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深刻な中国の児童労働者問題 - 澁谷 司

政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 我が国では、中国の留守児童(後述)に関して割と知られているが、児童労働者については、あまり知られていない。実際、同国には深刻な若年層の労働問題が存在する。

 中国では、子供が満16歳までは、父母やそれに代わる保護者(多くの場合、祖父母)が、子供が健康に育つよう、また、教育が受けられるよう義務付けられている。

 同国では、16歳未満を児童労働者と呼び、満16歳から満18歳までを未成年労働者と呼ぶ。

 中国の法律では、満16歳以上でなければ、原則、会社や工場は雇用する事ができない(特殊な演芸・スポーツの場合には、保護者の同意の下、働くことが可能である)。

 満14歳以上16歳未満の児童労働者を雇用し、法律に抵触した会社や工場は、雇用者数1人あたり、月5000元の罰金が科せられる。

 満14歳以上16歳未満の児童労働者が、仕事中、怪我をする、或いは、死亡した場合、その保護者に対し、相応の賠償金を支払わねばならない。

 同様に、14歳未満の児童労働者が仕事中に怪我をする、或いは、死亡した場合には、まず、その保護者に対し、相応の賠償金を支払う。同時に、雇主には刑事罰が科せられる。

 児童労働者は貧困家庭に育ち、学校へ行きたくても行けない。元々、家庭が苦しいので、彼らは会社や工場へ働きに行くのである。

 両親は共働きで、遠くの都市や町で働いている場合が多い。そのため、両親と子供が一緒に暮らしていないこともある。

 もし、児童労働者が当局に不法就労で発見され、たとえ家に戻っても、多くの児童は学校へ行けない。学校へ行くのには多額の費用がかかるからである。

 一般に、児童労働者は朝7時から夜10時まで働く。仕事量が多いため、しばしば真夜中の2時、3時まで働かされる。

 1ヵ月最低でも28日働かねばならない。「出勤はあっても退社はない」と言われるほど劣悪な労働環境下にいる。

 給料は、月1000元から2000元(約1万6000円〜約3万2000円)しか貰えない。ただ、普通は年1度、会社や工場からボーナスが出る。

 雇主は、児童労働者の給料を差し押さえたり、彼らの身分証や銀行カードを預かったりして、彼らが逃げないよう小細工している。

 今年(2016年)4月10日、広東省仏山市南海区の下着工場で約1ヵ月アルバイトをしていた男子児童が、宿舎で睡眠中、突然意識不明となった。そして、翌11日朝、亡くなっている。

 その児童は、母親と一緒に湖南省から広東省へやって来た。家庭を助けようとして、母親と共に同じ工場で働いていたのである。母親の証言では、児童は、工場で1日11〜12時間も働かせられたという。

 児童は、2001年6月生まれだったので、死亡時、まだ満14歳だった。従って、同工場は2016年3月5日から2016年 4月10日まで、児童労働者を使用していたので、罰金1万元が科された。

 同月21日、工場と死亡した児童の遺族との間で、15万元の賠償金で和解が成立している。

 さて、一方、児童労働者とは違って、我が国でも報道されているのが、中国の農村部の留守児童である。親が遠くへ出稼ぎに行っているため、しばしば子供達は家に取り残される。彼らは児童労働者より更に幼い場合が多い。

 留守児童は全国で約5000万人以上いると言われ、社会問題化している。

 昨2015年6月、貴州省畢節市の農村で5歳・8歳・9歳・13歳の兄妹4人が服毒死するという痛ましい事件が起きた。

 一番上の兄が、3人の妹に農薬(有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」)を飲ませ殺害した上で、自ら家の3階から飛び降り自殺したと見られる。

 実は、その前年の3月、母親は夫の家庭内暴力で怪我をして入院した。まもなく母親は家を出て、その後、行方不明になっている。

 2015年3月、父親は残高700元(約1万1200円)の銀行キャッシュカードを長男に渡しただけで、広東省に出稼ぎへ行った。

 祖父母は既に亡くなっていた。従って、家には数ヵ月も大人が誰もいない状態だったのである。

 その後、父親からの仕送りが滞り、子供達は前年に取れたトウモロコシを食べて飢えをしのいでいたという。だが、それもいつしか底をついてしまい、子供達は無理心中せざるを得なかったに違いない。

澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)等多数。

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