記事

WELQの質が低い? なにをいまさら

1/2
健康医療情報キュレーションサイトである「WELQ」の全記事が非公開となった。

WELQを運営するDeNAは、専門家による監修が十分にされておらず、記事の品質が低いことを理由に、非公開化したと説明している。(*1) ぼくの感想だが、正直「一体何を騒いでいるのだろう」と思う。

話題になってから閉鎖されるまでWELQの記事を幾つか見てみたのだが、正直に言えばWELQの記事がそれほど酷いものかといえば、僕はそうとは思わなかった。

勘違いがあるといけないので正確に言うと「世間一般に流通している、よくある健康情報と比較して、WELQの記事はそれほど酷いものではなかった」。ということである。つまりWELQの記事も、よくある健康情報の記事も、ごく当たり前に酷すぎて、何をいまさら記事の品質などということを気にしているのかと不思議なのである。さらには東京都が行政指導にあたる(*2)ということに至っては「なら、そのへんのありとあらゆるウェブメディアや、出版社全部呼び出して指導しろよ!!」と叫びたくなるほどである。それほどまでに健康医療情報は質が低すぎるのである。

よくある世間一般で「標準」ともいえる健康情報の記事の論理展開はこうだ。

「この食品や化粧品には、このような添加物が使用されている。この添加物はマウスを使った実験により、こんなに体に悪いことが科学的に証明されている。故に、この添加物を使った商品は危険であり、買うべきではない」だ。過去に『買ってはいけない』という、市販品の実名を出して、その危険性を煽った本がブームになったことがあるが、それ以前から今に至るまで、この論理展開が典型的な健康情報記事のテンプレートである。

さて、この論理展開の何がおかしいのかが分かるだろうか? それはマウスを使った実験によって体に悪いことが証明されていることと、その添加物を使った商品が安全か危険かであるということの意味が逆転している部分がおかしいのである。

典型的な記事では「危険性が確認されているから危険である」と、その危険性を煽る。しかし本来は「危険性が確認されているからこそ安全」なのである。

そもそもマウスなどによる添加物の生命への影響を見る実験は、危険性を確認するために行われている。だから実験では、食品添加物であれば、ありえないくらいの量をマウスに摂取させるし、シャンプーや石鹸であれば何十時間も皮膚に塗ったままにする。そのように極端なことをして、わざと害を出すのである。そうしてわざと害を出して、危険性を確認した上で、その添加物を体重あたりどのくらい使えば危険であるかを算出する。それはイコール「どのくらいであれば安全か」を算出することなのである。

そのうえで、危険と安全の境となる分量の百分の一程度の使用量であれば安全であるという計算をして、その添加物に対する一日摂取許容量を設定する。そこからさらに一日摂取許容量を下回る形で食品衛生法上の使用基準が設定される。

さらに、食品製造会社は添加物を「おまけ」として添加しているのではなく、添加物を使用することで得られる効果を必要として使用するので、使用基準いっぱいに添加物を使用することはなく、実際の使用量は極めて少ない。そうした食品添加物を含む食品を食べた我々の実際の摂取量は、そのほとんどが一日摂取許容量の百分の一や千分の一という数値となっているのが現実である。(*3)

福島第一原子力発電所事故における「放射性物質」の話にも言えることだが、実際にそれらの物質が人間にとって危険であるか否かは、その量が多いか少ないかによる。健康情報を考えるときに量の概念を省いて「この物質は危険だから危険なのだ」という主張をしている記事は一切、信用するに値しない。

しかし残念ながら、そうした量の概念を踏まえた記事には、なかなかお目にかかれない。

特に今回のようなキュレーションメディアや、週刊誌などでは、全く目にしないと言っても過言ではない。なぜかは明白で、これらのメディアが「ショッキングな見出しを売るメディア」だからだ。週刊誌は中吊り広告で、キュレーションメディアはgoogleの検索結果で、思わずクリックしてしまうような鮮烈な見出しを競っている。

例えば「子宮頸がんワクチンを接種しましょう」という見出しは全く注目を浴びないが「子宮頸がんワクチンで副作用続出!母親たちの悲鳴が聞こえる!!」なんていう見出しなら、それなりに注目を集めるだろう。こうして、子宮頸がんのワクチン接種は世間に「リスクの高いこと。しないほうがいいこと」として認知されていく。実際には副作用のリスクよりも、子宮頸がんになるリスクのほうがはるかに高いにも関わらずだ。

こうしたメディアでは見出しと本文の価値が逆転している。鮮烈な見出しをつけるために、それに見合う本文を作り出す。

それでも文章の上手なライターは、見出しに鮮烈な言葉を出しつつ、内容は見出しで感じるほど苛烈な内容ではないという記事を書いて、批判を避けるのだけれど、記事単価の高くない、下手なウェブライターの記事の場合、そのバランスが取れずに、見出しの印象そのままの一方的な記事を書いてしまうことがある。そうした記事を頻繁に目にするようになると、知識のある人は「このメディアは質が低い」という評価し、そのメディアを無視するようになるが、量の概念を考慮しない記事に慣れ親しんでいる人々の多くは、質の低い記事であるという事にすら気づけないのである。

あわせて読みたい

「WELQ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    豊田議員は哀れな「準エリート」

    シェアーズカフェ・オンライン

  2. 2

    下村元大臣 加計から違法献金か

    文春オンライン

  3. 3

    稲田大臣はやっぱりダメだった

    志村建世

  4. 4

    昭恵夫人が家族会議で絶叫か

    NEWSポストセブン

  5. 5

    豊田議員擁護した松本人志の限界

    小林よしのり

  6. 6

    東芝株主がグリーン車利用に苦言

    BLOGOS編集部

  7. 7

    加計問題 「録音音声」を公開か

    NEWSポストセブン

  8. 8

    鈴木宗男氏「負けるな稲田大臣」

    鈴木宗男

  9. 9

    韓国芸能事務所のセクハラを告発

    文春オンライン

  10. 10

    橋下氏語る 都議選の本当の争点

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。