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香港の輝きを奪う中国 - 岡崎研究所

 香港の評論家で、分離運動議員を支持している練乙錚が、11月13日付ニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説で、もう少し大衆に寄り添う人物を次期行政長官に選び、雰囲気を非政治化すべきと主張、同時に根底にある香港の特別な自治権を尊重するという問題は解決されておらず、香港の将来は暗いと予測しています。論説の要旨は、次の通りです。

 9月の立法会議員選挙から2カ月、雨傘運動から2年が経ち、香港はまた重大な政治危機に直面している。中国が香港の内政に対して前例のない介入を行い、新しく選ばれた2人の独立派の若い立法会議員の議席を奪った。この決定は、香港の法院が判断を下す前になされ、中国が自らの好まない選挙結果を破棄し、立法会を行政に従属させ、独立志向を持つとされる司法を抑え込む用意があることを示している。

 9月の選挙において香港政府はすでに複数の活動家を不適格として選挙参加資格を剥奪していたが、出馬できた候補者から6名が当選した。そのうち2人は、その就任宣誓において好戦的な言葉を口にし、北京はそれを挑戦的であると宣言、香港の梁振英行政長官は直ちに行動を開始した。梁は、来年の任期終了を前に留任を目指しており、北京の支持を得ようとしている。本来、行政府の法院に対する処分要求は過度の介入である。しかし、梁は、そうすることにより行政長官候補者の中で抜きん出た存在になろうとしているようだ。

 法律の枠内では法院に対し政府にとり有利な決定を下させるのは不可能なため、梁は、北京の全国人民代表大会常務委員会が直接『香港基本法』について解釈するという非常手段に訴えた。常務委員会は、上記2人の議員は法律に違反しているとの解釈を発表した。これは、北京が公然と『基本法』違反を理由に、香港の民主的選挙の結果を破棄した初めてのケースである。香港の多くの有権者は、これを、香港政府が北京の言いなりに香港の合法的な自主権を弱めようとしていることの証であると見ている。

 北京は困難な選択に直面している。強硬な態度で2名の議員を排除した後、もし北京が十分に賢いならば、よりソフトな路線に切り替え、梁とは異なり、大衆から孤立していない人物を次期行政長官に選び、雰囲気を非政治化すべきである。

 1997年以来、香港は政治的な停滞状態にあり、時折怒りが爆発する。2003年には、50万もの人々がデモを行い、国家治安条例の制定や自由の制限に反対して、当時の政府を倒した。2014年には、数万人のデモ参加者が主要道路を数週間にわたって占拠し、真の政治改革を要求した。これら二つの事例において、根底にある香港の特別な自治権を尊重するという問題は結局解決されていない。当局はただ目の前の衝突を抑え、鎮圧したに過ぎない。同様のことはまた発生するだろう。そして、引き締めの度に、東方の真珠と呼ばれたこの都市は徐々に輝きを失うだろう。

出典:Yi-Zheng Lian[練乙錚],‘Beijing Tightens Its Grip in Hong Kong Again’(New York Times, November 13, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/11/14/opinion/beijing-tightens-its-grip-in-hong-kong-again.html

 中央の指導部にとり、香港問題はほぼ100パーセント国内問題です。中国の国際的な地位が固まるとともに、ますますそうなっています。香港の特別な自治権をどう扱うかは、そもそも共産党の国内統治の基本姿勢に関係するものであり、容易に新疆やチベットに波及します。それゆえ、基本的には厳しめに対応するしかありません。鄧小平は将来の台湾統一も念頭に置いて香港問題を解決しました。香港をうまく処理することで中国の国内の経済建設に香港を活用するとともに、台湾を大陸に近づける誘因にしたいと思っていた節があります。

国内の政局に影響する

 しかし、香港の状況は、台湾をますます大陸から遠ざけるものとなっていますが、台湾を考慮し過ぎた対応をすれば国内に跳ね返ります。ましてや台湾問題も香港問題も、たちどころに国内政局に影響を及ぼす類いの問題です。国内政局が安定からまだほど遠い状況にある現在、どうしても締め付けの方向に向かわざるを得ないのでしょう。

 しかし、香港問題の本質は、香港問題が中長期的には、中国国内においてもいずれ直面しなければならない課題だという点にあります。すなわち、現代化した社会をどう統治するかの問題なのです。中国国内においてすでにその兆しはあり、いずれそのうち、正面から取り組まなければならない問題となるでしょう。こういう視点で香港問題を考えていけば、もっと上手な解決策もあり得るはずですが、党中央にまだその余裕はないように見受けられます。

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