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世界企業独自ランキングが明かす「グーグルとリクルートの共通点」とは

名和高司=談 荻野進介=文

ヒートテックは無駄な事業か

とある夕刻、東京・永田町にある出版社ディスカヴァ―・トゥエンティワンのセミナールームがごった返していた。30代から60代のスーツ姿の男性が7割といったところだ。

お目当ては、同社とアカデミーヒルズのコラボレーションセミナー。話題となっている書籍の著者を招き、書籍では伝え切れなかった内容を講義形式で話してもらう同セミナー、その日のゲストは、同社から『成長企業の法則 世界トップ100社に見る21世紀型経営のセオリー』を上梓した名和高司氏であった。

一橋大学大学院教授であり、世界のさまざまな企業をクライアントに持つトップコンサルタントでもある。

熱気を帯びたセミナー。

司会者に促され、にこやかに壇上に立った名和氏は、450ページを超える大著の要点を言葉巧みに説明していく。コンサルタントとして各企業に深く入り込んでいる氏ならではの内幕エピソードがぽんぽんと飛び出した。これから同書を紐解くという人はもちろん、既に通読した人も楽しめる内容で、あっという間に予定の1時間が過ぎた。

講演後、聴衆からの質問も続出した。独自の指標(詳細は後段、名和氏のインタビュー参照)から導き出した世界トップ100社にランクインした日本企業のうち、20位と、最も順位が高かったのがファーストリテイリングだったためか、同社に関する質問が相次いだ。

そのひとつが、「ザラやH&Mといった海外のファストファッション大手と激しく競い合い、競馬で言えば、第3コーナー、第4コーナーの終盤を激走している最中なのに、繊維メーカーの東レと組んでヒートテックを開発するなど、パドックで馬を育てるような悠長なこともしている。経営資源の無駄遣いではないか。これについてどうお考えか」というもの。それに対する名和氏の答えはこうだ。

「ライバルと激しく競いつつ、ライバルがやらないような地道なトライアルも欠かさない。その両方をやるのが、ファーストリテイリングの強さだ。後者のトライアルの例として私がいま注目しているのが、ユニクロに次ぐカジュアルブランド、GUの躍進だ。そのGUを率いているのが、かつて野菜事業で大赤字を出した柚木治氏であるのもまた興味深い」

ファーストリテイリング以外に、どんな企業が世界トップ100社に入っているのか。どんな基準でトップ100が決まったのか。ランキングされた企業に共通項はあるのか。以下、セミナー後に名和氏が語る。

トップ100社は優秀投資先100社

バブル崩壊後の「失われた20年」、日本はなぜ成長できなかったのか、どこに問題があったのかを探るため、2013年に『失われた20年の勝ち組企業 100社の成功法則』(PHP研究所)を上梓、1990年から2010年の20年間に成長した日本企業ベスト100社を掲載しました。今度はその世界企業版を、ということで、書き上げたのが、本書です。

肝になる世界トップ100社のランキング化にはボストン・コンサルティング・グループに全面協力を仰ぎました。

具体的には、2014年時に1兆円以上の売り上げがあった株式公開済み企業を対象に、2000年から2014年の間の1:売上高成長率、2:株価成長率、3:平均利益率の3つの指標を得点化(配分は1:40%、2:40%、3:20%)し、作成しました。

1位がダントツの得点でアメリカのアップル、2位がオーストラリアの食品・生活必需品小売のウェスファーマーズ、3位がイギリスの食品・タバコメーカー、インペリアル・タバコ・グループとなりました。



国別では41社がアメリカ企業でトップ、日本企業は20位のファーストリテイリングを筆頭に10社がランクインし、国別では2位となりました(リスト参照)。

ご留意いただきたいのは、これは過去15年の“バックミラー”で確認した成長企業のリストであるということです。未来永劫、成長し続ける企業はありませんから、15年後に同じ手法でリスト化したら、半分は顔ぶれが入れ替わると見ています。

ただ、15年という中期で見ているので、業績の浮き沈みが激しい、異常値の企業はうまく取り除かれているはずです。そういう意味では、投資家の目線で見た「世界の優良企業100社」リストでもあると自負しています。

30年経っても確実に企業価値がある企業にしか投資しないのが、著名投資家のウォーレン・バフェットです。そのバフェットになったつもりで、世界の企業を見てみたいというのが、この本を書いたもう一つの動機でした。

就職人気ランキングとは大きく異なる顔ぶれ

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 名和高司氏

100社のうち、順位が高い企業ほど、「成長」度も高いわけですが、逆にいえば、無理のある成長をして生き急いでいるのかもしれない。そう考えると、100社のなかでも、上位20社より、持続的成長を続けている下位20社のほうが健全という見方もできます。その代表格が89位につけたスイスのネスレでしょう。

企業にとって成長は大切だけれども、非持続的な成長では意味がありません。業績のアップダウンが激しい企業はマイナス評価にする、といった指標を入れるべきだったかもしれません。

100社を業種別に見ると、生産財が26社でトップ、その後に食品・食料・タバコが15社、医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンスが11社と続きます。

生産財企業が強いのは、業績がぶれにくいからでしょう。生産財事業には大きな設備投資が伴いますし、高い技能の蓄積も必要です。新興国の企業が頑張っても、なかなか真似できないし、追いつけない。しかも消費財と比べて共通化が容易なので、グローバル化しやすい。こんなところが生産財企業が強い理由として考えられます。

日本でいえば、いずれも自動車部品メーカーである96位のブリヂストン、97位のデンソーが生産財企業です。三菱ケミカル、東レ、富士フイルムも売上高1兆円は超えていたのですが、他の指標で劣り、ランクインできませんでした。日東電工も面白い企業ですが、1兆円の壁を突破できませんでした。

ランク外で注目しているのは、何といってもグーグルです。同社は2000年以降に株式公開しているので対象から除きましたが、株価から企業価値成長率を推測した「成長の角度」という指標で見ると、アップルに次ぐ2位相当という結果になりました。

同じようにランク外ですが、日本企業で注目しているのがリクルートです。こちらも株式公開をしたのが2014年なので、対象外となりました。このリクルートも「成長の角度」指標で見ると、対象外ですが、34位相当です。日本企業ではファーストリテイリングに次ぐ2位につけています。

“規制”業種は除外した

実は最初に出てきたリストには金融系や石油会社、国営会社が目立っていました。それらは国家の庇護や厳しい規制のおかげで成長しているようなものですから、本当の「成長企業」とは言えません。

そこで、規制産業・保護産業・金融系企業を外して作成したのが今回のランキングです。

これをやらないと、ソフトバンクやKDDIなど、通信系の企業が軒並みランクインします。通信業界は国からライセンスを付与されています。NTTドコモと合わせて3社の寡占が続き、各社ともそれなりの収益を上げているのは、やはりライセンスがあるからだと思います。こうした通信業界を入れると、企業努力以外の経営要素が入り込み、ランキングの公正さが保たれないと判断しました。

金融も規制産業の最たるものです。規制外のところで頑張っているオリックスのような企業は残ってほしいと思ったのですが、今回は断念しました。

こうした規制産業でも頭を使ってやんちゃに戦っている企業は番外編でランキングを作ってもいいかもしれません。ボストン・コンサルティング・グループの人たちとは指標も含め、5年後に新たなランキングを作りたいと話しています。

(後編に続く)

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 名和高司(なわ・たかし)
1957年、熊本県生まれ。80年東京大学法学部卒業後、ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得。三菱商事での機械グループ経験を経て、マッキンゼーにて約20年間コンサルティングに従事。多様な業界において成長戦略、構造改革などのプロジェクトを手がける。2010年より現職。ファーストリテイリング、デンソー、味の素、 NECキャピタルソリューションズの社外取締役を兼務する。主な著書として、『CSV経営戦略』『学習優位の経営』『戦略の進化』など多数。

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