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「勝ちましたやんか〜」パロディ腕時計"フランク三浦" 保証規定に込めた時計屋の想い

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1個5000円前後と手頃な価格で、思わずクスッと笑ってしまう遊び心たっぷりの腕時計「フランク三浦」。スイスの高級腕時計「フランク・ミュラー」と商標を巡り係争になったことは記憶に新しい。

この「フランク三浦」を手がけるディンクス(大阪市)の下部良貴社長に話を聞けるチャンスが舞い込んできたのは11月のとある日。新幹線に飛び乗り大阪・鶴橋へと向かった。

社員の息抜きから生まれた「フランク三浦」

下部良貴社長

-「フランク三浦」はどのように誕生したのですか?

下部:元々僕らは、セレクトショップに置いてある3万〜5万円ぐらいのOEMブランドの時計や、自社でオリジナルの機械式の時計を作ったり、時計の並行輸入をやっておったんです。

機械式時計って、0.数mm幅がズレただけで、金型のパーツを全部やり直さなアカンとか、針が0.何mm短かかったとか、すごくストレスが溜まる商品なんですよ。

かなりストレスが溜まっていた夜に、お菓子食べながら、「なんか、おもろいことないかなー。『フランク三浦』とかあったら、おもろいんちゃうかなー」とポロッと言ったら、そこにいた4人のスタッフのうち、1人が爆笑したので「よし作ろうか」と。「えー!?」みたいな顔されて。

-それはいつのことでしょう。

下部:2010年に企画したんですかね。それまで5000円以下の低単価の時計は作っていなかったんですけど、ちょうどそのタイミングで、そういう時計を作る業者の社長さんが来て「なんか仕事ないの?」と。

サブプライムショックが過ぎたあとで、不景気だったんですね。僕がマジックでデザインを落書きして、「これ、ミニマムで作って」って言うて渡して、そこからです。

フランク三浦が出来上がってきて、営業マンが売りに行くじゃないですか。今まで、真面目な時計ばかりやったんで「どうしたの?頭がおかしくなったの?こんなん売れるわけないやん」って言われましたね(笑)。

-『フランク三浦』はあくまで本業ではないと。

下部:僕含め社員の息抜きになればいいなと思ってやっているんです。これに追われると本業の高額帯の時計販売に影響が出ますので。

-売り上げの規模的には?

下部:全体の売上に占めるパーセンテージは1桁ですね。全然売れへんでも、あげたらええかなぐらいでやってます。

東京・銀座の博品館が最初に目をつけた

下部:ネットショップでパラパラ売ってたら、一番最初に銀座・博品館の社長さんから連絡があったんですよ。最初、バイヤーの人からかかってきて。

大阪の人間って、博品館さん知らないじゃないですか。十三にも銀座ってありますし、戸越銀座もありますし。「そんなんええすから、先に金を振り込んでください」って冷たく言ったんですよ。

それはそこで終わって、もう1回かかってきて。「どうしても、うちの社長が…」って。「だから、もうええすから、FAXで注文くれて、そのまま送金してくれたらええっすよ」って感じでやって。

それでも何回もかかってくるから、周りに聞いたんですよ。東京の人とかに。「博品館ちゅうところから何べんも電話がかかってくるけど、なんすか?」って言ったら、「下部さん、普通は絶対に取引なんか出来ない大手だから。それは絶対お願いした方がいいよ」と。

でも、あれだけ無下にやっといて、こっちから言うのアレかなと思っていたら、今度は社長の直属の方から連絡が来て「1回社長がお会いしたい」と。「必ずオーダーはするし、うちのことをちょっと調べていただけますか?」と。

その時はもう調べた後やったんで、「大変失礼をいたしました。すぐに馳せ参じます」ということで行って(笑)。リアル店舗では銀座の博品館が最初でした。言い値で全種類置いてくれたら、毎週注文があって。

なんで博品館さんで売れたかっていうと、銀座で遊び歩いている人達って、クラブに行くときにお花買ったり、おもちゃ買ったりするじゃないですか。

-博品館のある銀座8丁目は高級クラブ街でしたね。

下部:最初に1本買っていってウケたから、次の日にお店全員の分をってドバっと買うんですよ。

-クラブのお客さんにとっては高くない買い物。

下部:当時、1個4000円ぐらいやったんで。20本買うても、10万円しないじゃないですか。高いお花買って何万円も使うより、これはインパクトあるでってのが、ツボにハマったんやと思いますね。それをきっかけに、富裕層と言われる方にブームが来ました。

-このパロディーの面白さが分かるのは、フランク・ミュラーのデザインが頭に入っている富裕層だったと。

下部:僕は完全オリジナルを主張しているので、それはコメントできないです(笑)。

-そうでした(笑)。

独特の「保証規定」にこめられた時計屋の想い

-フランク三浦の保証書。だいぶ攻めてますね。
[フランク三浦保証書兼取り扱い説明書兼保証規定]

フランク三浦は全てこちらの規定に判断に基づいて対応させていただきます。

●外装について 全て手作りで作っているため外装に多少の傷、文字盤に埃、異物、指紋まれにちぢれ毛などか混入しておりますがこれらは全て許容範囲内とお考えください。
ましてや裏ブタやベルトの傷などは当たり前のように付いておりすが苦情や返品、返金には一切応じることかできませんのでご了承ください。

●防水について フランク三浦は基本的に全て完壁な非防水です。ダイビングや水泳に使用されるのは勝手ですが確実に水分が浸入して時計が破壊されます。
汗、気圧、温度変化などありとあらゆる水気や空気中の水分にすらに耐えられませんのでガラスの曇りや水分の浸入には一切対応が不可能だとお考えください。30度以上の高温にも全く耐えられません。

●磁力、磁気について パソコン、モーター、ドライヤー、携帯電話など磁気を発生するモノの近くに置かないで下さい。すぐに壊れますし、磁気による故障は保証対応ではありませんのでご了承ください。

●ショックについて 落下などのショックによる耐久性は全く持ち合わせておりません。2センチ以上の高さから落とした、ほんの少し壁やドアに接触したなどで故障した場合も全て自己責任です。保証は適応されませんのでご了承ください。

●電池について 全てモニター電池です。電池切れはお近くの時計屋さんで交換を実費で行って下さい。購入後すぐに電池が無くなったとしても保証対応ではありませんのでご了承ください。

●ウレタンベルトに調整用の穴が開いていない⇒ご自分で開けて下さい。

●使用による皮膚のかぶれや湿疹などが起きた場合、直ちにご使用をおやめ下さい。時間は携帯電話・スマホ、駅の時計などでお確かめ下さい。

●一日の遅れや進みか大きい⇒電波時計を参考に毎曰時刻合わせして下さい。

●保証期間はご購入日より90日で、対象はムーヴメントのみとなります。

●送料負担につきましては保証期間内であっても全てお客様負担となります。
保証書紛失、販売日が明記されていないなどの場合、保証期間内であっても無償修理を受けることが出来ません。また修理が不可能の場合、代品交換もしくはあきらめて頂くことになりますが、ご了承ください。

下部:僕が30秒ぐらいで打ち込みました。ワーッと打って、清書してって感じです。これでもだいぶ縮めたんですけどね。

これはちゃんとした時計を作っている時にもらったクレームを元にしています。防水って書いてあるから風呂に入って、水が入って、着払いで送ってきて新品に変えろみたいなことを言ってくる人が年に数人いるんですよ。それも執拗になんどもなんども電話をかけてくる。

日常生活防水って水の中には入れないんですね。10気圧防水って書いてあっても、水道の蛇口から水をガッとかけると、実際のところ10気圧以上の水圧がかかってしまうんです。

クロールに耐えられるレベルとなると、20気圧ぐらいなんですよね。そういうのが全く一般の方に伝わっていなくって。

1万5000円の時計をルーペでず〜っと見て、「ここに点があるからやり直し」というエンドユーザーさんもホントにいるんですよ。だから、僕はそのストレスを全部ここにぶち込みました。

-そういうことだったんですか。

下部:実際のところ、フランク三浦に防水性能はあるんです。日常生活の弱防水と防水用のゴムのパッキンを入れているので、すぐに水が入ったりはしないんですけど。ネットでみんな防水実験してるんでググってみてください(笑)。でも、どんなことがあっても、水が入ったら自己責任ねって。

落下にしても、ほとんど当ててないのに割れてたって人を何人も経験しています。「タダで替えろ」って。「替えるか、ボケー!」と言いたい気持ちを抑えて、ここにぶつけている。

-あの保証書の文言にはそんな背景があったのですね。

下部:1000万円の時計でも2000万円の時計でも、非防水の時計はいっぱいあるんです。「そんなことも知らんのか」ってここまで出かけてるんですけど、普段は絶対に言えないのでここに書いているんですよね。

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