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バロンズ:「米株を再び偉大な相場に」、はいつまで続く?

Barron's : How Long Can Trump Rally ‘Make US Equity Great Again'?

バロンズ誌、今週のカバーは「ダウ2万ドルに備えよ(Get Ready for Dow 20,000)」。米大統領選挙後にダウは13%高を遂げげ、S&P500やナスダックはそれぞれ11%、9%上昇した。上昇気流に乗る米株は、2017年もその流れを継続する公算。2017年の予想株価収益率(PER)は16倍と、2000年からの平均15倍から逸脱していない。割高感に警戒する必要もなく、トランプ新政権の政策の柱、すなわち政府支出拡大、規制緩和、税制改革——を支えに米株市場は一段高を遂げそうだ。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが注目するコラム”アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート”、今週はいつものランダル・フォーサイス氏が3週ぶりに手掛けます。米株高をテーマに掲げた抄訳は、以下の通り。

米株を再び偉大な市場に—Making U.S. Stocks Great Again.

米株を保有する有権者は、ドナルド・トランプ氏に感謝すべき借りができた。米大統領選があった11月8日から米株は次々に過去最高値を更新し、米株相場は7%の上昇を記録し時価総額で1.7兆ドルに及ぶ。今週のカバー通り、ダウが2万ドルを突破するのも時間の問題だろう。2万ドルという節目自体、通過点に過ぎない。

ただし、グラスキン・シェフのチーフ・エコノミストであるデビッド・ローゼンバーグ氏が「(トランプ氏の選挙公約を基にした)希望と信頼を基盤とした株高」と指摘する通り、足元の米株高には根拠に乏しい。確かに、今の環境は何も変わっていない。米大統領選挙を同時に行われた議会選挙で選出された議員が着任するのは2017年1月3日である。新たな米大統領と副大統領が就任する時期は、1月20日まで待たねばならない。

希望を持つ理由もある。トランプ次期大統領は、インディアナ州知事であるマイク・ペンス次期副大統領の支援も得てユナイテッド・テクノロジーズ傘下の空調大手キャリアにメキシコ移転を撤回させ、代わりに同州から700万ドルの税額控除を与えた。一方でトランプ次期大統領は、ボーイングに対し”エアフォース・ワン”の価格が40億ドルというのは高過ぎると批判。トランプ新大統領の手の内を垣間見せた。

成長や物価など経済のファンダメンタルズは、財政政策が変化しない限り現状のペースが続くだろう。強いていうなら、大統領令で対応できる規制の変更で経済に直接影響を与える可能性を残す。こうした環境を踏まえれば、経済学者のジョン・メイナード・ケインズ氏が述べたように”アニマル・スピリット”即ち非合理的な人間心理に基づく行動が足元の株高を正当化させているのだろう。少なくとも、トランプ氏が1月に1600 ペンシルベニア・アベニューにやってくれば大きな変化が訪れるに違いない。

BCAリサーチのシニアバイス・プレジデント、ピーター・ベレジン氏は以前からトランプ氏の共和党候補指名並びに米大統領選での勝利を予想した数少ない一人だ。そのベレジン氏は、保護主義の台頭が世界経済に影響を及す可能性を指摘しつつ、米国は比較的閉じられた国と言え国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は12%に過ぎず、米国へのインパクトは限定的と予想する。しかも、米国の輸出は中間財が多く米国などに再出荷されるものが多い。メキシコと中国は逆で、米国への輸出に高い関税を支払った場合に同国内の雇用に直接影響する。

ベレジン氏に言わせれば、外国製品に課された関税が米国民の負担になるとの社会概念も間違っているという。関税引き上げは、減税を通じた歳入減少を補填するだろう。関税引き上げによって米国生産者の売上が拡大し、雇用が増加するシナリオも考えられる。関税によって設備投資が損なわれるとの見立てもお門違いで、米国内の設備投資を活性化させるインセンティブとなりうる。

雇用は2015年の平均値以下が続くも、2017年には再加速?
nfp
(作成:My Big Apple NY)

短期的な経済的利点は、長期的な見通しを見逃してしまう点も否定できない。ベレジン氏は「貿易協定は政治であり、世界をつなげる地政学的な結び付きを表していた」という。世界恐慌の激震が走る1930年に成立したスムート・ホーリー法(農作物を中心に工業製品に至るまで平均関税率40%を課した法律)は、ファシズムが台頭しつつあった民主主義国家の間で国際関係を分断させてしまった

米国の繁栄を目指した保護主義は、海外での怒りを買うことも考えられよう。関税引き上げには中国が最も脆弱と考えられるが、ベトナムや韓国に波及し最終的には卸売産業を軸に世界貿易を破綻させかねない。

S&P500構成企業の利益は、法人税減税から生じた期待に応える水準を達成できない場合もありうる。そもそも、法人税率は35%ではなく実質25%という状況だ。インフラ投資拡大も、早急に対応できる案件に乏しく企業に恩恵を与えづらい。

仮にトランプ次期大統領の関税引き上げ発言がメキシコや中国から取引材料を引き出すための脅しに過ぎないとしても、いずれかの品目で実施されること必至だ。空調大手キャリアの親会社ユナイテッド・テクノロジーズが政府調達企業である通り、米大統領によるわずかな圧力に敏感に反応せざるを得ない。メインストリートにとってはグッドニュースだろうが、ウォールストリートにはバッドニュースだろう。ベレジン氏は、そう分析する。

13〜14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、25bpの利上げ(0.5〜0.75%)が確実視されている。注目はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見だろう。トランプ新政権の政策を織り込むには、時期尚早だ。FF先物市場は、2017年に2回の利上げを織り込む状況。同年6月の利上げ(0.75〜1.0%)織り込み度は50%、2017年12月の利上げ(1.0〜1.25%)織り込み度も50%となる。

市場の見方が正しければ、金融危機で引き下げた0〜0.25%から2017年末までに1%引き上げられる見通しだ。米10年債利回りは既に急伸し、9日にはBREXIT後の水準を1%超え2.462%をつけた。

米債利回りの上昇の陰に、海外中銀の米債売却が挙げられる。NY連銀に預けられている海外中銀の米国債保有高は過去12ヵ月間で1,860億ドル減少し、2.8兆ドルとなった。中国が背景にあり、人民元安阻止に向けたドル売り・元買い介入により2016年半ばのピークの3兆ドルから1兆ドルも落ち込んでいる

米債利回り上昇は、米株高の障害となっていない。ルースホールド・グループのダグ・ラムジー氏は米株高があと4〜6ヵ月続くと予想、米10年債利回りが3.25〜3.5%に届くまで深刻な悪影響を及ぼさないと見込む。市場関係者は概して、巨額の債務を抱える米経済が利回り上昇に耐えられると信じていないだろう。

——さすがにトランプ・ラリーが止まらない状況とあって、米株高に慎重な見解を寄せていたフォーサイス氏の筆にも変化が見られました。今週のカバーとの整合性を維持するためか、表立って米株が調整するリスクに警鐘を鳴らさず。ただし、トランプ新政権で保護主義に傾いた場合、世界貿易が破綻しかねないとのメッセージを送っています。景気回復期にある以上、スムート・ホーリー法が現代に甦るとは想定しづらいものの、どちらかというと悲観寄りなフォーサイス氏としてはトランプ・ユーフォリアに浸り切った人々に冷や水を浴びせたかったかのようです。

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