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週刊文春の記事について

 先日、週刊文春の記者の方から連絡があった。彼女が言うには、千葉大学医学部生3人による女性暴行事件で、容疑者のうちひとりが僕の小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』や原作を提供した同名のコミック、また、メルマガ『週刊金融日記』などに書かれている「恋愛工学」の影響を受けた、という情報を何らかのソースから得たそうだ。

 そして、その記者の方は、膨大なメルマガのバックナンバーなどから、そのような性犯罪を誘発する恐れがあるとされる文言を大量に抜き出し、私に送付してきた。

 まだ、どのような記事になるかわからないが、出版される前に、僕の考えを書いておこうと思う。論点は3つある。



1.表現の自由

 まず、そもそも表現の自由がある。殺人犯がミステリー小説を読んでいたからといって、ミステリー小説が殺人を誘発した、ということにはならない。聖書にも強姦や殺人の話は出てくるが、聖書が危ない本ということにはならない。それは、法律的な大前提である。

 しかし、僕は、法律さえ守っていれば、あるいは法律に守られていれば、何を書いてもいいとは思っていない。やはり、作品には、すこしでも社会をより良いものにしていきたい、という思いがないといけない、というのが僕の考えだ。もちろん、そんなことを直接書くのは野暮というものだ。最初から最後まで悪人が出てきて犯罪の話ばかり書いてあるような小説であっても、本当に伝えたかったのは愛だったり、人間讃歌だったりする。そんなことは一言も書かれていなくても、伝わる人には伝わる。それが、いい作品なのではないか、と僕は思う。

 実際に、小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』は、そうした文学的な一面も評価され、たとえば、歴史ある文芸雑誌である『文學界』への寄稿も依頼された。



2.恋愛工学の考えは真逆

 そもそも僕は経済やビジネス、エネルギー政策などについての本を書いており、恋愛工学は、そのうちのひとつだ。メルマガのタイトルも『週刊金融日記』であり、恋愛工学はいくつかのトピックのうちのひとつである。

 この恋愛工学に関しても生物学的なことや社会学的なことなどいろいろなことを書いている。しかし、男性向け恋愛マニュアル的な部分に関していえば、ものすごく簡単に言うと、男にとっての恋愛なんてものは運の要素が強く、どんどんいいと思う女の子にアタックして、ダメだったらその子はすぐにあきらめて、次に行けばいいだけだ、というものだ。もちろん、そのような考え方が、一部の女性たちから批判を受けているのも事実だが、しかし、だからこそ、ストーカーのようにひとりの女性に拘泥する、そして、今回の事件のように、たった一度の快楽のために大きな代償を伴う性犯罪を犯す、というのはむしろ恋愛工学とは真逆の考えである。

 また、性犯罪に関することもメルマガなどでたびたび議論されており、強姦罪などで立件され、裁判で有罪となる確率が極めて高いものは、男が複数で女が1人の場合であること、つまり今回の事件のようなシチュエーションだということも、過去に具体的に書いてある(たとえば、第89号にそのような記述がある。このように書くと、じゃあ1対1ならいいのか、と曲解される方が万が一にもいるかもしれないが、当然だが、そのような意図はまったくない)。

 実際、この事件後も、僕の小説メルマガのファンの方から、もし恋愛工学さえ知っていたらこんな事件を起こさなくてもよかったのに、という声がいくつも挙がっていた。



3.一部の表現だけを切り抜かないで欲しい

 記者から送られてきた表現の一部の切り取りは膨大だった。そして、そのリストの一番最初に書いてあったものは「挿入までしていたら、泣いていても、とりあえず、パンパンパンパンパン→ドピュッ、で良かったんですよ」というのもので、これが読者への強姦のススメの例として挙げられていた。

 僕はそんなことを書いた覚えがまったくなかった。無理矢理はダメ、性犯罪はダメ、とたびたび啓蒙してきた。僕は自分のバックナンバーを読み返し、該当箇所を見つけた。

 前後の文を読むと、こういう状況だった。投稿した男性の読者にはつきあっている恋人がいた。そして、その恋人の女友だちが、その彼に気があった。その女友だちと彼が、ふたりで食事をし、意気投合し、同意のもとでセックスをした。そこで、その女友だちは、セックスが嫌なのではなく、行為中にその彼の恋人のことを思い出し、感傷にふけりながら涙を流した、という情景だった。そこで心優しい彼が、行為を中断し、すこし気まずい雰囲気になった。その後も、男性とその涙を流した女性は、良好な関係を続けている。

 こういう出来事に対して、みんなでどうしたら良かったんだろう、と議論している場面だった。そして、様々な可能性のなかで挙げられた、ひとつの表現だけが切り取られてしまい、質問状の冒頭に載ってしまった、という経緯だ。

 僕は多くの本を書き、メルマガもかれこれ5年近く、毎週欠かすことなく書き続けてきた。膨大な過去のテキストから表現の一部を切り抜き、編集すれば、読み手にどんな印象でも与えることができる。そして、文春の記事を読んだ人々の多くが、僕の小説メルマガをしっかりと読んではくれないだろう。残念ながら、ほとんどの人の心に、ただ、恋愛工学は危ないもの、という悪いイメージだけが残ってしまう。

 一部の文言だけを切り取るのではなく、全体としてとらえて欲しい、というのが作家としての僕の願いだ。



以上。

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