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トランプ相場をきっかけに、異常な低金利からの脱却はありうるのか

 米大統領選挙におけるトランプ氏の予想外の勝利によって、ドルが買われ、米国株式市場ではダウ平均などが過去最高値を更新するなど、いわゆるトランプ・ラリーが起きた(ラリーとは株価などが上昇しやすい現象のこと)。このトランプ・ラリーの象徴するのが米長期金利の上昇となる。

 米国の長期金利は今年7月に1.3%台まで低下後、英国のEU離脱によるショックが一時的に止まったことなどからじりじりと上昇してきた。それがトランプ氏が次期大統領に選出されたことによって、上昇ピッチが加速して、米10年債利回りは節目とされた2.35%もあっさり抜けてきた。2.5%が次の節目となるが、このまま3%に向けて上昇してくる可能性もありうる。

 この米長期金利の上昇要因としては、トランプ氏の打ち出す減税や規制緩和などによる米経済回復への期待、原油価格の上昇も相まっての物価上昇予想がある。また財政赤字拡大の懸念も米国債の売り(長期金利の上昇)要因となっている。

 しかし、それ以前に世界的に金利は上昇局面に変化しつつあることの見方もできる。米国の長期金利上昇の背景には、12月のFOMCの利上げ観測も当然ある(市場の予想はなぜか100%を超えている)。FRBは昨年12月に利上げを行い正常化に向けて一歩進めた。ところが今年の年初からの原油価格の下落や、その要因ともなった新興国経済への不安感により、金融市場のリスク回避の動きによって、米長期金利は上昇どころか低下した。さらに今度は英国の国民投票によるEU離脱決定という事態が起きて、ここでリスク回避の動きがピークアウトする。

 英国のEU離脱による金融市場でのリスク回避の動きが一過性のものとなったことで、米長期金利の反発がスタートした。これは原油価格の上昇ともリンクしていた。しかし、この原油価格はWTI先物で節目の50ドルがいったんの上限となった。OPECでの減産合意に不透明感が強まり、原油先物は下落したのである。ところが30日のOPEC総会での最終的な減産合意となったことで、米長期金利の重しとなっていた原油先物も上昇し、米長期金利もあらためて上昇した。

 長期金利の上昇は米国にとどまらず、英国やドイツの長期金利も同様に上昇してきている。英国債は米国債の動きに連動しやすい面もあるが、この欧米の長期金利の上昇は、これまで次々に襲ってきた世界的な経済金融のリスクからの脱却を意味するものではないかと思われる。異常ともされた日米欧の金融緩和に対して、すでに市場も違和感を覚えつつある。いつまでこのような政策を中央銀行は続けるつもりなのかと。

 米国はあらためて正常化に向けた道筋を歩むとみられ、イングランド銀行もいずれ方向を変えてくることも予想される。しかし、日銀とECBは向きを変えることすら困難なところに自ら追い込んでしまっている。見えないかたちで国債の買い入れ額を縮小するというステルス・テーパリングがせいぜいではないかとみられる。日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和はそれを可能とさせた。ECBも国債買入期間を延長する変わりに買入額を減少させるのではとの観測もある。いずれにしても国債買入にはすでに限界が近いことも確かである。

 日本の長期金利もさすがに上昇したといっても、やっとプラスになった程度である。この日米の長期金利の上昇ピッチの違いも円安ドル高の要因とされており、これは日銀の意図したところかもしれない。しかし、原油価格の上昇は日本の物価にも跳ね返ってくる。果たして日銀はいつまで長期金利を抑えるつもりなのか。日銀はそのような技術的な操作などよりも、出口を意識した政策にそろそろ頭を切り換える必要があるのではなかろうか。

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