、イベントの合間の休憩時間には、メイン会場内に設置された全国約50の事業所の取り組みを写真や文章のパネルで報告する「ヒント! パーク」(実践報告ポスターセッション)で報告者と参加者との対話も生まれていた。恥ずかしながらこのような取り組みを知らなかった筆者は、熱のこもった会場の雰囲気に身の引き締まる思いだった。

会場内に設けられた「ヒント!パーク」の実践報告ポスター

障害者雇用の 現状を知ることから始める

「障害の有無にかかわらず、すべての国民が共生する社会」

 これは2012年に公布された障害者総合支援法の理念である。しかし、日本の現状はいまだにこの理念からは程遠い。それどころか、障害者の就労をめぐる環境についての現状認識が社会全体で共有されているとは言い難い。

障害のある人は全国で790万人いる。そして障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスには、「就労移行支援事業」、「就労継続支援A型事業」、「就労継続支援B型事業」の3つのタイプがある(※注参照)。フォーラム参加者であれば「常識」ともいえる基本的な知識であり、会場では普通に「移行支援」「A型」「B型」という略称が用いられていた。しかし、門外漢の筆者にはまったく馴染みのない世界の言葉だった。無意識に「自分とは関係ない世界のこと」と思い、情報収集を怠っていた自分を大いに恥じた。

※注(事業所数、利用者数はいずれも国保連データ平成28年7月)
【就労移行支援事業】一般企業への就職をサポート。全国に3201事業所。利用者は3万2千435人
【就労継続支援A型事業】一般企業への就職が困難な人と最低賃金を保障する雇用契約を結んで働く場を提供。全国に3340事業所。利用者6万934人
【就労継続支援B型事業】一般企業に雇用されることが困難な人と雇用契約を結ばずに就労や生産活動の機会の提供、知識や能力向上のために必要な訓練などを行なう。全国に1万321事業所。利用者21万6千237人

鳥取県と日本財団が進める「工賃3倍モデル事業」を
紹介するパネル

 そんな筆者が障害者の就労の現状を知ろうとして驚いたことがある。それは「B型事業」で働く21万人の平均工賃が、全国平均で月額1万4千800円 ほどしかないことだ。B型は雇用契約を結ばないため最低賃金の適用外であり、報酬も給与ではなく「工賃」と呼ばれる。しかし、これでは障害者年金6万5千円とあわせても、自立した生活を送るのは困難な状況だろう。政府が掲げる「一億総活躍社会」の実現には、まだまだ乗り越えるべき壁がある。

日本財団はこうした課題を解決するために、2015年4月から「工賃3倍増」を目指した就労支援「はたらくNIPPON!計画」を始動した。その柱の一つが今回の就労支援フォーラムの開催であり、鳥取県を皮切りに全国100か所を目標に進めている高賃金の障害者就労モデルの構築である。

法定雇用率達成さえ達成すればよいのか?

日本では、障害者雇用促進法により「常時雇用している労働者数の2%」以上の障害者を雇用することが義務付けられている(※民間企業の場合。国、地方公共団体等は2.3%、都道府県等の教育委員会は2.2%)。これを「法定雇用率」というが、平成27年に厚生労働省が公表した数字では、法定雇用率達成企業の割合は47.2%で、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新した。

ちなみに法定雇用率を達成できなかった事業所(常用労働者100人超)には、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納付しなければならないことになっている。

しかし、現実的には雇用した障害者を「戦力」として位置づけている企業はそれほど多くない。法定雇用率達成のための義務として雇用している企業が多いのも現実だ。

株式会社ダックス四国障がい者雇用責任者・且田久美氏(撮影:畠山理仁)

初日に行われたパネルディスカッション「働くこと、雇うこと⇔雇ってもらうこと、働いてもらうこと 〜それぞれの課題と責任、希望と期待〜」の座長を務めた株式会社ダックス四国の障害者雇用責任者・且田久美氏は、就労支援事業の現実や問題点をストレートに指摘して議論をリードした。

「厚生労働省の定義では、A型はフルタイムで生業としての仕事を与えて訓練できる場を作るというもの。それを愚直に守ってA型を14か所作ってきたが、周りを見渡すと(就労時間が)3時間〜5時間のA型ばかりで、8時間フルタイムで働いてもらっているA型事業所は見当たらない。ポストにもお仕事募集のチラシが入るが、『障害者手帳を持っている人募集』とあるだけで仕事内容が書いていない求人募集がある」(且田久美氏)

 これは一般企業では考えられない求人だ。法定雇用率達成のために採算や事業の整合性を度外視した事業者が出るのは、社会が無関心なことにも原因があるだろう。

[ PR企画 / 日本財団 ]

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