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電通過労死事件の背後にはガバナンス、コンプライアンス問題がある

平成29年度の与党税制改正大綱が公表されましたが、組織再編税制にはかなり大きな改正が予定されています。最近の「攻めのガバナンス」に対応するものですが、事業再編やM&Aの手法選択にも影響が及ぶようなので、法案審議後にきちんと勉強しておく必要がありそうですね。

さて、3日ほど前のマスコミ報道で、電通さんが長年の営業の鉄則を示した「鬼十則」を廃止し、社員手帳から削除することを正式に決めたことが報じられていました。私も、11月21日付エントリー「電通過労死事件-企業行動規範を三次元で考える」におきまして、鬼十則削除に関する問題点をそこで述べておりますが、どうも報じられているところによると鬼十則は完全に廃止されるようであります。

ところで文芸春秋の今月号(2017年1月号)に、電通の元常務の方による「電通は本当に悪いのか」といった10頁ほどの論稿が掲載されていましたので、興味深く読ませていただきました。過労死事件でご遺族側の代理人をされている弁護士の方が、同誌12月号に論稿を発表されていたので、(タイトルからみても)これに対する電通OBによる反論(電通擁護論)が掲載されているものだろうと思って読み始めました。しかしその内容は、電通擁護論などといったものではなく、逆に元常務の方によるたいへん電通さんの組織に対する厳しい指摘が中心です。

一言でいえば、このたびの電通さんの不適切広告問題、過労死問題は、決して「鬼十則」に代表されるような電通さんの精神論に起因するものではなく、電通さんのコーポレートガバナンス、コンプライアンスの不全に起因するものである、ということです。鬼十則を廃棄するといったことでは到底過労死問題の再犯を防止できるものではない(それはあくまでも対外的なポーズである)、電通さんの体質を本気で変えなければご遺族の方々の期待に応えることはできない、とのこと。私が11月21日付けエントリーで懸念していたことが、電通の元役員の方から厳しく指摘されていることは、やはり社内の方々だけでは容易に変えることができない構造的欠陥がそこに潜んでいるということではないでしょうか。

どのような体質がガバナンス、コンプライアンスの課題であるかは上記文芸春秋をお読みいただきたいと思いますが、ただ私が感じたことは、元常務の方が「電通の特殊体質だ」と指摘しておられる点は、ほかの企業においても多かれ少なかれあてはまるものと確信しております。最近のDeNAさんの不祥事でも同様ですが、重大な不正リスクを認識することはできても、その不正リスクがあるからといって新規事業をストップできる企業などほとんどありません。結局はゴーサインを出さなければ利益を獲得することはできないのですね。

それでも現実には不祥事を顕在化させる企業と顕在化させない企業に分かれるのです。だからこそガバナンスとコンプライアンスの課題がそれぞれの企業に横たわっているのであり、重大な不正リスクを認識しつつもトライアル&エラーの思想で経営判断にゴーサインを出す知恵が必要になるものと思います(「そもそもグレーゾーンに侵入するくらいなら、この事業はやらない」と決定できるのは社長さんくらいでしょう・・・)とりわけ電通さんのように、現場部門と管理部門の力関係に大きな差がある企業(元常務さんの評価による)の場合には、この「知恵」がとても大切だと感じています。

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