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読んだ本と振り返る2016年/人工知能は本当の「知」になりうるか?

今年は人工知能に関する話題を多く見聞きしたような気がする。
特に印象的だった本が、将棋ソフトの脅威にさらされる将棋界を描いた一冊。

もともと人工知能が人間の仕事を奪うのでは?という危機感から、
危ない職種ランキングなどが取り上げられて話題になった人工知能の未来。
人間同士の対局を行うことの存在意義を自問する棋士たちの苦悩は興味深い。

実は目新しいテーマではなく、アメリカでは2011年頃から、
金融危機後の景気回復の過程で雇用拡大がなぜか?と議論になり、

技術革新のスピードに人間が時代遅れになってしまい、
人間にしかできない仕事が急速に減少しているとする考えが主流のようだ。

ただ既存の「知」の解析により最適解を導くのが人工知能と捉えるなら、
もう少し時をさかのぼった、約10年前のベストセラーを思い出される。

ジェームズ・スロウィッキー「みんなの意見は案外正しい?」は様々な例をあげ、
群衆の知恵は専門家の知恵に劣らず、むしろはるかに勝ると主張していた。

だがすでに1972年にノーベル経済学賞を受賞したケネス・アローが「不可能性定理」で、
個々人の合理的な選好を集計しても社会的に好ましい結果に至らないと証明している。

知を集めて解析したところで、将棋のようなゲームの勝ち負けは争えても、
そもそも正解がはっきりしない世の中の大半の問題に適応できるのだろうか?

もっと言えば「正しさ」は本来、個々の主観の枠から出ることはできず、
客観的な「正しさ」なんて、そもそも存在しないようにも思える。

もしかするとヴィトゲンシュタインのメッセージはそういうことなのか?

「世界の意味は、世界の外側にあるにちがいない。世界では、すべてが、あるようにしてあり、すべてが、起きるようにして起きる。世界の中には価値は存在しない。もしも仮に価値が存在しているのなら、その価値には価値がないだろう。」
---ヴィトゲンシュタイン「論理哲学論考」6.41

そしてこの世界に「客観的な」意味や価値が存在しないことを忘れ、
人工知能によりビックデータを解析することでそれを得ようとするのなら、
いよいよハンナ・アレントが1950年代に警告した未来がやってくる?

「私たちの思考の肉体的・物質的条件となっている脳は、私たちのしていることが理解できず、したがって、今後は私たちが考えたり話したりすることを代行してくれる人工的機械が実際に必要となるだろう。技術的知識という現代的意味での知識と思考とが、真実、永遠に分離してしまうなら、私たちは機械の奴隷というよりはむしろ技術的知識の救いがたい奴隷となるだろう。」
---ハンナ・アレント「人間の条件」P13

とはいえ人工知能に対しては過度な警戒をするよりも、
新しいものを生み出すチャンスと前のめりの姿勢の方が楽しい。

引き続きこの分野の本を読みあさっていきたい。

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