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オバマ流の現実主義か? 安倍首相真珠湾電撃訪問

渡辺敦子(研究者)

安倍晋三首相が今月末、真珠湾をオバマ米大統領と共に訪問することが決まった。 任期最後を飾る大ニュースだが、8年間のオバマ外交の評価は、概して一定しないものであった。ハーバード大学のS・ウォルト教授が今春Foreign Policy誌で指摘した通り、オバマの8年間中国との関係は比較的安定し、イランを含む核問題、地球温暖化問題などでは一定の成果をあげた。

だが一方で、積極的関与を控えた中東では、状況は就任当時より悪化した。この外交政策についてはここ数年来、オバマ氏はリアリストかそれともイデアリストか、という議論に発展している。本稿では、オバマ外交は現実主義外交であった、という仮定に立ち、日本にとってその意味することを考えてみたい。

オバマ氏がリアリストである、という向きの論拠のひとつは、オバマ外交がアメリカの対外的負担を最小限に抑えられる範囲で最大限の平和を追求し、そのためには妥協は惜しまない手法と解釈できる、という点にある。ここでいう現実主義とは、国際関係論の古典的な教科書による「国際関係を無政府状態と見て、国益と勢力均衡の観点から分析する理論」、単純化すれば、国際関係は常に強者が弱者を支配する場所であり、軍事力は強ければ強いほどよいという理論とは、異なる。

オバマ外交が連想させる現実主義は、目標(アメリカの安全)を見据えて、そのためには手段を惜しまない思想である。マキャベリ的現実主義と言ってよく、個々の行動は、むしろ理想主義的に見えることもある。ちなみにR・サミュエルズMIT教授によれば、日本の憲法9条とその表裏として軍事費を削ることで経済成長を最優先させた吉田ドクトリンは、マキャベリ的現実主義の産物である。つまり、この現実主義にとって軍事力は是々非々であり、一切持たないことさえ選択となるのだ。

この論法で日本に対するオバマ外交、特に広島訪問と今回の真珠湾訪問を評価すると、意外な一面が見えてくる。米国にとって、日本が太平洋の安定のため応分の負担を負うことは経済的にも軍事的にも国益である。一方安倍政権は、憲法改正を目指している。それは、政権にとっては日米同盟の強化と同義語である。広島と真珠湾訪問という2つの理想主義的行動により平和を強調し、シンボリックに戦後を終わらせることは、このような思惑をもつ双方の政権にとって利害の一致点である。

ただしこの現実主義の問題は、本質的に利己的(国内問題を優先させるという意味において)なため、利害の一致は必ずしも合意を意味しないことだ。つまり、この現実主義においては、合意によって成立つ「同盟」は、二の次である。

来年1月にはトランプ政権が発足する。選挙期間中、在日米軍撤退にも触れているトランプ氏の政策に、今回の真珠湾首脳会談はどう影響するだろうか?上記の分析が間違っていないならば、新旧大統領の政策は、実は方向性としてはさほど相違ないことになる。

一方真珠湾への日本の首相の訪問は、おそらく日本人が思っている以上に米国ではシンボリックな意味を持つ。9.11は、真珠湾攻撃になぞらえられ、オサマ・ビンラーディンは広島を引き合いにテロを正当化したのだ。だとしたら「戦後の終結」は、日本はついに、本当に、米国の敵ではなくなったことを演出するという意味において、同盟の是非について、新大統領により大きな裁量を与える結果になるかもしれない。

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