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介護施設に行くのは嫌だ。親がそう言ったとしてもそれは本意ではないはず。何と言おうが介護施設に入れるべき - 「賢人論。」第28回(後編)石蔵文信氏

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超高齢社会を迎えた日本において、問題の一つにあげられるのが“2025年問題”。「団塊の世代」が後期高齢者となる2025年には首都圏での介護施設不足が予想されており、政府は地方移住を推進している。そこで、全国各地で定年後講座を行う石蔵氏に、理想的な定年後の暮らし方・働き方を聞いた。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人

介護施設で働いたらポイントをつける。ポイントが貯まれば働いた施設でサービスを受けられるようにすべき

みんなの介護 前編「ごはんを食べられなくなったら、人間は5日くらいで安らかに息を引き取る。そんな“平穏死”を推進する医師や病院も増えている」で、先生ご自身は働けるだけ働き続ける、といったことを伺いました。

石蔵 なぜかと言うと、私の患者さんで、定年まで「つらい、つらい」と言いながら働き続けて、ある日「やっと定年だ、もう仕事なんかしたくない」と言っている人がしばらくするとうつになる人が多いのなんの。仕事をしていると、しんどいながらもやりがいや楽しいことがあるけれど、仕事を辞めた途端にやりがいがなくなって、病気になっていろんな医者にかかるようになる。それは、私から見たら、仕事を失ったことをきっかけに病気になっていくということ。

今日、待ち合わせ時間の前に公園を歩いていたんだけれど、私とそんなに年齢が変わらない人が、何となくブラブラ歩いているわけ。どっちのほうが不幸だと思いますか?例えば、生活保護をもらうのは仕方ないとしても、生活保護をもらって働かないというのは、ずるいことではなくて、ひょっとして人生ですごく大切なことを忘れているのかもしれない。世間では“生活保護をもらっている人のほうがずるい”という意見のほうが多いのかもしれないけれど、たぶん何歳になっても元気に働いている人のほうが、ずるい(笑)。

だから、私は働いている間は税金を払ってもいいと思っています。死ぬまで税金を払って、年金をもらわないというのを目指すことが、私の考え。さらに言えば、健康寿命と本当の寿命の差が短ければ短いほど私の理想に近づく。年金をはじめとしたお金をもらうことによって、人間は失うものもすごく多い。本当に必要な最低保障はしてあげたらいいんだけれど、今は最低じゃないところまで保障するから、“頑張るぞ”という活力まで奪っている気がします。

みんなの介護 高齢者の介護だけでなく、生活保護など、社会保障の実態は確かに見えづらい点が多いかもしれませんね。

石蔵 55から60歳で会社を辞めて、次の人生は年金少々でプラスアルファで働けるという、死ぬまで働けるというプランを国とかが提示すれば、それでいい。年金も、ちょっと減らして、バイトに行かないとまずいっていうギリギリのところにするのがいいと思う。現に、年金が少ない人のほうが元気ですよ。「金が足らん」と言って働きに行っているから。で、年金のたっぷりあるいわゆる企業の重役はプライドが高くてメンツがあるから、何もしない。実際、70歳になったら、スーパーマーケットのガラガラ集めとか駐車場のおっちゃんとか、そんな仕事しかないのよ。プライドがあるとできないこと。でも、何もしなかったら弱っていくだけ。

ちなみに、私は今、介護プラス農業を勧めています。農家でなくても畑で作ったものを物々交換できる。毎日自分の畑仕事をしても、それだけでは無理だから、現金収入のために介護施設に週3日くらい働きに行けばよいのです。朝9時から17時まで介護の仕事をして、早朝と夕方に畑仕事をできますよね。年金+介護のバイト料+畑仕事で、十分暮らしていける。介護を経験した人は、自分が介護を受けるときにすごくいい利用者さんになれます。介護をやっていない人って、介護スタッフに無理難題を言いまくるから。

さらに、介護施設で働いたら、給与に加えてポイントをあげて、ポイントが貯まったらその施設で優先的にみてあげるというようにしたらいい。都心部の高齢者は、元気なうちに介護の若い人が足りない地方に行って働く。実際に60歳、70歳でも元気だったらまだ介護できますからね。


移住をするなら50代ぐらいから真剣に考え始めないといけない

みんなの介護 今、首都圏に住む高齢者数が増えているというデータもあるんです。

石蔵 高齢化率は地方のほうが高いですよね。若い人がいないから。でも、東京の多摩団地の高齢化は急に進んで鳥取県の高齢者人口に迫る勢いです。東京は若者がいるから高齢者率は低いんだけどね。土地代が高いから、同じことをやっていても、収入を多めにもらわないとやっていけません。地方移住を50代の役職定年ぐらいから真剣に考え始めないといけないと思う。

生活を軌道に乗せるには5年かかるから、55歳から60歳までは会社にいながら準備を始めてもいいし。私は今61歳だけど、60歳を超えたら新しいことをやる気力はなくなります(笑)。やっぱり50歳から考えて、55歳から実行に移すのがいいんじゃないかと思いますね。

みんなの介護 今まで農業をやったことがない人が、60歳になってから急にやりだすのは難しい、と。

石蔵 難しい。難しいけど、漁業をやるよりは楽です。私は米も作っています。しかも、売り物にするのではなくて、自分のために作ったらいいのよ。野菜も米も、まずは自分のために作ったらいいんです。

メディアは“農業はつらいもの”という偏見によって報道する。私はテレビにも出ることがあるけれど、ディレクターの考えた通りに話題を組まれることも多いよ。

みんなの介護 自分たち夫婦は移住を考えていたとしても、高齢の親がいるからと躊躇する人もいそうですが。

石蔵 親が何を言おうが、介護施設に入れるのが正解。逆に、親が地方にいたら呼び寄せずに自分たちが移住するのもよい。特に、妻の実家なら大歓迎だ。「あなた自身が幸せになる道を選びなさい」とアドバイスしている。どんなことでも“親のため、親のため”と考えずに、親から受けた愛情を、自分の子どもに注ぎなさい、とね。次の時代を考えて。たとえ親が何を言おうが、「施設に行くのは嫌だ」と言おうが、それは親の意(子供の幸福を願う)に反すること。おそらく、家にいて子供に負担をかけるのはその人の本意ではない。なぜなら、親は子どもの幸せを一番に考えていますから。罪悪感を抱くな、と。

親は、そりゃ今は衰えてますが、70、80歳まで人生を楽しんできた人だから、もう良いでしょう!70、80歳になったら脳卒中にもなる。十分生きたんだから、安らかに死ぬ準備をさせてあげたほうがいい。

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