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オスプレイ墜落の余波 - 織田重明

「なんてタイミングなんだ」

 12月13日夜、那覇市内で一緒に飲んでいた自民党の沖縄県議会議員は、そう呻いた。米海兵隊普天間飛行場に配備されているオスプレイが墜ちたらしいという一報が入った瞬間のことだ。

 その前日に、名護市辺野古の基地建設をめぐる工事で、国と県が争っていた訴訟で、県の敗訴が確定的なことが明らかとなったばかり。県議会で野党として翁長雄志知事を追及してきた自民党の県議らには高揚感があった。それを打ち砕くかのようなニュースに、思わず声を上げずにいられなかったのだ。

 墜ちた場所は、沖縄本島北部の米軍キャンプ・シュワブ沖、あるいは津堅島の沖ではないか。オスプレイは不時着したのか、墜落したのか。情報が錯綜するなかで、私も含めたその場にいた関係者が手分けして、情報を集めた。米軍は、不時着と説明。場所は、名護市安部沖のリーフの上、剰員5名のうちケガ人が2名。住民への被害はなし。

 そうした情報が集まり、住民の被害がなかったことにまずはひと安心したが、翌日以降の知事やメディアの動きを想像すると、これはたいへんなことになったと理解した。飲み会もすぐに切り上げ、銘々職場や自宅に戻った。

 そして、翌朝の地元紙。琉球新報、沖縄タイムスともに、一面に、大きな見出しでこの事故を詳報。琉球新報が「オスプレイ墜落」、沖縄タイムスが「オスプレイ不時着」と表現が異なるが、どちらも入稿が間に合った2版では、大破したオスプレイの写真が掲載された。朝からNHKをはじめとするテレビ局は、ヘリからの空撮映像で、リーフの上でバラバラになったオスプレイの無残な姿を流し続けた。米軍側は不時着水と説明をしても、その写真や映像からは、墜落という印象しか受けない。

 さらに、オスプレイが名護市安部沖に「墜落」したのと同じ晩に、普天間飛行場に別のオスプレイが胴体着陸していたことも明らかになった。機体の不具合で前輪が出なかったためだというが、なんとも間の悪い。

沖縄の人を守った

 この日、在沖米軍のトップにあたるニコルソン四軍調整官(中将)は記者会見を開いて地元メディアに事故原因を説明した。それによると、事故を起こしたオスプレイは、沖縄本島東側の海上で、空中給油を受ける訓練をしていた際に、オスプレイのプロペラが給油ホースと接触するトラブルが起きたという。それによってプロペラを損傷したオスプレイは、飛行が不安定になり、住宅地に囲まれた普天間飛行場ではなく、名護市のキャンプ・シュワブに緊急着陸しようとして果たせず、パイロットの判断で、不時着水したという。

 「パイロットの判断が沖縄の人を守った」「あれだけの損傷で着陸を試みられたのは、オスプレイの頑丈さを物語る」「事故はシステムに関係ないことをもう一度申し上げる」

 12月15日付琉球新報によると、集まった記者らを前に、ニコルソン四軍調整官はそう力説してみせ、謝罪の言葉が出たのは、会見の開始から25分経ってから。「誠に遺憾で、申し訳ない思いだ」。記者からの「謝罪はないのか」との問いに引き出される形で述べたという。

 ニコルソン四軍調整官は、抗議に訪れた沖縄県の安慶田光男副知事に対しても、「パイロットは住民にも住宅にも被害を与えなかった。パイロットの素晴らしい行動は感謝されるべきだ」とテーブルを叩いてまくし立てたそうだ。

 在沖米軍トップの立場としては、事故原因はあくまでも訓練上のトラブルであると強調することで、オスプレイが欠陥機であるかのような報道がされることに釘を差しつつ、被害を最小限にとどめたパイロットの判断をたたえたい気持ちなのであろうが、この対応は事故発生で高ぶっている沖縄県民の感情を鎮めるには効果的ではない。翁長知事は、14日に記者らに対してニコルソン氏の発言について「たいへん高圧的」と表現した。

 15日付の沖縄タイムスは「海兵隊撤退に舵を切れ」と題した社説で、ニコルソン氏をこう批判する。

 「この発言に見られるのは、典型的な『軍人の論理』『軍隊の論理』である。県を代表して抗議した安慶田副知事に逆ギレしたということは、四軍調整官の資質に著しく欠けることを自ら暴露したようなものだ」

知事に追い風となるのか

 今後、オスプレイが欠陥機であるとの言説が再び高まるだろう。15日付の琉球新報社説はこう指摘する。

 「オスプレイは試作段階を含めて墜落事故が相次ぎ、37人が犠牲になっている。この欠陥機が飛び続ければ、墜落などの重大事故は避けられない。安全対策を尽くすといっても新たな犠牲を防ぐ担保にはならない。沖縄の空から消えてもらうしかない」

 翁長知事も14日に記者らに対して今回の事故を「起こるべくして起きた」と述べている。もともと欠陥機だと言いたいのであろう。

 翁長知事は、米軍北部訓練場をめぐり、東村高江地区でのヘリパッド建設と引き換えでの過半の返還を「苦渋の決断」と述べて容認する姿勢を見せて地元紙や与党の革新各党から激しく批判されるなど、このところ厳しい状況に追い込まれていた。4000ヘクタール近い土地を返還されることに、県知事として反対とはいえないからだ。だが、県議会では野党である自民党の県議らから、辺野古の基地建設にノーと言ってきたこととの整合性がつかないことを指摘され、苦しい答弁を繰り返してきた。

 そのなかでの今回の事故である。冒頭で呻いてみせた自民党県議は、「翁長知事は強運の持ち主だ」とも言っていた。この発言は、不謹慎かも知れない。だが、沖縄では事故をきっかけに再び反基地の動きが高まるのは必至だ。そうなれば、翁長知事が再び求心力を取り戻すことになるだろう。

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