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「絶対にクビにならないから、公務員になろう!」は正しいのか? - 後藤和也

いわゆる「就活」。就職氷河期、学生冬の時代と呼ばれた筆者の頃とは随分様相が異なるようである。

■現在の就活生は売り手市場である


来春2017年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.74倍と、前年の1.73倍と同水準(+0.01ポイント上昇)である。全国の民間企業の求人総数は、前年の71.9万人から73.4万人へと1.5万人増加した
リクルートワークス研究所「第33回ワークス大卒求人倍率調査(2017年卒)」2016/4/21

総論として、昨今の就活は、きわめて「売り手市場」という結果となるようだ。

■なぜ公務員人気が根強いのか

そんな売り手市場の現在でも、公務員人気は根強い。親の立場で子供に就職してほしい企業等を問うたアンケート結果によれば、「息子に入社してほしい企業」の8位、「娘に入社してほしい企業」ともに2位が「地方公務員」であったという(日経キャリアネット「第8回『子どもに入社してほしい企業ランキング』集計結果」調査期間2013 /11 /8 〜11 /15 )。

地方公務員を選択した理由としては「安定性がある」「社会に貢献している」「転勤がない」が多く挙がっているという。

■公務員=一生安心という幻想

筆者が就活を行っていたころは、「リストラ」という言葉が初めて認知されてきており、自分や周囲の友人たちは、就活において「身分の安定性」を強く意識していたように思う。要はどこに就職すれば安心して長く働けそうか、という具合だ。

当時、公務員試験のパンフレットを見てみたが、どこの自治体や省庁でも「定年まで腰を据えて仕事ができる」「女性は出産後も安心して働ける」等の文字が踊り、「職員の1日」のコーナーでは、定時に仕事を終えた職員が同僚と飲みに行ったり職場内のサークル活動に勤しむ姿が描かれていた。身分の安定性や働きやすさは、公務における採用広報の柱と言えるだろう。筆者も親から、「とりあえず県庁の試験でも受けてみたら?」などと気軽にアドバイスされたものである。

一方、就活生側も「面接が苦手な人は公務員試験」という意識があった。話し上手ではなくとも、実直な学生に対して、公務員試験は平等にチャンスを与えてくれる、という意味だ。一種の都市伝説的なものかもしれない。就活生や保護者の間では、公務員になるということは、一旦採用となれば定年まで安心、と認知されてきた、と言っても過言ではないだろう。

■本当に公務員はクビにならないのか

その後紆余曲折を経て数年ほど公務の現場を経験した訳ではあるが、キャリアコンサルタントとして、あえて問いたい。本当に公務員になれば、一生クビにならず安泰なのだろうか。その発想は正しいのだろうか。

人事院による報道発表によれば、平成27年に懲戒処分を受けた国家公務員のうち、免職(いわゆるクビ)になった者は19名である。事由としては「一般服務関係(欠勤、勤務態度不良等」「通常業務処理関係(業務処理不適正、報告怠慢等」等である(人事院「平成27年における懲戒処分の状況について」2016/03/04)。当たり前の話ではあるが、他人や国民に害悪を与えるレベルで仕事ができない(仕事を怠った)場合、公務員とて当然クビになるのだ。

また、同じく人事院による「懲戒処分の指針について」によれば、「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動(中略)又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職」等と規定され、いわゆるセクハラや公務外非行について、個別具体的な処分が列挙されている。

さらには、国家公務員には人事評価制度が適用されており、評価結果が給与処遇に直接反映される仕組みとなっている。そこで最低評価を経て勤務実績がよくない状態が改善されないと認められた場合は、降任又は免職することができるのだ。

■キャリアにおいて、あなたが大切にしたいものは何か

もちろん、先の国家公務員における免職者が19名というデータを見ても、上記の措置が乱発されているという状況にはないことは確かだろう。しかしながら、周囲に多大な悪影響を与えるような公務員には、ご退場いただく道筋はとうの昔にできているのだ。厳しい国民やマスコミの目、さらにはSNSやメールが発達している昨今、公務員の勤務不良や不祥事を隠蔽するのも、容易ではないだろう。

もちろん、もっとクビになるべき者はいるはずだ、さらに免職を増発すべきだ、という意見もあるだろう。しかし、公務員の身分の安定性は三権分立の原則等に起因するものであることや、そもそも解雇規制については労働法においても厳格に運用され、それにより民間企業における「働かないオジサン問題」が顕在化していることを鑑みれば、解雇規制を見なおすべし、という議論は何も公務員に限った話でないことに気づくはずだ。

仮に公務員の職場がきわめてクビになりにくい職場だったとして、クビにならないということがあなたのキャリアにとって本当に幸せなことだろうか。理想論ではあるが、困難な仕事を通して人は成長し、必要なスキルや人脈を得ていくはずである(もちろん過度なプレッシャーやこなしきれない過剰な業務負荷はブラック企業問題に発展し得るが)。

人によって求めるキャリアは千差万別であるが、「身分の安定」の他にも「仕事を通した自己成長」や「社会への貢献」等、視点は様々であろう。従って、誰しも公務員になればハッピー、となるほど、世の中は単純な作りではない。

就活生売り手市場の今だからこそ、自分が働くうえで何を大切にしたいのか、今一度自問してみることを、強くおすすめしたい。

【参考記事】
■「公務員は労基法適用外だから働かせ放題」は正しいのか? (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49998470-20161114.html
■キャリアコンサルタントが自身のキャリアを描けない、という笑えない話。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49875267-20161028.html
■電通新入社員自殺、「死ぬくらいなら辞めればよかった」が絶対に誤りである理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/ キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49739049-20161010.html
■公務員の給与引き上げは正しい。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49293753-20160812.html
■サザエさんの視聴率が急降下した本当の理由とは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49055679-20160711.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント

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