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「休眠預金法成立」―画竜点睛を欠く報道―

「休眠預金」を公益活動に使う「休眠預金活用法」が12月3日、参院本会議で可決、成立した。

私自身、産経新聞「正論」欄への計4回にわたる投稿や政治家への陳情活動など、3年間の努力が報われたとの思いがあるが、半面、メディアの報道や銀行業界の姿勢にはしっくりこない点もある。

休眠預金は10年以上出し入れがなく、名義人と連絡が取れない預金をいい、毎年の発生額は全国の金融機関で約1000億円にも上っている。これらの預金は成立した休眠預金活用法によって一旦、預金保険機構に集められ、新設される「指定活用団体」が司令塔として資金の配分先などを決定。さらに地域の実情に詳しい複数の「資金分配団体」を通してNPOやボランティア団体などに助成や融資が行われる。

休眠預金が預金者の私有財産であることに変わりなく、預金者による将来の引き出しに備え一部を預金保険機構に残すため、実際に活用できるのは年間500億円程度になる見込みである。

メディアの報道を見ると、「預金者が求めれば払い戻されるとはいえ、同意を得ないまま他の目的に流用することへの批判は根強い」といった休眠預金の実態や休眠預金活用法をめぐる議論と程遠い指摘や、「政府や指定活用団体には、資金が何に使われているのか透明性を高めることが求められている」といった「言わずもがな」の意見も目立つ。

同時に報道には、当初、「預金者の財産権を侵害する」と休眠預金の活用に反対していた全国銀行協会(国部毅会長・三井住友銀行頭取)の「(休眠預金活用法には)反対しない」、「休眠預金活用法は理解している」との趣旨のコメントも付されている。

金融機関は長年、休眠預金を雑収入として内部処理してきた。私たちの指摘がなければ、今も頬かむりして雑収入に計上していたことであろう。「国民の大切な預金なのでいつでも返還します」と言いつつ、金融不安の折には多額の国家資金(国民の税金)の支援を受けながら雑収入として処理してきたのである。3年前に内閣総理大臣宛に出した質問趣意書の回答でも、この対応方針が銀行協会の内部で決定されたことが明らかにされている。

同時に質問趣意書に対する回答では、わが国の銀行預金口座が12億口座にも上っている事実も明らかになった。これはバブル期に金融機関が展開した口座獲得運動で銀行員が仮名の口座や印鑑まで用意して、老人などに小額資金で口座を作らせた結果であり、私に言わせれば社会的使命の高い銀行として決して好ましい行為ではない。

12億口座、国民一人当たり10冊にも上る預金通帳には、この預金獲得運動で作成された仮名預金が多く含まれ、その当事者が既に故人となったケースも多い。仮に実名であったとしても、小額預金のため遺産相続の証明書をもって複雑な手続きを銀行窓口でする人はいないのではないか。

こうした現実を踏まえると、銀行協会がいくら「大切な国民の預金ですからいつでも返還します」と言っても所詮、建前論であり、貯金の多くが既に雑収入として金融機関の懐に入ってしまった事実は動かない。

これらを踏まえ、あえて表題を「画竜点睛を欠く」とした。誤解を恐れず大胆に言えば、銀行協会の対応や姿勢は空々しく、“盗っ人猛々しい”(盗っ人はしぶとい、ずうずうしいの意)という気さえする。報道にも、もっとこのあたりを厳しく指摘してほしかった気がする。

繰り返して言えば、休眠預金は銀行協会が再三再四、発言してきたように、国民の大切な預金である。過去に雑収入として計上した休眠預金は全部でいくらに上るのか、さらに12億という膨大な口座がなぜ作成されたか、銀行協会としてあらためて責任を持って説明願いたい。

とは言え法律が制定されたのは大きな前進ではある。願わくば、報道のような複雑な仕組で間接経費が増加しないよう、さらにグラスルーツに近いところで活躍し、担保も持たないような資金需要者への力強い支援になることを願って止まない。

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